赤土の皿に赤い身
濃い溜まり醤油と
潮気かおる雨宵

ここでしか漁れんもんやから

引き戸かたつく飯どころ左隅で
ちらちら横目くれられビールを半分まで
流し込む
わぁ美味しそう  ....
夕立でもぎ取れた蝉が
丁度今乾き切りました
私はアスファルトに足を揃えました
腹をかえし対の肢を合わせたその亡骸は
無音の言祝ぎでした


夕立のあと再び燃えていた日は、結局 ....
  
猫が逃げました
ボヤが出ました
便所は汚すな

親切な貼り紙のアパートの
隣の部屋の人の顔 
まだ見たことありません

のような午後の世界に

河川敷の花火
の音が聞こ ....
冷凍庫から取り出した氷の
溶けていく音が響いている
ちりちり ちりちり
静かな部屋に染み渡っている

窓の中では雲の
輪郭と輪郭とが
混ざり合いながら変化している
終わらない終われない ....
なにかを知るはずもないのに
海はそこにいて
呼んでいる
なにかを知るはずもないので
海はいつもそこで
呼んでいる

誰を

誰を

誰か を

きみとはどこから
どんなふう ....
かるぴすの おと


ひぐらしの こえ

かげろうの はね

おばさんの かげ

うたたねの ねこ



みあげれば ここ

すいそうの そこ

てんかわの そこ
 ....
小さな部屋から
見上げた夜空に
架空の乗り物
架空の星座
笑みのように燃えては飛び交う
カーニバル
カーニバル コンテニュー



小さないのち
小さなかたち
散り急ぐ ....
青いかーてんに囲まれた
くーらーの部屋にて
四角い窓の外
蝉時雨の飛び交う青空の向こう
うっすらと流れる雲の傍らに
君の咲かせる笑顔や
ふと うつむくさびしさを
想い浮かべ
今日の  ....
退屈をにぎりしめて
おもてへ出た

そぞろ歩きのアーケード
レモンの駅のホーム
まわるバスターミナル
あと3日で実が落ちるびわの木

ドアの前についた時
にぎりしめていた退屈は
ど ....
やがて来る、あたらしい雨
プラットフォーム
この手で焼いた
たこやきのまるいかたち
そしてあの子のえがお

満ち足りた身体に
デザートがはいるだけの
ちょっとした空隙ができる
まだ走 ....
ひだはそれを吸い込んで

ぼくはたとえば茫然とし

まるで関係のなさそうななにかに

縋ろう縋ろうとするさまはこっけいなんだろうと思う。





風鈴がな ....
ある窓があって
その窓は生まれつき北向きなのに、あちら側では
目を開いたまま湛えられた池の水面が光になり
崩れそうに傾きながら何かを守る強い屋根瓦が光になり
駐車場に並ぶ誰もいない ....
最後の人が飛び降りたまま
裏返ったブランコの鎖が歪に静止している
翌日になれば元に戻される、それだけのこと
わたしは、もうずっと公園にいない
だから知らない


ブランコ ....
手のひらに握り締めた
生まれつきひび割れた蝉のひび割れた雲母
手のひらの中のその震えと光とを
唯一手に負える夏の単位として感じていた


けれど、もしも
手のひらの中の光など単な ....
街にはビーズが散らばっていて
きらきら きらきら
あちこちに染み渡っている
信号待ちの隙間に
自分の色を
みんな拾い集めている

窓には夏がはめ込まれていて
静かに 静かに
深い青を ....
こはるびよりのひだまりで
つりをしながらあくびをすると
ぽろっとくびがころげおち
ついでにうでもころげおち
なかよくはりぼてけりながら
うみのうえをかけていった。


いそにのこされた ....
サンダルをはいて
かわべりをあるく
ゆうだちのあとの
なつのにおいはわたしの
あしのつめににじんで消える

わたしがいなくなる
みどりのなかにとけはじめ
ゆっくりとかぜにながれる
上 ....
どうしようもなさも手伝って
今日の夜は37度
人に縋るのも止したいような暑さです



あなたは決まって三歩先
速度を緩める優しさです
月だけ大きく真黄色で
止ま ....
右曲がりの坂道を
30歩のぼったところ


雨上がりには
アジサイが
酸性やアルカリ性に色づくので
それならば涙は、と
通りすがりのにわか雨を
ふたたび


つま先に 
ひと ....
まつげ の隙間
に からから 

閉じた 指
そっと 痛いくらい ひろげて

輝く どんな 言葉 よりも
たゆとう どんな 海よりも

この 指 の谷間 に吹く 風よ
 ....
ぼくの中の沸騰石はころころ
指のさきまで転がるんです
背骨を真っ直ぐにしている力よ
どうか今すぐに椅子ごとざわめきを引きちぎって
このぶつかりを
愛だと言わせて下さい
きみに言わせてくださ ....
もう何年も前のこと
ある夜のブラウン管の中
孤高のステージで
赤毛を振り乱して歌う{注ジャニス=アメリカの歌手}

夭折した彼女の生涯を
ナレーターが語り終えると
闇の画面に
白い文字 ....
不意に
あたし窓と
繋がってしまう

鉛筆で
描かれた
教室の

田の字のあたし

とても
赤い空が
あたしの中
震えてて

どんな
ちいさな欲望も
残さず
きれ ....
この庭を今
黒猫が横切りました
急ぎ足です
影だったのかもしれません

向日葵は私を追い越して
手探りで空へ
夕暮れの角度を真似して
ちょっと斜めに傾いてみると
向日葵と空が
一緒 ....
逮捕される前に
一緒に暮らして
外で
立っても歩いても


電車を降りると
豊島園駅は広い
花りが走りまわる
「くるくるまわるー」って
急行所沢特急所沢普通西所沢
改札を出ると
 ....
ケンカして
頭にきて
飛び出しては来たものの
あんまり夜が静かで拍子抜け

細くて白い三日月が見える
今この三日月をどれくらいの人がみてるんだろう
あの暗闇の天辺をアタシと同じ気持ち ....
下方を流れる
動けないアスファルトを
凝視している
夏の衣服の軽率な体で、出来うる限り
常に重力のことを忘れず
下方を流れる、動けないアスファルトを
凝視している


歩く私 ....
女は
胎内に新しい生命を宿したら
「母親」になるというのに

男は
新しい生命が誕生してから
「父親」になる権利を得る
のだろうか

それは
目の前に細く頼りない道が一本
 ....
あなたは、
簡素な手順でわたしの胸倉を開き
匂い立つ土足
こればっかりは慣れないものです
その度に鮮やかに毟られる


あなたと遭難したい
篭って
香しき動揺が眼に見える位置で
わ ....
軒下で猫が鳴いた日
街は雨だった
雑音が混じる電話の
聞き取れない君の声
こんな日が原因かもしれない

街に
傘を持って
ついでに長靴も用意した
ばらばらに音が降ってくるので
軒下 ....
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