雨の日 音は海辺を描いた
さまざまな色を塗り重ねた
色はどれも少なかった
月や花からわけてもらった
銀と灰
黒と金
もっといろいろ描けたのに
ずっと待ちくたびれていた ....
だから
ふりむかないことにする
いつでもどこでも
撃ってくれ
防弾チョッキは着ていない
君は
エプロンで
マシンガンだから
僕は
好きだったんだ
パレードがいってしまう
オープンカーがいってしまう
紙吹雪がいってしまう
にぎやかな楽隊が
歓声がいってしまう
パレードに手を振った
誰かが
こちらに手を振った
私が手を振る ....
1.
シナ子
今、列車に乗っている
田舎に帰る
トンネルに入るとヒューィって音がこだまするの
それは列車の車輪の音
昔よく吹いていた草笛にも
車掌さんが切符を切る音にも似てる
....
冬は太陽が低くて
オープンキッチンのカウンターは
暖まっていて
太陽から連なる
六角の連凧が
ブラインド越しに差し込んでいて
左目を射抜かれてしまう
カップの中のアー ....
アルコホル
眠くなる後悔する
の
夜のすきまには
都電はすべて ばらけている
傘の先つたう水を
すとんと間抜けた放送を
泥に似て垂れる人を窓につぶつける雨を
ゆられてふらめく光 ....
からり
首をまわして
なる骨に苛立ちながら
結局空間 存在しな
がらわたしの固まった
想いを伸ばしても
頑につらぬく
わたし想い錐のように朝靄の完璧な町
はっきり
はっきりして ....
泣いているこどもは
湯気が立っていて
かわいい匂いがする
抱き締めて
頭に鼻をくっつけて
くんくん嗅ぐよ
産まれたてのときは
わたしの内臓の匂いがした
今も少し
する
....
*
目覚めると音のない世界
カーテンの隙間から灰色の光が射している
明けていくカーテン越しの光のなかで
青磁の肌が鈍く輝く
この部屋はこんなふうに朝を迎えるんだね。
僕は君を置き去りに ....
あるく
そぞろあるく
奥にあるものに かたる
いらえをあてにして かたる
かたりながら だまって 歩く
歩く
やあ、なんという沈黙
雲さえとうに まいちった
がりがりと ....
1. 父
自分で名前をつけたくせに
なんで
わたしの名前も
呼べないの
笑いながら尋ねると父は
つられて笑うのです
真剣に
それから、突然
他人でさえ覚えているのに
と言っ ....
一時間に一本だけの電車の中で居眠りをしてみると
回想の中で自分の自分に逢えるので
もう一度と思ってみても
一時間に一本なものだから
すごく困ってしまう
ぼくらは、たまに
どうしよう ....
最近どうも
君の胸に鍵をさすことができない
手にした鍵を
むりに入れてもしっくりせずに
疑心暗鬼な手つきで
がちゃがちゃと
右や左にひねっては
君の表情を曇らせてばかり
だ ....
覚えていますか
と
問いかけるのは怖い
そして無意味だ
わたしはあなたにとって
最初から存在しなかったと
同じなんだと
確認したところで
一体なんになるだろう
覚えていますか
と
....
今夜は
無性に 胸のあたりが苦しいので
闇の中
家の裏山に ドラえもんを探しに行く
おそらく
好物のどら焼きをえさに
すずめを捕るような仕掛けで
竹篭を逆さにしておけばよい よう ....
とっておきの、嘘、も、
いっかい使ったらどろどろになって指を刺した
みじかく切った髪の、毛
が、
きみののどに刺さってくれたらちょっとは
にじんでいいとか悪いとか
、なれたかもしれないかな ....
夏の初めの宴会は
私の手の届かないところで始まる
少し水を含んだ粘膜が柔らかく糸を引き始めて
まだ湧いたばかりの入道の行方を
飛ぶ鳥だけが追いかける事が出来る
遅咲きの妹は去年の春に熟れ ....
矢野顕子を口ずさみながら
ヒールのコツコツの月を
連れて帰る
つらい分だけ吐き出した
あなたは楽になっただろうか
つらい分だけ黙り込んだ
私はどこへゆくのだろうか
もう二度と ....
秋になったかは知らんが
満たされない月に向かって吠えます
オレンジの灰が屋上の地面を転がってゆき
本当の地上へ、ダイブ
深夜3時になりそう
明日への特急が来るなら何故に荷物をつくらないの、と ....
鏡にそっと、右手を、ついて
じいと覗き込む、あたしの顔
左、右、あたしにふたつ、目、目
やさしいことがたくさんつまった左目が
いけないことを見下ろして、目、目
それよりもほんの少しだけ下にあ ....
肌を、エア。気づくとイラつく太陽は頂上。知らずのぼくらの、ここそこあそこを均等に、均等に照らすのでした。光、光光、だから見えるってさ。記憶って、街中に溶けて流れて固まってつまり建物とか電柱とかそういう ....
いいよ
ぶた肉だっておいしいし
キャベツだっておいしいさ
私はかなしみの台所で
フライがえしをあやつるアリア
しおのひとふりでとけてしまう味
がまんできない幼子の
かなしみ かなしみ か ....
するり、逃げ
架空の生き物のように、人の手には触れられず
するり、猫は逃げ
けれどいつか
その気儘な速度の肢体にある肉球で地面を圧することをやめ
肉球を翻し、力無く、空に ....
しりきれとんぼの君に
まる
いつもあたらしいおもちゃの方を向いて
振り向くこともなく
ぽいと捨てられた君のおもちゃに
まる
おけらの君にまる
最初の意気込みと
投げ出す言い訳の愛し ....
生まれたての
手の平で つかんだもの すべて。
鎖骨の窪みから とくりと こぼれだし。
山や丘の傾斜地を ゆっくり流れる。
スペイン産の白ぶどう酒の
甘やかな匂い。
車輪のスポークが散らす ....
いまそこにピアノ教室があったの、って
水銀のけむりのようなわらいかた
こどものバイエル 残酷な風景に寄り添う
音楽
あなたが舌のうえのやわらかいスイッチを押す
(どんどんだめになる) ....
いつか
遠い昔の夜
暗い海の
浮かぶ月に例えてくれた
何も残さない
わたしの体を抱いて
その透明なまぶたでは
すべてが見えてしまうね と
力なくゆだねる
その体は
いつか
水にな ....
a
せかいは、ぼくはここにいるの
だいがっしょうでまるでしんでいるようです
あまりにこえがおおすぎて、
もうききわけのつかないのです。
あれはだいすき ....
あつくて
あおくてあかくて
夕立ちが来るのをひと月半くらいまってた
あまくてあざやかで
あやふやであさはかで
あきっぽくてあきらめが早くて
工事現場にはどでかい紅白の
固定クレーンが ....
うみねこはねこじゃない
うみうしもうしじゃない
うみぶどうもぶどうじゃない
うみほたるは魂じゃない
そのほたるも海には帰れない
漁り火はほたるじゃない
燐光もほたる ....
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