男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
ある日
自動ドアの前に立ったら
開かなかった
押しても引いても
やっぱり開かなかったので
慌てて君を呼んだ
ちっとも開いてくれないんだよと言いながら
二人並んで立ってみた ....
無数のソーダ水の泡が
ソーダ水から夏へ飛び立つ
そのときの一頻りの冷たい破裂音を
私たちは聞きます
ね、
それは、模範的な別れの際だと
ほら、そのあとに残るぼんやりとし ....
『かわいい匂い』チアーヌさん
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=20788
チアーヌさんの『かわいい匂い』という作品には、ふたつの匂いが
登場す ....
まっさらなノートを買った
でも
それだけでは
所有にならない
光のようなシャツを買った
でも
それだけでは
所有にならない
汚さなければならない
涙が出るほどに
渾身の力で ....
1988年の秋に、私はそれまでの詩のかき方を精算すべく、個人詩誌「風羅坊」を創刊しました。コンセプトは、短く、平明で、身辺的であること。そこにはそれ以前に親しんできた現代詩的な構文への反発がありました ....
食事のマナーが悪い、と
君を叱りつけた
私は不機嫌ではなかった
「ごめんなさい」を君から聞いてから
後片付けを始めた
その頃には言い過ぎたことを少し反省していた
隣の部屋へ駆け込ん ....
できることならば
この世の終わり
というやつを見てみたい
ハリウッド映画のような
スペクタクルなエンディングなのか
あるいは
独居老人が衰弱死するみたいに
静かで孤独なラストシーンな ....
どうしようもないくらいの
空の返還が
わたしに帰ってきた
わたしの唇は青いことでいっぱいになる
空に着歴がある
それは長い長い数列
雲は遠くの蒸気と会話したりするけど
やがて話が尽き ....
わたしの体の真ん中に
小さな芽が
顔を出しました
わたしはその芽を
大切に大切に
育てようと思いました
その芽は私の体から
養分を取るので
わたしは土になりました
数ヶ月 ....
雨に濡れるのを忘れた人が、信号の前で返り血を浴びている。どんよりと、ただどんよりと生きていけ。おまえの夜の病はいまだ進行中だ。魚群探知機に映る影の人びと。探そうとしてもけっして探し当てられない影の呼吸 ....
悲しみが生まれた頃は
見えないものなのです
それは
徐々に姿を現すのです
時間が経つにつれ
小さくなることはありません
同等の質量を維持したまま
心の真ん中に居座り続けます
....
どうしたらPIXIESみたいな曲が書けるのだろう
なにを経験したらPIXIESみたいな曲が書けるのだろう
寝ても覚めてもそんなことばかり考えてたから
悲しい奴になってしまったんだろう
....
誰かを救う使命を帯びて
闘う男(ファイティングマン)!
萌えるロマン!
「そんな事より腹減らない?」
あぁそうか
君の事忘れなくちゃあね
無理矢理出した答えだか ....
要するに
たどりつけないということだ
だけどそこにあるでしょう?
そんなふうに
要するに
好きなんだということです
無限に
割り切れないのです
だけど
そこにあるのです
....
、夜
酔ってばかりの
未解決の心身に、任意の心身
合わせることで隠し合うことを
少し疑いつつも仮に幸福と決めたら幸福と言い幸福と呼び
初めて見上げる天井を見上げ、私
知ってる? ....
鬱蒼と茂る蔦と枯木が這う廃屋
誰も居ない清々しい生の匂い
なびく髪に感じる生々しい脈動
帰らぬ主を待つひび割れた扉
軋みながら倒れ逝く門柱
彷徨い込んだ痩せこけた犬
布団が干され ....
コンクリートの丸いもようは、踏んじゃだめよ
って、
しあわせになれないから
って、
きみが言ったとき
さっき
二度ほど踏んでしまったぼくは
ちょっと泣きそうになって、あわてて
声をだし ....
今日は月夜かと思ったら。
空にあいた穴からボトボト蛍光色の液体が流れてきた。
筏でも作ってあの穴まで漕いで行ってやろう。
穴はいくつも空いていき、様々な蛍光色の液が混ざり合って
風景が ....
ちょっと感情を培養し過ぎた
いらない試験管を廃棄しておくか
だから
今も
死んだと思いながら
生きている
月曜日の朝
深いところで、溺れていた。
このまま溺れても好かったが、顔を上げてみた。
肺一杯に息を吸い込み、生命の痛みを全身で信じる。
潤む視界の奥。
空気が弾ける。
鼓膜を擦る ....
ありふれた演算子でも
洗練された定理でも
複雑な感情を記述することはできない。
明解な文法でも
思案尽くした形容詞でも
あなたの核心に接近することはできない。
....
果てなく延びる灰色の路
どこまでも高くそびえる灰色の塔
無数の閉ざされた扉の列
漏れ出る弱々しい灯り
忙しなく動く膨大な数の体
頭上足下を駆け巡る不可視の奔流
照らし出される表層
生み出 ....
たったひとつの日没で
子供の左の手の中の
逆さの野の草の束からすんなりと
午後の初夏は落ちてしまい
子供の左の手は
無数の落胆のうちのひとつとして
野の草の束を、用水路 ....
思いと
言葉が
噛み合わない
何も無いはずなのに
何かに引き寄せられる
ような
すべては離れていくいっぽう
一部分だけがつながっていく
感覚が
言い知れぬ
深みへと
引き込んでいく
自分の部品が
一 ....
思っている事は
頭の中をぐるりと回って
言葉となって発せられる
ただ
思いによって
何周するかは個人差があり
僕の頭の
中には
まだ
居残りさせられて
何週も走らされて ....
惑星探検隊は、その星の生物に囲まれてしまった
探検隊の周囲でひざまずいて祈りを捧げ始める生物
「俺たちを神か何かと思っているのか」と隊長
「翻訳機のスピーカーを入れます」と隊員
「神よ、い ....
誇り
自信
強気
思い
は
なにもかもが
弱さを
覆う
甲冑
重く
硬く
すべての言葉を弾く
けして
自分で
外す事は出来ず
いつしか
自分の両刃の ....
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