結婚は雑巾
汚れては洗い
穢れぬようにカビないように
絞り続けて
布はほつれる
愛は悲しみであり
人として
死んでゆかねばならぬ
絶対の孤独の裏返し
孤独と傷の共有
恋は単 ....
「触れていい?」
聞かずに触れる
おもむろに
あなたの足の
爪先の薔薇
運命を
装い恋に
落ちた振り
落ちた時点で
運命だと知る
返歌
運命と
信じる君の
その笑顔
見つめて気付く
運命の恋
運命は
偶然 ....
花冷えとは、桜の咲く季節に一時的におこる冷え込みなのだそうだ
つめたい、花びらがどこまでも吹いてくる
ひとりであるいてみようとおもうとき、
そう、この今あたしはひとりになる
冷え込んだおなかを ....
最後の夜を見つけておいで
そうして
首輪をしたら そっと撫でてあげて
訳もなく泣いて 泣いて
見つけられんのを待ってんだろう
いつだって昔見た夢を塗り重ねて ....
桜よ
あの人を包んでください
黒い古木にもたれて
胸の傷に手を当てる
あの人の背中をさすって
夜空の花となり生温かく散って
ほのかな明かりで目隠してください
ひとひらひとひら
....
おおかた 汚れている
たまに 壊れている
すべて バラバラ
一生忘れないと誓った愛
捧げた相手の名前を思い出せず
二度とやるものかと決めた 行為が
今は 強迫観念のような日課になり ....
惑う星僕らの地球を抱きしめる
もし君が六等星でも探し出そう
星屑のこぼれる音か波の音
さっきからヤギが
書いた詩書いた詩を
遠慮なく食べてしまうので
一向に進まない
今日までに仕上げなければ
いけないというのに
ヤギはお構いなしに
食べる 食べる
おいしそうにしているの ....
えらくでっかいカブトムシが
ズボンの中を這っている。
角は窮屈そうに柔らかく折れ
鋭角さに欠けてしまっている。
その姿を見た近所の子供は
こんなのカブトムシじゃない
といって、私のズボンを ....
地獄が怖いよう、お母さん
地獄が怖いよう、お父さん
クモの糸を手繰り寄せ
優しい繭を作る
おまえたちを守ってみせるから
必ず守るからと誓いながら
両親は老いてしまった
がっくりと肩を ....
(喪失の物語)
彼女の胸には心臓がなく
代わりに小さな箱が埋まっていて
願いを唱えながら手を入れると
どんなもので ....
ふと気がついたら
わきの下にゼニゴケが生えていた
不快だけど放っておいた
ゼニゴケにだって生きる権利があるはずだ
そう思って耐えようとした
すると何日かして
あごの下にも
乳房の下にも
....
ほう ほう
風が鳴いてる
シグナルはしずかに震え
ぽつり ぽつり
話す声がとぎれ
遠い踏み切りから
鐘の音が ただよい
届かずに消えゆく
銀の車両は
鐘の音のな ....
だれかれかまわず 噛みついて
信者をふやしているが
きみだけは天然のまま
わたしを
蹴ってほしい
ばあちゃんは、今年七十五歳だ。十人ばかしの小さな老人ホームに住んでいる。亭主の残したラーメン屋を売って、ここに移ってきた。ばあちゃんは、天涯孤独だ。亭主は、十数年前に、息子は、それよりももっと前に ....
父の墓に特級の日本酒をぶっかけたい
父の墓をキックしたい
父の墓のまえで煙草を吸いたい
父の墓の前で女とやりたい
父の墓の前で女にしゃぶらせたい
父の墓の前でいろいろ考え ....
みちたりてゆくいたみの海にしゃりしゃりと緑のようなきみを齧るよ
ふりだしたゆきにとまどうゆうぐれはゆびさきがあいたいとさわぐよ
とりあえず20年後か15年後ぐらいに総理大臣になろうと思う。
日本初の詩人兼総理大臣になる。
いま考えている公約としてはまず首相官邸をゼネコンとかでなく
日本全国の各市町村の腕利きの棟梁たちが集 ....
棚から落ちて
壊れた箱から
ころがりいでた
あねといもうと
今日は何をして遊ぼうか
ことのほか色を見たいのに
絵の具はどれも薄れてしまった
むらさきになるまでたた ....
ほめてほめて
あさ
おきたというだけでほめて
これはこどもっぽい
こどもっぽいふるまい
じゃあこどもっぽいということをほめて
めざめたばかりのぼくをだきかかえて
よいしょともちあげて
....
たいようのしずくをあびている
みずいろのかぜ こころをゆらし
ぼくはひとり せかいのはらっぱで
くさのかおりに みをしずませる
もりへゆこう もりへゆこう
どうにもならないそんな日は
....
ちいさなものを拾いました
街灯の下では真珠のように見えました
家に帰ってながめるとパチンコの玉のようでした
六畳間の蛍光灯のせいです
蛍光灯のせいにしたので
もういちど
見直してあ ....
キリストはキリスト教を作ったりしなかった
彼はただの愛に溢れた大工であった
キリストはよく遅刻したし、仕事にこない日もあった
彼はそんな風に頻繁に約束を破ったが
生まれたての子どもが誰彼と隔て ....
孵らぬ卵というものの中に
潜んでいるのだという
それは乾いた泥の中で干からびる
雨を待つ
お前がその雛だというなら
私が今度孕んで産もうか
遠い北海で
赤く実を吐きながら ....
むこうにも なにも
ないかもしれないと
壁を
イメージするとき
すでに敗れている
空が飛んでいる
空が飛んでいるので全ての羽が浮上する
見つめることはいつだって透きとおる
見下ろせば ものの在りかはかなしい
重力の堆積が歴史で出来ているなら
ぼくらの言葉は足跡のように ....
すてきな しっぽのある
いきものを もらった
まちがって しっかり
聖水で 洗ったら
死んでしまった
学 校 に 行 き た く な く て
初 め て 学 校 を さ ぼ っ た 日
何 を し て い い の か 分 か ら な く て
コ ン ビ ニ で コ ー ヒ ー と パ ン を 買 ....
何かを失って
また
何かを手に入れて
また
殺して
生かして
そんなことしてたら
感情が消えてった
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