小詩集「なんでだろう」
たもつ


○ところで皆さん!

ところで皆さん!
口を開けてください!

と、日記に書いた

書いたのは私一人
読むのも私一人
そこから先が続かずに
皆さんが口を開けて待っている



○後悔

友人が「お吸い物」をたのみ
私は「お吸わない物」をたのむ
冗談のつもりだったのに
「お吸わない物」はきちんと出てきた

友人が美味しそうに「お吸い物」を吸っているそばで
私は正しい「お吸わない方」を考えるばかり

後悔先に立たず

後の祭り

風が吹けば桶屋が儲かる

私は桶屋ではない



○こら

ガラスびんの中には
小さな国があって
小さな人たちが歩いている
のぞき込むと手を振るので
手を振りかえしたら
びっくりした顔で
逃げていった
ムッ
いったい人のことを何だと思ってる



○夏の終わり

満員の通勤電車
誰かがひぐらしの鳴きまねをした
カナカナカナ
ああ、夏が終わるな、と思った
隣のおじさんが
夏が終わるな、と呟いた



○なんでだろう

一昨日から変なオブジェのようなものが
私につきまとって離れない
それは
なみなみの
あみあみの
ごろごろで

どこか身体の具合が悪いせいかもしれない、と
病院に行っても医者は
ああ、うん、ごにょごにょ、と言うばかりだ

会社では皆、私にオブジェがついている
のが当たり前であるかのように
あみあみを指で伸ばしたり
ごろごろをもてあそんだりする

それにしてもなんでだろう
お茶をすすりながら
隣にいる小野田さんのオブジェを
指でぷにゅぷにゅしている








自由詩 小詩集「なんでだろう」 Copyright たもつ 2004-01-24 07:40:31
notebook Home 戻る