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磨かれた廊下に深海魚たちがゆらり
ゆらゆらとゆっくり泳ぐ
深い眠りに就いているのか
夢をみているのかわからない
天気予報では明日は雷雨
深海魚には予報も関係なくて
廊下をゆらゆらと泳いでる ....
渓を夢みて酒をのむ
釣り人の竿には{ルビ鉤=はり}は付いていない
{ルビ水面=みなも}に糸を垂らし
静かに佇んでいる
一幅の絵のように
渓に溶け込んでいた
渓流竿は刀のように美しい
日本独自のもので
種類は今まで数百はある
明日は碧羅という強竿を携え
大物を狙いに行ってみる
月が欠けてゆく
今宵は更待月
琥珀の水を傾け
夜は更けゆく
明日を占う指先が震える
アマゾンの巨大魚
ピラルクを釣ろうと思い
ワイヤー製の頑丈な仕掛けを作った
これでは電車に乗れないので
少しコンパクトな仕掛けを作り
1mの鯉を釣ろうと餌を調合した
ひき肉とサツマイモと数 ....
人は時が薬になると言うけれど
ぼくには効かない
様々な記憶はあまりに生々しく
傷からは鮮血が滴り落ち
包帯を巻いても血が滲む
生まれた事が嫌だった
父はギャンブル狂で
女にもだらしなかった
雨漏りと床が抜けたあばら家に住み
幼稚園にも行けず
ろくに食べることもできなくて
何時も腹を空かせていた
学校では給食費も ....
ズンチャ ズズンチャ
ズンチャ ズズンチャ
ハナノイロハ
ウツリニケリナ
イタズラニ
ワガミヨニフル
....
盲目の身をたずさえ
漂泊の旅路を重ね往く
想い出の月を歌い
泉にくちづけ
明日を夢みる
木々の若葉は風に揺れながら
五月の歌をうたい
雲は羊たちのように
西から東に駆けていく
ぼくはクスノキのブランコに揺られ
港に浮かぶ洋紅色の貨物船を眺めていた
きみはマーガレッ ....
醤油の{ルビ醪=もろみ}が香る港街
岸壁の夜に出没する屋台の中華そば
秘密のスープを覗き込むと
豚骨、丸鶏、ソウダ節、かつお節、
煮干し、長ねぎ、玉ねぎ、昆布、干しシイタケ
出汁 ....
狂った時計を森の奥深く
猫の眼時計店に持って行った
ギィーと扉を開けた
こんにちは… 時計を直して欲しいのですが
店主は黙って文字盤を確かめた
これは狂ってはいないよ
ほら 見 ....
公園の水面に睡蓮が咲いている
ウスバカゲロウがふわりふわりと飛んでいた
ときおり
魚がポチャリと水面を跳ねる
貴婦人が日傘をさして橋の上から
池の睡蓮を眺めていた
ぼくはベンチ ....
みまちがえるほど
美しくなったきみは
微かに少女の面影を残して
窓際の席で紅茶を啜りながら
リルケの詩集を読んでいた
机を並べていた頃は
何でもなく話せたのに
椅子に画鋲を仕掛け ....
深海の水底に眠る者たちよ
我らはいま至福の中で歌っている
君たちは永遠に若く
我らは次第に歳をとってゆく
君らが捧げた{ルビ生命=いのち}は
決して無駄ではなかった
傲慢な思想 ....
朝霧のもやる中で
ぼくは尾瀬の夢をみた
ニッコウキスゲの咲く湿原に彷徨い
{ルビ詩=うた}を歌いながら
ぼくは大切な何かを忘れてしまい
グルグルと彷徨った
あれは何だろう
ルビー ....
きっと きっと
きみを幸せにするから
ぼくを信じて欲しい
ずっと ずっと
好きだから
雨の日も
風の日も
雪の日も
変わらない約束をするよ
言葉を交わした日を覚えているか ....
あ 愛するきみよ
い いつまでも一緒に歩いて行こう
う 後ろは振り向かないで
え 駅の改札を出たら
お 大きな山々が迎えてくれた
か 必ず幸せになれると…
き 昨日までの想 ....
月と鏡はお似合いの恋人だから
同じ夢を語りあっているのだろうか
耳をすませばその囁きが
少しは聞こえてくるかもしれない
梅の花はほころび
君たちに祝福を歌ってくれている
ねえ… ....
愛は強くしなやかに
恋は切なく甘酸っぱくて
歓びは高く天を突き破り
悲しみは深海に沈みゆく
光りと影の協奏曲が響きあう
騒めきの通りから
暗く曲がりくねった路地に誘われて
踵を返した
ランプが点いたドアの前
コツコツとノックして把手を回した
鍵はかかっていなくて
乾いたほのかな風がぼくを包んだ
ド ....
黄昏の空に雷鳴が轟いた
光と闇の螺旋が宙を舞いながら昇天してゆく
それは二匹の龍だった
恐ろしく
美しく
渦巻いている
ぼくは背中の翼を開き
龍を追いかけた
銀河を越え ....
ぼくの礼服はスリーピース
着ている人は見ることもない
{ルビ誂=あつ}えてから40年の時を過ぎ
いまもジャストフィットする
鏡に{ルビ映=うつ}るぼくは少し若く見えた
火葬場の職員が骨の ....
酔い酔いて
はるばる来たり
漂泊の
独り旅ゆく
冬の路
背にかかる
粉雪払い
往きゆきて
弥生の夜を
垣間見る
漆黒の
夜空舞い散る
さくら花
{ルビ闇路=やみじ}の ....
かくとだに
想いを馳せて
きみはいま
祈り捧げる
満月の夜
たらちねの
忘れた歌を
想い出す
今宵静かに
ぼくは歌うよ
あしびきの
夏に登った
山なみに
今はもう亡き ....
子供たちが去った夕暮れの公園
鋼色の空に咲く
小鳥のような白木蓮
その一輪をきみにあげたくて
手を伸ばしても届かないもどかしさ
きみが望むなら
この両手をあげよう
きみが望むなら
この心臓をあげよう
ぼくは風となって遠い旅をして来たから
もういいんだよ
いま欲しいのは
きみの頬笑みをひとつだけ
....
ほら、見てごらん
指先が少し光っているよ
表情のない肖像画が呟いた
ベランダに出て
夜空に透かしてみたけれど
少しも光っちゃいない
ん… 指が石化している
でもキーボードを打 ....
雨が降る
風が吹く
大地が揺らぐ
雷が空を這う
海はうねり
河は流れる
ぼくたちはそれを餌にそっと囁き
三百万年以上を過ごしてきた
洞窟で薪を焚き
語り部の老人から
時の流 ....
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