ボート
杉菜 晃
湖心から湖畔へと
一艘の無人の白いボートが
静々と漂つて来る
寄せくる波に身を委ねて
従順な驢馬のやうに
いつたい何を乗せるつもりなのだらう
あるいは誰を
そして
どこに連れて行くつもりなのだらう
白いボートは細波に揺すられながら
徐々に徐々に湖畔によつてくる
辺りに人影はなく
岸に柳が一本
人待ちふうに立つてゐるだけ
ひつそりした深山の湖に
始動の気配を見せてゐるのは
唯一ボートのみ
いつたい誰を乗せるつもりなのだらう
自由詩
ボート
Copyright
杉菜 晃
2006-12-07 13:11:32
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