溢れる愛
卯月とわ子

空っぽだった器に
なみなみと注がれたのは
無色透明の愛というものだった
私の目には映らず
触れる事も出来ず
ただたぷんと揺れる様を眺めていた

ある日
無色透明な愛が濁り始めた
もう向こう側も透けて見えない
その日
ついに愛は器から零れだした
テーブルを
椅子を
ラグを
汚しながらどんどんと部屋に零れる愛の
終わりが無いと理解したのは
逃げたソファの上
ぷかぷかと浮き上がるソファに
クッションを抱きしめて考えた

空っぽだった器に
無色透明の愛を注いだのは誰だったのだろう
どうして濁り溢れてしまったのだろう

答えは簡単だった
貴方が犯人なのか、と
壁にかかった鏡を見て呟く
わたしは
わたしがわたしをどれ程までに愛していたか
その愛がひっくり返ってあふれ出してしまったのか、と

理解は出来た
でも部屋を汚した愛の片付け方が分からなくて
今もわたしはソファの上でクッションを抱きしめている


自由詩 溢れる愛 Copyright 卯月とわ子 2017-07-27 18:21:51
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