朝顔のゆくへ
杉菜 晃
今朝
露にかがやいて
咲いた朝顔が
のこらず
消えてしまつた
―小鳥が来て
食べてしまつたわ―
と
その家の母親は
呆れ返つたが
真実は
その家の
娘の仕業だつた
永く患つてゐる娘が
色あせたブラウスを
朝顔の
藍
(
あゐ
)
で
染めたのである
藍色のブラウスを着て
散歩に出るのが
娘の日課になつた
季節はづれの蝶が
いや増して
寄つてくるやうになると
娘は自分も蝶になつて
野の上を飛んでゐた
「詩と思想」掲載作
自由詩
朝顔のゆくへ
Copyright
杉菜 晃
2006-10-31 12:19:06
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