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 詩とはそもそも預言の性質を持っていると、
私は考えている。過去をさぐって、未来に役
立てるのが歴史とすれば、詩とはもっと漠然
としたものを、実証に基づかずに、さらに言
えば、無責任に ....
湖心から湖畔へと

一艘の無人の白いボートが

静々と漂つて来る

寄せくる波に身を委ねて

従順な驢馬のやうに

いつたい何を乗せるつもりなのだらう

あるいは誰を
 ....
◇尾瀬ケ原


虹に遇ふ

もつとも

さやかなるときに



◇車窓より


白鷺は立つ

点々と



四、五枚の

刈り田に

一羽



 ....
カモメは海沿いの線路上を飛んでいる
超低空で
軌道をいささかも外れることなく


線路は間もなく
海を逸れて山間へ入る
線路に添うか
海に添うか
カモメにとっての岐路だ


カ ....
一粒の雨が傘に弾いて
百匹の蛙になった
百粒弾いて
一万匹の蛙になった

一万匹は
すぐさま姿をくらまして
それっきり雨は止んでしまったから
微かに地面の濡れたところが
 ....
旅先の田舎のベンチで
君の名前を見つけたよ 
夏子
いつたい誰が 断りもなしに
君の名前を書きつけたりしたんだ

(こんな色褪せた おんぼろベンチの
背凭れに 乱暴な稚拙な字で  ....
ママが死んだの
私が高校を卒業して間もなく
ママが死んだの
ママと二人だけで生きてきたのに
そのママがこの世からいなくなってしまったの

ママはパパのことを私に教えてくれなかった
私 ....
市場通りに一尾の魚が落ちてゐる
眼は赤く悲しげに潤み
視線を曇天へと彷徨はせる
そして
路面についたもう一方の眼は
闇の地の深みを透視してゐる

魚は期せずして
天国と地獄を
同 ....
山肌が幅広く剥落して

日に晒されてゐる



真昼時は

まだいいとして

日が傾いて

夕日の色が

濃くなるにつれて



幅広の滝が

血を流し ....
―冬が来る前に一同集って
旧交をあたためようぜ―

Zからこんな招待状が舞い込んで
まあ、行ってみるか くらいの気持ちで
出かけていった
Zは中学時代の番長で
苛めっ子だった
俺はいつ ....
 これは特定の人を指して書いたものではありません。
私たちの周りにはある日、それこそ不意に姿を消してし
まう人がけっこう多いのではないでしょうか。この現代
詩フォーラムでも、気振りにも見せずにい ....
この土地が
湖や海のやうに
青空や星や月を
映さないからといつて
卑しめてはならない


何といつても
この土地には
{ルビ人間=**}が住んでゐる


夜の闇しか映さない
 ....
 
今朝 
露にかがやいて
咲いた朝顔が

のこらず 
消えてしまつた

―小鳥が来て 
食べてしまつたわ―

と 
その家の母親は 
呆れ返つたが
 
真実は 
その ....
緑濃い{ルビ山陰=やまかげ}から
ひらりと紋白蝶がさまよひ出た
断崖の下は海の群青
湧き上がるすでに夏とはいへぬ
冷ややかな風を器用に避けつつ
蝶は陸に沿つて舞ひはじめる
波打ち際には
 ....
来る日も来る日も
欲しいだけの陽は降り注ぎ
水の恵みも充分受けてはゐたが
代はり映えのしない日々に
嫌気がさして
葉叢のなかの一枚が
ある日 ひらりと裏返つた

―決して気紛れでは ....
{引用=山里に出会ふ少女はひたすらに
   坂下り行き{ルビ畠=はた}のトマト赤し}



D展に出す絵のモチーフを探して
山地を旅していた
山里の道を歩いていくと
籠一杯のトマト ....
毬栗が黄緑色に膨らんで

山の稜線を彩つてゐる

棘の一本一本は張りつめても

刺々しさはなく

光と風と大気に丸く包み込まれて

和んでさへゐる

さうしてなほも ....
野道をアヒルが腰を振り振り歩いていた
前方に蛇が長々と寝そべっている
アヒルは気味悪がって
引き返そうか
進もうかとひとしきり思案して
結局
蛇を遠回りに避けていく
重たい腰振り ....
真夜中 岸辺に泳ぎ寄る魚は
不吉なほど黒い


昼の海からは
想像もできないほど大きく
ものものしい動きをする


これは
寝静まつた陸に
少女をさらひにきた悪魔の影だ

 ....
朝顔の 露に張りつめた花びらは
美しい
しかし 弄れば弄るほど萎れていく
ダイヤは研けば研くほど
耀きをます


あなたはどちらが真に
美しいと思ふだらう
いや 野暮な問ひは止め ....
 

街の猛犬が
路地猫を追ひかける
猫の尻尾に
口が届くばかりに接近した
その時
目の前を
轟然と特急電車がやつてきた
あはや犬は立止り
猫はそのまま行つた

犬の前を
唸 ....
コンクリートの塀に

一匹の蝶が来て留る

この目の覚める艶やかさは

一体どこから来たのだ

これがこの世の反映だなんて

私は信じない

むしろこれは世にないものだ
 ....
街を歩いていると
仔猫が身をすり寄せてきて
〈子供にして下さい〉
と言った。

海岸を歩いていると
オットセイの子供が
海から這い出してきて
〈子供にして下さい〉
と言った。
 ....
笹薮の中の

一輪の百合よ 

かぐはしくも

夢幻のやうにともつてゐる

白い灯よ



潤ひのない荒野に 

花弁をひらく

おまへのその

ひそやかな立ち姿は ....
◇雁

ビルの間を

雁が渡る

窓からいくら叫んでも

届かない

天上の

賑はひをもつて



◇火口湖



火口湖に

白鳥がひとつ

燃えて ....
尾羽を風に吹かれて
鶴はどこまで歩いて行くのだらう
追ひ風に逆毛になつてゐるだけ
見栄えのいいものではない


貴婦人がふくらむスカートの裾を
気にする風情で
遠ざかつてい ....
 

大きな肉の塊をくすねてきて
食べ飽き まだ半分以上も残つてゐるとき
犬なら 空地へ引きずつて行つて
埋めておくが


猫は そこに放り出しておくだらう
無関心かといふと さうで ....
蒸気機関車は白い煙を吐き
山間に入つて行つた
当初は白煙もにじみ
汽笛も木霊して
ああ あの辺りを喘いで行くな
と安心させたが
程なく それもなりを潜めて
山は静まり返り
もう蒸気 ....
旅先で母親に背負われた赤子から
青梅を貰ってきた
長く握々されて熱くなった梅なんか
欲しくはなかったけれど
どうしてもやるというので貰ってきた
いらなくなったからじゃない
奴らは一番好 ....
巌に一列に並んで
暮れなずむ彼方に見入つてゐる鵜よ

さうしてゐれば
見えなくなつていくものが
現れてくるとでもいふやうに
水平線を見据える鵜よ

こんなにもひしひしと迫り ....
前田ふむふむさんの杉菜 晃さんおすすめリスト(34)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
わたしは、アルファであり、オメガである- 杉菜 晃散文(批評 ...12*06-12-7
ボート- 杉菜 晃自由詩15*06-12-7
小詩集__雪の扉- 杉菜 晃自由詩15*06-12-4
一羽のカモメ- 杉菜 晃自由詩15*06-11-28
夕日のマフラー- 杉菜 晃未詩・独白15*06-11-22
売れつ子になつた夏子- 杉菜 晃自由詩18*06-11-18
ある少女の独白- 杉菜 晃自由詩15*06-11-15
路上- 杉菜 晃自由詩14*06-11-9
赤い山肌- 杉菜 晃自由詩13*06-11-8
太陽が喋った- 杉菜 晃自由詩9*06-11-5
消えてしまったひと- 杉菜 晃自由詩6*06-11-2
いのちの灯- 杉菜 晃自由詩9*06-11-2
朝顔のゆくへ- 杉菜 晃自由詩10*06-10-31
白い旗_夏の終はりの海岸線- 杉菜 晃自由詩14*06-10-27
気紛れではなしに- 杉菜 晃自由詩15*06-10-25
- 杉菜 晃自由詩13*06-10-24
山栗- 杉菜 晃自由詩14*06-10-23
アヒル謳歌- 杉菜 晃未詩・独白9*06-10-19
正義のパトロール- 杉菜 晃未詩・独白9*06-10-16
それは_あなたの中に- 杉菜 晃自由詩12*06-10-16
路地猫- 杉菜 晃自由詩6*06-10-12
手紙- 杉菜 晃自由詩8*06-10-9
海に返す- 杉菜 晃未詩・独白11*06-10-8
白百合- 杉菜 晃自由詩13*06-10-7
雁__火口湖__山肌__他_・・・- 杉菜 晃自由詩12*06-10-5
奇跡のやうに- 杉菜 晃自由詩8*06-10-5
気まぐれ猫- 杉菜 晃自由詩9*06-9-30
山間- 杉菜 晃自由詩8*06-9-27
青梅の幼子の手にあまりけり- 杉菜 晃未詩・独白13*06-9-18
列島の鵜- 杉菜 晃自由詩8*06-9-15

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