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 四月二十三日、若い女性看護師Aの説明を受けながら、跳ねる川魚のような指先で打つキーボードをぼんやりとみていた。柔らかい声で適切に私の話を聞き、それを一切漏らさずキーで打ち込んでいる。血液検査の注射針 ....  今月ももうすぐ終わる。仕事のほか、事務的なものを多く作成する必要があったが、昨日でほぼ完了し少しホッとしている。家業で書いているブログも書き終え、ふと外を見れば思いがけず朝焼けとホオジロの声があった .... ばらばらの時間を指して止まっているいくつもの時計たち。食器棚は四つもあって、そのすべてにぎっしりと食器がつまっているーたいていが五つ揃えで、花柄で。商店名の入ったカレンダーや手ぬぐい(開封されて .... 風船をもったむすめがわあわあ泣く。
さまざまな色の細長い風船を、ねじったり束ねたりしてつくられていく傘や動物や花束。(空気を包んだゴムたちの)。
娘がつくってもらったのは大きな傘で、柄の部分は ....
「みつば…」と寝言しながら寝がえりをうつむすめの手のひらから、バニラの匂いがする。きょうは日曜日で、クッキーを作って焼いた。くま、うさぎ、星のかたちの抜き型、「ハートの型あったらよつばのクローバー .... こどもが陽に反射してきらきらひかっている。よく見るとセーターに縫い付けられたスパンコールがいちいち光を跳ねかえしているのだった。
切花の世界は春を迎える。ラナンキュラス、チューリップ、スイトピー、ア ....
いつのまにか十月は過ぎて、ぼんやりした十一月、年の瀬をつま先に感じて葱を刻んでいる。
ねーままはさ。はなのどこがそんなに可愛いの?って質問、いちいち真剣に考えて、ほっぺなところだよ。とかどんどん ....
 四日、私たちは不調の機械をだましだまし使いながら、なんとか山林のノルマ面積を整備した。午前中、少し遅くなったが終わらせたのだった。
 軽四のワンボックスのエンジンを掛け、ヒーターを最大にする。防水 ....
 昨日も妻と出かけた。
山仕事を予定していたが、連日の激務で疲労がとれず、雨でもあり、出たくなかった。
相変わらず、近くの無人駅の二階の蕎麦店は繁盛し、市境峠の手書きの看板で客を待つ蕎麦店には客の ....
わたしのむすめのすごいところのひとつは、ドーナツの穴を食べられるんです。
あるときわたしがおやつのドーナツをかじりながら、「いつだってこの穴が消えちゃうのがせつないよね。」と言ったら彼女は「 ....
夏がきましたよ。蝉!(叫ぶむすめ)。
都立高校の窓から吹奏楽の演奏が落ちてくる。七月盆が終わって、売れ残った竜胆と蓮の葉。
水をはじいて光を跳ね返すような色の濃い夏の花たち。一年半とすこし働い ....
こんにちは。わたしはエナガ。スズメ目(もく)の野鳥よ。わけあって野鳥保護センターで暮らしています。センターは都市郊外で、近くには雑木林があるから、よく遊びに出かけるわ。野鳥としての自立を目指しているか ....  冴えない中年サラリーマンが、仕事帰りの屋台で誰に聞かせるともなく呟いている愚痴みたいな雨が、途切れることなく朝から降り続いた夏の夜だった。じめついた空気に我慢がならなくなって、眠るのを諦めて .... 物語たちはことばのうしろですでに出来あがっている。辛抱づよく待っていてくれるのだ。それはつよくてさびしくてやさしい。
みどり色のオアシスのうえに花を作っていく。わたしの指は傷傷して汚れて、それは ....
素麺と豚肉と茄子の煮たのと味噌汁ととまとと胡瓜と梅干しとご飯と納豆とひき肉冬瓜と青菜の浸しをたべたら作り置きの惣菜がもうないから卵を焼いて豆をもどして、もどしてるあいだに卵はたべてしまうしもう一度 .... 世界は暑くなりすぎだね。っていうあなたの涼やかさ。シャツのなかに風を飼ってるみたいで良い。
そうだねってわたしは言うけど汗でべたべたになった手がすべってつかまってられない。わたしは季節をすべりお ....
 パリ、モンマルトルの享楽街の中でも、ひときわ輝く大きな劇場があった。
 名を『ムーランルージュ』という。

 彼らはそこで活躍する芸人だった。
「ねえジャン、あたしたちがコンビを組んでもう ....
むすめに小花柄のワンピースを着せたので、自分は紺色の格子のワンピースを着る。ふくらはぎまで裾のあるざらっとした生地の。雨は降ったりやんだりする。
「びしょびしょになってもいーんだよね」ってむすめ ....
むすめのひざや足の裏はしっかり厚くなった。ひとり掛けのソファにすわってテレビをみているところなど、すっかり人間ふうだ。わたしは鏡をみるのがきらいになって(太ったまましばらく戻らないから)、自分の顔 .... 声をかけるとむすめが転がってくる。はしるみたいにして。
この神社の参道は長い、すべての鳥居をくぐろうとすると四十分はかかる。むすめの足だと九十分はかかるかもしれない(そのまえに疲れて動かなくなってし ....
 眠れない日が何日か続いて、僕の、痛みの塔、が視界の右端に、反対側には眠気。今朝、僕の体がひとりで勝手に歩いていって、切符売り場をちらりと見ることもせず、学校とは反対行きのバスに乗ってしまった。仕方な .... 「しー、静かに」
 僕が部屋に入るとたろやんはまだ小説を書いていた。僕がご飯と言うとたろやんはそう言って、いま佳境なんだと呟いた。昨日も一昨日もたろやんはそう言ってご飯を食べなかった。食べないと死ぬ ....
 数年ぶりに泥のように寝た。幼い頃はよく熱を出した。その度に母にせがんで何度も熱を測った。私は体温計が好きだった。ガラス製で冷やりとしていて、何よりも、中に収まっている銀色の液体はとても美しく危なげで .... 今年いちばんの冷え込みでした、とテレビが言っている、どおりで指さきまでかちかちに冷えるわけだ。凍るような朝焼けのあと、毛布のなかでからだをぎゅっとちぢこめていても伝わってくる娘と夫の体温にはさまれ .... 夏はなんだかすごくさびしかった。これまではそんなことはないのに。さびしくなるのは冬か秋か春と相場が決まっている。
いろんなものが取れかけているわたしは、また色々のことを思い出す。思い出したり、考 ....
魔法がとけはじめているのを感じる。
それはまったくあたらしい、素敵な魔法だったので、とけるのだって道理だ。わたしは自分の足が地面を踏みしめるのを感じたし、それによって景色がぐんぐん変わることをお ....
いまでもわたしはあの9月の川べりに座って、可愛いあのこと好きなものを言い合ってる。いいかんじに色あせたTシャツのプリント、外国のバンドのロゴが書いてある、ぼうぼうに伸びた雑草、東北のさばさばした風。で .... 薔薇がそらを向いて開き、まちの花盛りは終わろうとしている。連休の留守から戻ったら、好きだったなにわいばらの花はひとつもなくなり、花弁さえどこかへ行ってしまった。なつかしいあの清廉な白。
来て半年 ....
坂の多いところに引っこしてきて二月になる。暖かすぎる冬にもようやく雪が降った。じきにみぞれに変わって重たくぬかるむ轍をばちゃばちゃ言わせるのが楽しいらしく、膝の下あたりまで濡らして娘があるいていく ....  二十年来使ってきたざるを買い換えた。そのざるには欠点があり(それは使い始めてすぐにわかったことだが)持ち手になる場所にほんの少し金属が出ているらしく、私はなんどもそれによって手を傷つけてきた。傷とい ....
七さんの散文(批評随筆小説等)おすすめリスト(153)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
気が付いたらボロ雑巾のようにベッドに転がされていた- 山人散文(批評 ...6*20-4-28
かすかな朝焼けとホオジロの声- 山人散文(批評 ...5*20-3-27
メモ(東北)- はるな散文(批評 ...420-3-26
メモ- はるな散文(批評 ...320-3-7
メモ- はるな散文(批評 ...120-1-26
切花の春、時期、花瓶をあらうのこと- はるな散文(批評 ...420-1-14
答えのこと- はるな散文(批評 ...519-12-9
二〇一九年初冬- 山人散文(批評 ...2*19-12-7
夜明け前の雨- 山人散文(批評 ...2*19-10-27
メモ- はるな散文(批評 ...619-10-1
バタをごってり、うす切りトマト- はるな散文(批評 ...619-7-25
エナガのうた- 佐和散文(批評 ...319-2-23
絆創膏と紙コップ- ホロウ・ ...散文(批評 ...1*18-9-12
メモ- はるな散文(批評 ...518-9-1
たべるのこと- はるな散文(批評 ...318-8-2
みてもいいしみなくてもいいのこと- はるな散文(批評 ...418-7-5
ムーランルージュのふたり- そらの珊 ...散文(批評 ...718-6-27
歯車のこと- はるな散文(批評 ...418-5-14
あるいは鉄や果物かもしれないもののこと- はるな散文(批評 ...417-5-19
参道- はるな散文(批評 ...317-2-18
一度食べかけて、また吐く- 由比良 ...散文(批評 ...116-12-18
一度脱いで、またはく- 由比良 ...散文(批評 ...116-12-17
インフルエンザに罹る- ららばい散文(批評 ...216-12-12
_- はるな散文(批評 ...316-12-12
ことしの夏は_のこと- はるな散文(批評 ...616-8-31
めも0705- はるな散文(批評 ...316-7-7
刺繍糸のこと- はるな散文(批評 ...716-5-19
ばらのこと3- はるな散文(批評 ...316-5-8
轍のこと- はるな散文(批評 ...316-1-18
夜更けの紙相撲「記憶にさえ残らないものたちへ」- そらの珊 ...散文(批評 ...9*15-11-28

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