あら、困ったわ
が口癖の君が困った様子なんて
今まで見たことがない
あら、困ったわ
なんて言いながらも
トントントンッとまな板の上で大根を切ったり
ザッピングをし続けた挙句の果ては ....
まけじゃんけんというものをおそわりました
さきにあいてがだしたてに あとから
わざとまけるてをだすじゃんけんだそうです
ぱーには ぐーを
ちょきには ぱーを
ぐーには ちょきを
ま ....
ふと右を見ると三塁手が君だったので
僕はすっかり安心した
うららかな春の日、デーゲームは淡々と続いている
スタンド、ベンチ、フィールド
いろいろなところからいろいろな声が飛び交っている
....
ねぇ、写真にことごとく指写ってるよ
ねぇ、このアルバムポッケ写真ブカブカだよ
ねぇ、百円均一じゃやっぱこんなもんだよ
すごく不恰好
ねぇ、この布団じゃ床が痛いよ
ねぇ、この電気毛布じゃ寒 ....
デートですか
どこに行きますか
映画の後にお茶でしょうか
順当ですね
ところで春ですから
サルスベリの下でりんごでも齧りましょうか
芯はくださいね
紅茶に ....
雪が降って
寝ている間に
ひそっりと
雨が降ったらしい
朝起きてみれば
魔法がとけて
春が来ていた
ぼくはさむ風を知っている
ほどよくちぢこまる肉体が ....
どこで弁当をひろげよう
昼ちかく たどりついた街の
日なたという日なたは
こども連れの若い主婦たちと
近所の猫どもで占められ
太陽の塔のしたの
とっておきの日だまりには
ホームレスがひと ....
深爪しちゃった
爪がないので痛くて
力が入れられない
これじゃあ何もできやしない
何かを作ることも
何かを掴むことも
目の前をあなたが通り過ぎる
掴めない手が空を泳ぐ
深爪 ....
今朝、レモンを産んでしまった
それは、色も形も匂いもレモンそのものだった
もし産んだのが卵だったら対処のしようもあったろうに
なんでレモンなんか産んでしまったんだろう
レモンに耳をあてると ....
父の指にあわせて
ピアノがアカペラで歌う
大胆なくせに不安げなその歌声が
休日のリビングからご近所にも響いてしまって
父はますます手のひらに汗をかく
父よ
バイエルの14番から
....
○ところで皆さん!
ところで皆さん!
口を開けてください!
と、日記に書いた
書いたのは私一人
読むのも私一人
そこから先が続かずに
皆さんが口を開けて待っている
....
ワイパーを身体につけたんだよ
ネジでさ、おへその穴に固定してね
勤続十五周年だもの
いろいろな人が去っていったもの
自分へのせめてものご褒美だもの
憧れていたんだ、ワイパーのある ....
君が積木など買ってくるものだから
僕らは積木遊びをするしかなかった
家をつくって
壊し
城をつくって
壊し
他につくるものなど知らない僕らは
やがて一つ一つを並べ
街をつくり始 ....
起きたら
三島由紀夫だった
下唇を噛んだら血が出て
三島由紀夫の血はこんな味なのか とか
白くて小さめの歯は けっこう硬いのだ とか
会ったことないのに懐かしむ
せっかくだから ....
うまれた時に にぎっていたのは
青いちいさな さみし石
てのひらからもぐりこんだそれは
ぼくの ひざっこぞうになった
ときどき いたいの
とっちゃいたいと おもう ....
おかあさまに叱られました
穴など開けてはいけないよと
でも もう 私はすでに
頭といわず 心といわず
いろいろなところに
穴を穿たれてしまいました
すうすう寒いのです ....
足のないネクタイは
人の首にぶらさがって移動する
それも不便だろう
足をつけてあげると
嬉しそうに部屋をかけまわり始めた
帰ってきたら
スキップの仕方を教えてやらねば
今日も足のつい ....
陽は傾き 窓辺にからみつくアイビー
逆光の影 開け放った窓
私のため息があなたに届くころ
西の空はしずかに今年の終わりを告げる
もうニ度と会いたくありません
無理して告げる機会も ....
寝返りをしたら
ごめんねと言われたので
うんと言った
ああ そうだ
とびきりのイイ男の彼氏と寝れば
マニキュアの爪を
しげしげとながめたりする
ミネストローネをすすって
口紅つけて ....
ゆうべ あなたとお酒を飲んだ
ブランコ通りにあるマギー・メイというバーで
このバーに私は一度だけ来た事があった
あなたは久しぶりに来たという
長い髪を束ねたバーテンの女性
凛とした立 ....
私はあなたを失いたくないと
思っていたけれど
あの頃 あなたを失えるのは
確かに私だけだった
私はあなたに
遠くになんて行って欲しくないと
思っていたけれど
あの瞬間 あなたを遠くに ....
母さん、
ほら、春の風が吹いて
そろそろ僕も
行こうかと思います
春の風は早足で駆け抜け
いつも、僕は一人残されてしまうから
風のすべてが海の向こうに渡る前に
そろそろ行 ....
ほくろが動いてないかたしかめる。
玄関へ行って
あなたの靴に 足を入れる。
私は帽子かけの帽子になってしまったのだろうか。
りんどうを掴む
足首に捲く。
コーヒーをいれました
二杯
一杯はわたしのために
そしてもう一杯はあなたのために
並木のイチョウは黄色く色づき
風が吹くと何かの音をさせる季節
けれども窓は閉じられていて
見るこ ....
いや
と
つぶやくようにふるえると
夕焼け
きみのくちびるが夕焼け
のように
まわりの景色をちょうどいい速度で染めてゆき
滲ませ
くちびるから夕焼け
....
三食昼寝つき
おやつもつき
まいにち決まったお散歩コース
決定権は
打算と好奇心に基づいているため
決まったように見えなくとも
忠実なのである
初潮を ....
二月ぶりに実家に帰り
仏教徒のくせにクリスマスに会う
きみはいつもの通りアニメソングを口ずさんでいて
まるで昨日別れたようにわたしに声をかける
いつものように15分遅れて
待ち合わせ場所 ....
しようよ、って
いって どうぶつみたい
なんでもライオンみたいに
がおう!
おおきなくちをあけて
たべる
きもちいいねえ
ひきちぎるか
ひきちぎらないかくらいのちからで
はだかで ....
みかがみが
てらり、と照らすので
波紋がまぶしそうに空気をつたっていく
みだれ飛ぶひかりがひとしずく
手のひらに落ちた
代わりにチェリーをひとつぶ落として
みなもを揺らし、くり返す
....
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