朝のこない団地
たもつ


君が積木など買ってくるものだから
僕らは積木遊びをするしかなかった

家をつくって
壊し
城をつくって
壊し
他につくるものなど知らない僕らは
やがて一つ一つを並べ
街をつくり始めた
このあたりに企業の社宅
この区画が分譲住宅地
スーパー、ホームセンター、病院
街はずれには円柱形の給水塔

車が欲しいというので
近くのコンビニを三軒まわり
ミニカーつきのお菓子を見つけて買った
建物に比べると赤いスポーツカーは妙に大きいけど
それでも君は満足そうにメインストリートを走らせている

本当はね、車、白かったの

夜が明けるころ
君は生まれ育った団地の話をし始めた
時々、嬉しそうに
時々、涙声で
僕はただ眠たかった

本当はね、車、白かったのよ
遠くで積木を片付ける音が聞こえる
何で積木なんか買ってきたの?
たずねたような気がする
おそらく答えも聞いた


+


それからもう二度と
僕らが積木遊びをすることはなかった





自由詩 朝のこない団地 Copyright たもつ 2004-01-06 15:03:45
notebook Home 戻る