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東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉で{ルビ犇=ひしめ}いていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
{ルビ歪=ゆが}んだ顔を映す

冷たい光の反射に
じっと身 ....
えのぐのあじがする
と、遠ざけられた皿には
白いドレッシングのかかった
シーザーサラダが
盛られたかたちのままだ
野菜も食べないと大きくなれません
と云われて
娘はふくれている


 ....
具合はどう?
と問い掛けられても
よくわからないのだ
何か喉の奥につかえているようでもあり
ただ疲れているだけのようでもあり
それでいて急に、胸のあたりが苦しくなったりする

こうして
 ....
街をみていた
貴方の街を

白々と染まる朝の底から
浮上する軒先の陰影
心配するなと云ってくれた
おまえの街だと

しずかな春の空を斜めに切った直線
落ちてきた羽ばたきの伸ばす
細 ....
お母さんがぶらんこ
きぃ、とならす
視線を気にして
行儀よく、少しうつむいて

お母さんがぶらんこ
きぃきぃ、ならす
光の匂いに目を細めて
頬に風をあつめて

お母さんが立ち上がる ....
幹に巻きつけられた
青白い麦球は
今年も
明滅を繰り返す
流れる光は
高い空に昇って
どこへ

すれ違う流れに
爪先を探す男は
今年も
うずくまる
染みだらけのジャンバーを
 ....
山になった洗濯ものの回りで
君は
春のような
スキップを踏む
  {引用=おうちを買わなければ、よかったね
だって、お金持ちだったんでしょ?
たた、たたん}
ちいさな袖をそろえて
重 ....
のんちゃんは首をかしげました
(どうちて、うちゅーには、くうきがないの?

神様は、深く息を吸い込み
腕組みをしました

(ねぇ、どちて?
(ねぇ、ねぇ、どおちて?

眉間に皺をよせ ....
新幹線の方が楽だろうに
母はいつも
鈍行列車にゆられてやってくる
孫娘の成長のたびに
少ないけど
と、袋を差し出す指先は
黄色く乾いている

風邪ひいてないか、とか
おまえは季節の変 ....
ロウ石の描いてゆく円のあどけなさで
季節を跳ねわたる赤い女の子は
その胸に、またひとつ
ちいさな宝石をあつめて

伸ばしかけた指先
静かにたたむ陽だまり

いつか
桃いろの少女へ
両手のひらに
こっそり書いた「冷」の文字
僕は忘れん坊だから

冷え性対策の頁を見てたから
布団からはみだした足先が
とっても冷たかったから
今日は帰りに
ちょっと入りづらいあの店で
 ....
遠ざかる二段ロケットの軌道
静寂に浮かぶ銀のカプセル
どちらが動いているのか、は
もはや問題ではない
ただ、離れてゆく
    {引用=
(お腹空いたかい、ラナ
(大丈夫、ピザを持ってき ....
見渡せば、{ルビ紅=あか}のパノラマ
岩肌の背を辿り
風紋の営みに耳を澄ませば
褐色の陰影、陽炎の揺らぎ

彷徨えば、蒼のカルデラ
火照った靴を脱ぎ
静寂の層流に{ルビ踝=くるぶし}を垂 ....
亀、知りませんか?
背中に「さ、の」って書いてあります
それは、自分自身です
こんくらいのやつです
かたちは日々変わるんです
生きものですから

お腹を押すと泣きます
水曜日の午後だけ ....
一、 銀色の背中


飯も喰わずに、カピが月ばかり見ているので
座敷に上げて訳を聞くと
長い沈黙のあと
神妙な顔で
片想いなのだという

いったいどこの娘かと問えば
まだ逢ったこと ....
  冷たい雨が染み込んでゆく{ルビ苔=こけ}の
  やさしい沈黙に
  身体を重ねたくなる夜は

  窓ガラスに青いセロファンを貼りつけて
  閉じ込めた気泡の膨らみを
  指先でなぞって ....
まめクジラの水槽には
売約済みの札が貼られていた
まだ幼いのか
さざ波を飲み込んだり
小さな噴水をあげては
くるくる浮き沈み
はしゃいでいる

こっそり水槽に指を垂らすと
あたたかい ....
まだしっかり帽子をかぶった黄緑の
君の大切なたからもの
やわらかい手が両方ふくらんで
哀しそうに助けを求める
ひとつも手放したくないんだね

小さなポッケを教えると
手の隙間から零れない ....
水色のキャンパス
白い花びら、ふたつ、みつ
風の描いたような君の唄
軽く手をふるハロー、ハロー


 鉛筆画の微笑みは
 鉛色の雫でできてるの
 はじめから
 うまくのれてなかった、 ....
いつだって遥か遠くを
見つめていた、正太
本当はそんな名前じゃないのに
誰もがそう呼んでいた

*

学校へ行く途中
平然と菓子パンを買った、正太
朝飯なのだと、悪びれず
無造作に ....
ばっさり斬り落とした短い髪に
唖然とたたずむ
 (なんか、めんどくさくって
照れたように君が笑う
右の頬を隠して

僕の知らない君の夏
正しい折れ曲がり方なんて
よく分からないけどさ
 ....
{ルビ吃水=きっすい}の切り拓く直線に
弾け、昂ぶる蒼波の振幅も
いつか、{ルビ理=ことわり}を{ルビ纏=まと}い
穏やかな泡波の
幾重にも沁みわたる

船側をすり抜ける速さに
戸惑い、 ....
引っ越したアパートは
薬屋の二階だった
辺りには小さな商店しかなかったが
近くに大きな川が流れていて
君の心を支えながら
よく土手を歩いた

神社には大きな桜の樹があって
薄紅の季節を ....
腹に響くエイサーの
どごん どごん
飛び跳ねる常夏リズム
どどごん、かつ、かつ

手踊りが咲き
歯は白く輝き
乾いた{ルビ三線=さんしん}の{ルビ音=ね}が走り出す

空を切り裂く指 ....
  あなた、アオウミガメの背中を
  匂ったことはあって?



少女は
さして、答えを求めるふうでもなく
空と海の継ぎめを見つめたまま
潮風にふくらんだ髪を
そっと抑える


 ....
夏少年の、硝子の{ルビ背=せな}に
せせらぐ
ピアニシモ

白い{ルビ喉=のど}の、滑るシトラスに
透けてゆく
アダージョ

戸惑う爪先の、細い苦悶
ふるえてゆく
アレグロ

 ....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋

殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
{ルビ故郷=ふるさと}に近づく列車
向かいに座った女性は
首のすわりかけた赤子を
前向きに抱えていた

一瞬、驚いたあと
すぐにうつむく仕草は
内腿の{ルビ痣=あざ}を
男子生徒にから ....
今宵も匠は
あざやかな手つきで
ガラス球をつるり
音もなく水槽に沈める
  瑞々しい、青とグレイと白の珠

覗き込むたび
妖しく映ろう彩雲は
硬く閉じ込められていて
届きそうで、届か ....
こらえても ゆがむくちびる ふるふるふる
うるみ零れる おかっぱの髪

パパあげる 玄関先で 待ちわびて
握り続けた シワシワの春

負けないぞー きいろい声は どこいった
頭ならべて  ....
前田ふむふむさんの佐野権太さんおすすめリスト(61)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
東京パーラー- 佐野権太自由詩31*07-1-19
ファミリーレストラン- 佐野権太自由詩36*07-1-15
寝正月- 佐野権太自由詩21*07-1-11
ふるえる梢- 佐野権太自由詩21*06-12-23
お母さんだっても、あいーん- 佐野権太自由詩20*06-12-21
いつくしみ深く- 佐野権太自由詩18*06-11-30
はだかんぼう- 佐野権太自由詩45*06-11-28
のんちゃんと神様- 佐野権太未詩・独白14*06-11-17
おつり- 佐野権太自由詩28*06-11-17
桃いろのつぼみ- 佐野権太携帯写真+ ...22*06-11-13
冷え性対策- 佐野権太自由詩18*06-11-1
衛星クーピー- 佐野権太自由詩19*06-10-27
心象探訪- 佐野権太自由詩19*06-10-25
さ、の- 佐野権太自由詩15*06-10-20
カピバラの事情- 佐野権太自由詩41*06-10-18
そして、いつか猫になる- 佐野権太自由詩18*06-10-6
クジラになった少年- 佐野権太自由詩43*06-10-3
ドングリ拾い- 佐野権太自由詩28*06-9-22
秋空のシルエット- 佐野権太自由詩20*06-9-12
俺たちの風、syota- 佐野権太自由詩21*06-9-5
檸檬色の夏- 佐野権太自由詩39*06-8-24
望洋フェリー- 佐野権太自由詩9*06-8-19
支え続けるもの- 佐野権太自由詩44*06-8-9
美風(ちゅらかじ)- 佐野権太自由詩18*06-8-3
回遊する少女_(アオウミガメ)- 佐野権太自由詩30*06-8-1
振幅する夏- 佐野権太自由詩14*06-7-10
たなか屋の角- 佐野権太自由詩54*06-6-20
白い紙ふうせん- 佐野権太自由詩18*06-5-18
透明工房- 佐野権太自由詩13*06-5-12
愛娘たちよ、いつか耳をひらいて- 佐野権太短歌13*06-4-28

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