金魚薄弱
A道化




人の指と
繋がり忘れた指に
連なる透明巾着の紐は食い込まず
わたし
一寸金魚の軽さを恨んだ
水の純でわたしを責めた


駆け出すしかなかった、ある夏の夜
透明巾着の、同じひとつの水
を、連れて駆ける赤いわたしと
水に、連れられてそよぐ赤い金魚との
揺らぎようの重なりは
ただ
水の音としてしか響かず


わたしと金魚は
妙なる、妙なる、わたしと金魚の位置にて揺らぎ
いつか、夏の夜にて星になるその前に
既に、妙なる、夏の赤い星座として位置し
揺らぎながら重なり、重なりながら響き
嗚呼、妙なるかな、妙なるかな
けれど


妙なる位置にありながら
人の指と
繋がり忘れた指は満ちず
満ちずに駆け、嗚呼、わたし
金魚の軽さを一寸恨むのだった
水の純でわたしを責めるのだった



2004.8.25.


自由詩 金魚薄弱 Copyright A道化 2004-08-26 06:58:58
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
四文字熟語