東京パーラー
佐野権太

東京と東京のあいだは
やはり
びっしり東京だった
銀色のパチンコ玉でひしめいていて
覗き込めば
ひとつ、ひとつ
ゆがんだ顔を映す

冷たい光の反射に
じっと身構えていても
なめらかに運ばれてしまう
右と言えば

と言う人がいるので
  

歩行者信号の明滅
車両出口の回転灯
建設断固反対と書かれた文字
の、太さ
ロータリーを流れてゆくバスの行き先を
本当は
知らない

軽喫茶の
硝子の内側には
CROSEDの洒落しゃれた文字が
ぶら下がっている
開けるつもりなど
ないのに

枠に合わない
排水溝の渇いた蓋が
かたん
と鳴いた
きっと
僕の重みで


自由詩 東京パーラー Copyright 佐野権太 2007-01-19 10:52:39
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