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芽、夏の始まる頃
なだらかに繁茂し
雨戸のような
古い匂いのする部屋
少年は水棲生物の絵を描き
鉛筆の芯はそのために
おられ続けている
逝くもののために祈り
生まれるもののために祈る
....
一.
夜
と
おなじ速度で落下する
きみと
きみ
の 心中しようか
亡命 なら
考えたかもしれない
二.
きみに似ているもの
・深夜のガソ ....
あれはもう60年代が終わりを告げようとしていたあるホテルだ
ウイスキーは匂いだけのままあたりをうろうろし
クリスマスツリーのてっぺんの星は胴体を切り取られたように見えない血を流していた
....
星は祈るように首をつって、空にぶら下がっていた。
あそこにいる人が
あなたの本物のお兄さんだ、と
偽物の兄は言った
青空にあんなに高く手を挙げて
いつまで疲れないのだろうか
明日になったら
偽物の兄が大好きな
餡子のお菓子を持って
....
この耳さえ聞こえなければ
あなたの壊れる音は聞こえなくなる、だろうか
この耳さえ聞こえなければ
俗世で言う嫌味ってやつに勝てる、だろうか
{ルビマンドラゴラ。=きこえない} 素 ....
嘘をつくな と 真面目に 言ったので
もう一人の 男と もう一人の 男が
白人である事 黄色である事
浮気 溢れる 瑞々しい 官能の大地で
一緒に 踊り
一緒に 諦め
先を 進め
先 ....
シリウスが綺麗になったから
息子と一緒に
夜の海へ出かけた
星の匂いが鼻をつく
息子の手には
骨董レベルの携帯が握られていて
それは
息子の母親の持ち物だった
....
非常階段の手摺に凭れて
今日もあの日の夏雲を見ていた
わだかまるのは線香の匂い
墓場で見上げた真白い積乱雲
失ったもの等何も無いさ
多分
待ちくたびれて気が付いたら
青空に沈んで ....
浮遊するのは 短い 手である
切り取られている それらは
いなくなった 僧侶であり
僧侶の 泥の数珠である
浮かび上がるのは 指先である
アスファルトの 教義に
道徳の 邪 ....
こな雪がつもった
前髪につもった
この大都市で
吐息がきこえた
君の
吐息がきこえた
フリマの一番隅の方で
いなくなったままの父が
お店を出していた
犬がいっしょにいた
名前をペロといった
父が好んでつけそうな名だった
お店には小さな靴が一足
子供のころ私が履いて ....
「あの先に地獄があるのだよ」
そう言って
男は金づる伝いに降りて行った
まるでむせかえる様な天国そのものでも
やがては退屈になってしまうの
「真っ直ぐ行くと突き当たりになるけど」 ....
部屋を散らかしたのは
くうはくを誤魔化すためでした
ちっぽけな体一つあらわにし
眠る胎児のように
埋もれてしまう
冷たい床に左耳を押し当てたら
渦巻く激情が
ごうごうと唸る音
泣く ....
雨戸を開けたら
夜の一過性の麻酔が
今は静かに窓に張り付き
単なる水気となっていた
その硝子面を、つつ、と指で擦り取り
そこを覗けば、山茶花の
一塊の色彩の首だ
....
おおきな赤ん坊の寝床だ
そして赤ん坊は
不可解にして かつ世に堂々のあるじぶりだった
赤ん坊が這い出していったあと
どうしてこのようなしわくちゃのものが遺ってしまったかについては
世界は調査 ....
老人は考えています。
自分はルールの結晶なのだと
老人は考えています。
老人は考えています。
自分は自分のルールの結晶なのだと
老人は考えています。
何十年 ....
「わたし あかいろがすき」
悪い癖で、また盗った。
チョークが二本とチョコレート
それが何かも分らぬうちに
それが何かを誤魔化されて
歌うくちびる
るるらりら
しょく ....
むかいあった
瞳の奥も雪が降る
水彩画になる
そして
風がたたいた
格子戸がまぶしい
瓦にすわる
しずかだ
小さな庭に
骨が積もった
息子は
動物だと思っていた
傾く 下女の 痴呆の 濃さは
飼い主の 憎女よりも いやらしく
そもそも 出生がない
俯く 下女の 狂気的な 濃さは
下僕の 筋肉を 嘗め尽くす 炎よ
そもそも 棺がない
美しく生きる人を見た
美しい手からなる美しい庭
秩序はなく、整然としてなく、
自然に、あるがままに、緑の草原と咲き乱れる花たち
「人生は短いわ。だから楽しまなくちゃ」
9 ....
学芸会でぼくは
ぼくのお母さんを演じた。
ぼくの演じたお母さんは絶賛された。
でっぷり太っているが清潔である。
石鹸の匂いはしないが朝ごはんの匂いがする。
ぼくの間違えた答案を間違え方が ....
確かに買った筈の切符がない
この列車の行き先を見上げた
その時を逃したら
二度と出会えない人が存(い)るように
この時を逃したら
きっともう こんなことは起こり得ない
そう思ったのだ
あの時からいつも
そんな気持 ....
マーガリン塗って耽ってる パパの退屈な新聞に 二つ小さな穴を空けたら そこからどんな目が覗くだろう
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
予想外だった
こんなにも簡単に爆発してしまうなんて
* * * * *
掌の中に包み込むようにして隠していたグレープフルーツは
レンタルビデオ屋の万引き防止センサのゲ ....
生きる事を忘れた
そのニュアンスはとても
息をするのを忘れてた、はは。
その響きによく似ていた
笑い声が空しいのは
自分が其処に居ないから
不愉快だと怒鳴り散らして
いっそ傷 ....
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