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か細い声が聞こえた
電線の上
早起きの小鳥たちが小首をかしげる
埃っぽく煙った路上
散乱する朝の気配
大型トラックが排気ブレーキの音を響かせる
始まりと終わりの時間を行き交う車たち ....
よっこらせ
腰掛けた瞬間
今日という日が僕の横を
他人の顔ですり抜けた
野ざらし
雨ざらし
吹きさらし
黒い脈を空に伸ばす枯木に
何もない
野の吹雪
赤い動脈が伸びていって ....
コートの襟を合わせ 冷たい風の中
細い背中が 小さくなってゆく
あの歳まで 独りきり
もてない女じゃ ないのだが
どうして独りで いるのかと
問う男はいなかったのか
俯き加減の そ ....
五線譜の上で
小切手を握り締めた 小指のないクラウンと
骸骨の医者が口論していた
どちらがどちらを言い負かしたのか
切り取って確かめよう
ナイフ
誰もが平等に犯す罪に
コンクリートを ....
無造作に投げ出された夕暮れの
狡猾な腕がきみの背中を突き飛ばす
孔雀がけたたましく笑い
スポーツ事務ではブルジョワどもが汗みずくになって肉体労働に勤しむ
彼らの心臓では無数のパラシュートが ....
澄んだ湖に ぽいっ と
石が投げ入れられた
綺麗な水面が崩れるのを
少し切ない気持ちで
見ている
乱れた湖水をしずめるのに
この手のひらは
水になれぬ野蛮
かき回すことなら
....
太陽がブスブスと燃え尽きて
街がポツポツと独白を始める
厚化粧した流行が
人工の闇を闊歩する
巻き起こる風にそよぐビル群
氷だらけのジュース
灯りのない部屋に切り取られた小さな窓
ひとつ ....
悲しい歌は
歌う事を禁じられている
いまは
そんなまばゆき時代らしい
分類して片付ける事を得手とする
訳知り顔たちの
摩滅してゆくカレント
時代という名の
光と影が彫刻した悲し ....
寒い
僕の家だけ
シベリア
いえ
僕の部屋だけ
ツンドラ
窓の外では
光を跳ね返す素材の
白いビキニさえ
ありふれているようです
布団に包まり
鼻からつらら
僕は餃子男 ....
子供たちよ
君たちの革命に
銃はいらない
うつのは心臓の鼓動だけでいい
子供たちよ
君たちの革命に
拡声器は要らない
隣の見知らぬ人に
呼びかけるだけの
裸の声があればいい
....
「On your mark」
隠しておいた二枚目の舌も きみに引っこ抜かれちゃったから
だから
寡黙なランナーに なれるよやっと
沿道の声援に もう お調子者の返事はしない できない
整 ....
桃太郎の養父母、
川上の兄弟達に気付かぬふりした。
あの襟を 整えてみる 心にて 生まれしヒロイン 凛乎たる風
{ルビ温=ぬく}き陽に メトロノームも 居眠りす {ルビ幽=かす}かに聞こゆ {ルビ古=いにしえ}の歌
旋盤が 削り出す ....
(おおい)
鳥たちよ
銀鼠の朝に踊る鳥たちよ
何故そんなに楽しそうなのだ
おれはこんなにも憂鬱であるというのに
この旋回には意味があるんです
あなたには理解できないでしょうけど
....
それに
包丁を当てる夢を見る
それは
四角いスイカ
グロテスク又は滑稽
転がらないそのかたちは
妙な不安定を感じさせる
むしろ丸いスイカより
どこへも行けない窮屈さが
そ ....
うんこ
メモ用紙のすみに鉛筆で走り書き
それはただのうんこ
つまらないうんこ
活字のうんこ
活字でうんこ
それはちょっとした事件
活字「うんこ」は読むものの ....
わたしを定義するもの
今朝齧ったトーストの歯形
わたしを定義するもの
会社のデスク
わたしを定義するもの
そこに転がったボールペン
わたしを定義するもの
配達員に捺したハンコ ....
ハリウッドの
アクションヒーローに
憧れる
誰かをカッコよく助けたい
まるでアメリカン・フットボールのスターのように
子羊たちを脇に抱え
「WAR」
かけ声勇ましく突進する
....
ジョギングの
夜明けに自販機の前で放心する
「青春投入口」
ポケットから青春を取り出し
入れる
カショカショと飲み込む
ボタンのランプが寂しく灯り
押すと
びっくりするくらいの ....