「ルイーズの空」
ルイーズはいつも空っぽだ
ルイーズはいつもとんがっている、山高帽の
だらしない紳士の椎骨あたり
途方も ....
油染みだらけの記憶のわら半紙提出期限をとうに過ぎ去り
透明なグラスの底を目にあててきみの星座を見る白昼夢
あの夏にきみが投じた問いかけのこたえをさがす 波のまにまに ....
夜が来る
月があってもなくても
私は鳴く
誰にも聞こえない声で
私にも聞こえない声で
私という存在の途切れ目 に
夜ごと咲く花があるからだ
けれど私はその花に
触れることはおろか
....
息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた
夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき ....
私は
そらに放たれた宇宙飛行士
オフィスの
隅っこで見上げてる
ホワイトボード
お知らせのメモ
ホチキス
こんな朝から
遠い宇宙の孤独を想う
私とどこが違うのだろう
正 ....
{ルビ濁=にご}った泡水が浅く流れるどぶ川に
汚れたぼろぞうきんが一枚
くしゃっと丸まったまま{ルビ棄=す}てられていた
ある時は
春の日が射す暖かい路上を
恋人に会いにゆく青年の ....
せつなさは
ほのかな香り
愛しさは
ほのかな温み
寂しさに
花びらひとつ
思い出に
花びらひとつ
甘く泣けるほどの
柔らかい痛み
そっと辿るだけで
蘇る泣き笑い
....
私は、何処へ行くのだろう
やらなきゃならないならない
お墓に入ったからって終りゃしない
だからってその後は知らない
失礼だわねぇ
カラスの伝導師
あっちむいてほい
眼鏡をかけなおす
夕 ....
春は
思いがけない記憶を呼び覚ます
フリージアの花びらが揺れていた
恋に幼い心も揺れていた
サヨナラの理由を
頬伝った涙をさらう風のせいにして
強がる笑顔で背中を見送った
....
ぜーんぶ わたし
よるのうたを うたうときも
ひかりのあめを およぐときも
ゆうやけのこだまを きくときも
なないろのかぜを ねがうときも
ほしといっしょに お ....
桜は傷つくごとに優しく花を咲かせます
うとんじられては優しく咲き
さげすまれては優しく咲き
これ以上優しくなってどうするのかと
桜自身も思ってはゐますが
優しく咲き
優しく咲き ....
大事なことは
ことばにしては駄目なんだ
ことばは
写真のように伝えるけれど
ことばの力は
限られていて
ことばにしては駄目なんだ
私は
今日もことばをたどっている
そこに ....
最後に
君に
最後に
カップラーメンの蓋が邪魔だけど取ってどっかに置くのも嫌だ
あの講義は睡魔との闘い
バイトの時間を間違えて謝り方を5パターンぐらい考える
親 ....
宿命でも運命でもなく
それはタンポポ
土手に降りそそぐ
季節の日差しに
僕は目覚める
旅立ちにはもってこいの日だ
風は南南東
ロウソク工場の煙から推測するに
風速は2メートル
....
傘を
返してほしい
名残りの雪は
綿のコートには冷たすぎて
ひとりで帰れる自信がないから
あの桜もようの紅い傘は
ほんとうはすこし空々しいから
好きではないのだけれど
....
雨の降る仕事帰りの夜道
傘を差して歩く僕は
年の瀬に冷たい廊下でうつ伏せたまま
亡くなっていたお{ルビ爺=じい}さんの家の前を通り過ぎる
玄関に残る
表札に刻まれたお爺さんの名前 ....
君と私とのあいだに
春の花を咲かせよう
おひさまではなく
笑顔で咲く
たんぽぽを
はるか
はるか雲の頂上に
あの時 みつけた宝物
未だに取りに行けていない
でもキラリ
今でも光ってる
あの時の雲ではないのに
同じ雲などめぐり来ないのに
....
透きとおる真昼に
日常が、消えていく
八月に買った青いびいどろは
もう割れた
観覧車に乗りたいと言ったのは
あのひとのほうだった
てっぺんに着いても
世界はちっとも見えなくて ....
春の種をまいたら
水をあげよう
すきまなく潤してゆく
ぎんいろの雨が
わたしの窓にも
あなたの窓にも
芽吹いた想いも
大きく育ちますように
六年前には
ぴかぴかで
ぶかぶかだった
堅苦しい制服
いつのまにか
丸くなって
すりきれたし
少し小さくなった
もう着れないんだね
淋しいよ
だって六年間がつまっているから ....
ポエム岬
千葉県房総半島は長い
犬吠埼から九十九里の有料道路を使って南下すること一時間
そこに小さな岬がある
ポエム岬
誰がはじめたかしらないが
そこはいつからかそう呼ばれるようになっ ....
川沿いに歩いて ようやく
国道まで出た
ぼくたちは、しばしば
夜を迷う
ぼくたちには靴がなかったけれど
それはたいした問題じゃなかった
歩くべき道を
さがすだけの、夜を
迷っていた
....
月が遠くで泣いている
うずきだす傷跡
誰も知らない
裏側の傷跡
それでも
見ていてくれる人がいるから
今日も
あなたの背中照らして
優しい光を
傷ついた分
もっと優しい光を ....
風はいつでも強いかな?
空はいつでも暗いかな?
ちがうよね^^
やさしい風も
あかるい空も
あるじゃない
不幸ばかりは続かない
素直になろうよ、私たち
心のわだかまりなくそ ....
よく晴れた日の午後
逃げ場の無い闘いに疲れた僕は
ベッドに寝転がり
重い日常に汚れた翼を休めていた
ラジオのスイッチを入れると
君の{ルビ唄声=うたごえ}が流れていた
窓の外に ....
屈めた背中を ゆっくりと伸ばすように
季節は移り変わる
それは水指に潜む 小梅の性
三寒四温の質感を受けいれては ひとり悦に入る
(ああ 春は素敵な季節
(水指の渇望は
(滴り ....
叙情の彼方を探るように この岸辺にて
翼を休めるものよ 優しげな日差しと
聞こえ来る 春の訪れを告げる歌声
地に生けしもの総て 目覚めの刹那を夢想する
巡る季節の旋律は いつにもまして ....
星明りを知らない。
月が今も足元や景色を照らしてくれるように、
星明りも言葉だけのものではなかったはずなのだが。
そんなに大昔ではない昔、町でもなければ雨や曇りの日、
ひとは足元も ....
なつかしい歌を
久しぶりに聴いたから
あの頃読んだ詩の一節を
ふっと思い出したから
永遠だと信じてた時間が
いつの間にか
過ぎ去ったことに気付いたから
絶え間なく変わり続ける ....
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