炎の刻印が
街に押されて
ようやく
冷たい夜が明ける
街のマリア様たちは
眠い目をこすって
もう、
明日から振り返ったとすれば
何度目の
希望を
浪費しただろう

夜 ....
懐かしい未知は
遠く空へと続く道
気流の音が鳴り響く
大気圏を通過して
桜色した巻き貝の
トンネル抜けて
帰還します
波の跡が
空に残って
だけど
いつのまにか風が消していく
秋の雲はことさら
はかなげで
明日にはもう
冬のものになってしまうだろう

空は
海のなれのはて

今はもう絶滅した海 ....
女の温もりも
家族の団欒も
過ぎてすっかり独りである

風が吹いて
途方に暮れて
確かな予感を持ち独りである

遠くの森のざわめきが
夜空に木霊し未知を紡ぐとき
私はひたすら独りで ....
  けだもの


ひとの声がする

空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に

やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする

《祈りなさい ....
溺れないようにもがく
ここにあるものは肉体と
満たされない空と
注ぎ足されつづける水

酸欠の頭で考えることは
誰が注いでるとか、
どこまで行くのかとか、
そんなことではなくて ....
ほら、わたしの胸のまん中に光をすいこむような闇があいていて、
そのうちがわに、花が咲いているでしょう。

ときたま目ぇつむってかおりに訊くんだ、
ああ、この花がうつくしく咲いているのはね
わ ....
。。ここに1枚の詩がある
始まりはこうだ
『猫がきれいに死んでいた。死骸を処理するしかるべき所に電話をかけたが呼出音が鳴り続けるだけ』
。。魂とかあるの?、、。いや、猫ではなく。
1枚の詩を書 ....
切り落とした無数の黒髪が
浴室の床に散らばっている

鼓膜の真横から聞こえてくる
二つの刃物が擦れ合う音

例えるならば泡
閉ざされた水槽の底から
少しずつ浮かび上がってくる
泡 泡 ....
 よく晴れた十月の午前
 山の上の一軒家にひとりで住んでゐる松倉さと子さんのところに
 郵便局員がたずねてきた。

「ごめんください、お届けものです」
「あら、何でせう」
「どうぞ ....
くらいくらい 荒野につくりあげた
復讐の塔に閉じこもり
「ひとりだ」と呟いたら
はたかれた

ひたすら 喪いすぎたのだろうね

青い夕暮れに細い声でないてさ

耐えられないわたしを  ....
暑い夏がすぎた
ころ、
スーパーでは
松茸や
梨、
ぶどう、
秋刀魚が売られている

家では
百均かどこかで買った
ステンレスの型抜きを使って
たくさんの紅葉のかたちの人参を作る ....
  お月見


少女は青い服を着て

ひと晩ぢゆう恋文をかかずにゐた

姉さんの形見のコーヒーカツプに

月をうかべて


{引用=(二〇一八年九月二十五日)}

 ....
いつぽんの川がながれてゐる。

川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。

川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ

太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたち ....
うねる雲を見ていたら
わたしは私でなくなっていた
わたしは流出して溶けてしまい
涼風とともに雲をかき混ぜていた
嵐は
吹きすさび
すべてを舞い散らかしているよ

母の死骸は花びらとなって
わたしの風に抱かれている
天高くつたい
成人後にまた再生した
死によってこそ記憶された
おおくの命を
そ ....
奥行きのない部屋に
女があぐらをかいている
部屋にあわせて平たくなった
夢を捲りながら

雲が入ってくる
うすっぺらい空気を十分吸って
わたしたちを追い越して行く
なんということだ ....
わたしを壊してとお願いすると
あなたはもうとっくに壊れている、と耳を噛むのね

ひもじくてひざこぞうのカサブタを
食べた記憶をくちづけたら
眉をしかめて吐き出さないで
わたしそのものを
 ....
いまおもえば
恋人だったようなひとに
レイプされていて
いたくていたくて
ともだちのなまえをさけんだら
もっと興奮させろと
はたかれるのだった

腕は血まみれになって心臓が痛いのだった ....
ゆれながら
ふれると
濡れる

てのひらがあついことは
天使みたいに
すばらしい

朝がきて
夜がきて
また朝がきて
夜がきて

鳥がとんでいく
名前をよばれる
ふり ....
彷徨っている、
京阪三条駅近くの篠田屋の
あの皿盛りが
なぜだか目蓋の裏にある
いや、それなら浪速区日本橋の
そば処まる栄のカツカレー丼だって旨いだろ
いやいや、やっぱり誰もがカレーハウス ....
青灰色に垂れ込める空や 翡翠色のうねる海や 色とりどりの砂の浜を
灰色の塩漬けの流木や 鳥についばまれてからっぽになった蟹や
ボラが跳ねる 「あの魚は身がやわらかくてまずいんだよ」
きん色に太陽 ....
名も付けられぬとりどりの色をしている砂の文字列に埋もれて
やわい肉を縮めこませ
耳を塞ぎ
あなたに握りしめられればその途端
脆くパリンとわれてしまうような
うす青い貝になってしまいたいときが ....
半粘性の液がとくとくと垂れ流れている
青緑の、今は白反射な広野に透き緑な液が注がれている
心地よく伸びる地平線に赤若い太陽は沈もうとしていて
斜度の低い残光が針としてサバンナを走り抜ける
その ....
家に来たとき
まだ子供で
カメラに収まらないほど
暴れん坊で元気だった

ガゼルみたいに飛び跳ねて
片時もじっとしなかったっけ

じいちゃんが倒れた時
家族に知らせようと遠吠えした賢 ....
ずいぶん歩いて歩いて、ひざこぞうはすりきれて足ひきずるようになったよ。
いくど、ここは果ての先だ、と思ったことだろ。

らっぱのみしたワインの瓶、公園のひみつ基地のしたでねむった夜、あったかそう ....
いつくしみを
ぼくに いつくしむこころを

ひとの知の火がなげこまれた
焼け野が原にも
ひとの予期よりうんとはやく
みどりが咲いたことを

 アインシュタインはおどけながら呻いている
 ....
冷蔵庫のシュークリームが
パサパサになっている予感とか
時計を見なくても今が大体何時かというのに気づいている眠り
それは当たる日もあれば外れる日もあるけれど
天気予報ほど重罪じゃないさ

 ....
ごめんねとあなたにささやいて
いつも唾でやさしい嘘をなぞっていた
ほら、耳をふさいでしゃがみこんで
はねつけろよ

いつからわたしの舌は
こんなにも何枚もはえてこっそりと赤い棘で
みなを ....
春の終わりにね
あの空洞は何だろう
がらんとして
そこだけ日があたっている
ひだまりだ
こもれびの下で
豹斑のように揺れている

あの光の向こうはね
きっと極楽浄土だろう
光のかけ ....
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タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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花束とへび- 田中修子自由詩8*18-10-26
怪談- 腰国改修自由詩3*18-10-22
シオマネキ- 1486 106自由詩718-10-18
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波兎の石塔- 田中修子自由詩11*18-10-5
秋刀魚のパエリア- atsuchan69自由詩9*18-10-4
掌編二題- 石村自由詩19*18-9-28
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- 田中修子自由詩5*18-8-15
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空だまり- 田中修子自由詩7*18-6-1
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