キコキコ、と
鳴る音で目が覚めた
薄目を開けて見ると
夫が一生懸命に
わたしのねじを巻き戻している

なにをしているの? 、と
聞くと
どき、とした顔で
こちらを見る

大丈 ....
わたしは海に潜れないだろう
だって、
こんなに小さな雨粒たちにも
頭痛がする

空も飛べないわたしは
地球の肌を
舐めるようにして
生きている

ナメクジに塩をかけた
あの頃は
 ....
自動改札機なんてまだ無い頃
駅員さんに
切符に切り込みを入れてもらう
そのタイミングを計るのに
ドキドキしていた

ちょうどよく駅員さんの前に
立ち止まることができるかどうか
改札に入 ....
恋という字と
悲という字は
少し似ている

恋しいこころは
悲しいこころ

こころの水溜まりには
散った桜の
花びらが浮かぶ
朝起きて湯を沸かす
洗濯機を回し
仏壇と神棚のご飯を変えて
玄関を掃く
するといつも通りに学生が登校し
その向こう側では山が欠伸をする
洗濯物を干し
朝食を食べ
珈琲を飲む
夫を送り ....
おひさまは
毎日うまれて
毎日しんでしまう


しんでしまったおひさまは
地球の裏側を
じつは照らしていることを
わたしたちは
ちゃんと知っている


しんでしまったひとさまも ....
たったひとつの恋文
それは今
長期保存用に加工されて
クローゼットの中で眠っている

わたしは父と
ヴァージンロードを
歩くつもりは
さらさらなかったのに
どうしても歩かせたいと
 ....
大根の葉っぱにくっついていた
かたつむりが



ひこうきぐもは
そらをきる


わたしはてらてら
ちじょうをぬう


さいほうばこを
もってこい


よいしょよいしょと
ぬってやる


ひこうきぐも ....
あいという
あめだまをなめました
なんだかくすぐったくて
とけていくのは
じぶんのほうじゃないかって
ふあんになったので
はきだしました

すこし
こわかった



いぬは
 ....
心臓と
おなじ大きさの
ぬくもりを
いつも
探しています

手のひらに
余るぬくもりは
あったかすぎて
いろんなことに
鈍くなってしまいます

手のひらに
なんにもないと
いつのまにか
握りこぶしにな ....
おじいちゃん
もう半分
呆けちゃってるから
自分に回覧板まわして
そうやって忘れないようにしている

回覧板を書いたのは
おじいちゃん
回覧板を回す人も
おじいちゃん
回覧板を読む ....
玄関は春です
別れと出会いが
毎日
飽きることなく
繰り返されるから
わたしは
いつでも花を飾ります
薄紅色の花が
一番似合うと思います



浴室は梅雨です
温かい雨が降る ....
花のように
命の終わりごろ
涙の代わりに
種を流すことができれば


ヒトにもそれが
できるのならば


こんなに悲しむことは
ないのでしょうか


いっそ子の顔を知らなけ ....
雲が
太陽を隠しています

きっと
あの向こうには
壮大な楽しみがあります

だけど、それを
雲は
わたしに
見せてはくれません

こどもの頃
おとなが見せてくれなかった
テレビドラマを
思い出します ....
お風呂から上がると
生き返ります

そのあと水を飲むと
もっと生き返ります

ひだまりで昼寝をすると
生き返ります

そのとき誰かとぎゅっとすると
もっと生き返ります

美味し ....
おーい、と言った
おーい、と返ってきた


そっちはどんなあんばいですかあ、
と聞いたら
そっちはどんなあんばいだあ、
と聞かれた


それじゃ、意味ないです
お義父さん ....
白髪があったので
抜いてみると
耳の裏辺りから
ぷちっと音がして
なんだか少し
体が冷えたみたいだ
隙間風の
よく聞こえる耳になった



抜いた白髪が
白い糸みたいだったので ....
親が小さくなると
大きかった頃を忘れ
煩わしさに
腹をたててしまう



だけど、
遺影の前で
すんなりと思い出すのは
大きかった親の影



ありがとうより
ごめんなさ ....
夕方の
涼しい時間に
畑に行って
枝豆を採る


ぷちぷちと
ひとりぼっちで
やっていると
夏の空気は
本当は
どの湧き水よりも
澄んでいるんじゃないかって
それを独り占めし ....
結婚してから
一人で食べるご飯が
美味しくないのです


それはただ食べるだけで
一品だけのおかずみたいに
具のないみそ汁みたいに
ジャムもバターもついていない食パンみたいに
パサパ ....
送り火みたいな花火をした
愛犬は鼻を火傷しそうになり
わたしたちは
少し寂しかった


お盆も終わって
仏様はみんな帰ったけど
納骨の済んでいない魂は
未だここに残っている


 ....
山に
煙みたいな雲が
かかっているのを見ると
これは
空のため息
なのではないか
と思うのです


雲は
雨を降らします
それは涙に似ていて
ため息は
涙の素なのだな
と思 ....
ある人の足音が
突然聞こえなくなりました
スリッパの
ぱたぱた、という
少し孤独な



それからというもの
わたしは
主のいなくなった
スリッパを
齧っては吐き出し
齧っ ....
この不景気で
「ありがとう」は
あまり回ってこないから
大事に大事に抱え込んでいた


街中の
誰もがそうやっていたら
いつしか
「ありがとう」は
街から消えてしまった


 ....
「あんなもんなのか」
と舅は言った


夫の祖母が亡くなって
納骨も終わって
夏が始まろうとしていた


できたばかりのわたしたちの庭には
ちょこちょこと
なんやかやが芽生えだし ....
鳥だって
ああやって生きている

人だって
そうやって生きたって良いだろ?


わたしたちは確かに孤独だけど

孤独に生きなきゃならない
わけじゃないだろ?
テレビドラマを見ていたら
あまりにもつまらなくて
消してしまった


今までの人生を見ていたら
あまりにもつまらなくて
自殺してしまった


***


そんな彼女の
ラス ....
ひとは
ただ、泣きたくなる時がある


そらも
ただ、泣きたくなる時がある


ひとしきり泣いたあと
ふと見上げると
虹が出ている時がある


そういう時はたいてい
晴れた ....
扇風機を起こしたら
「もうそんな時期なの?
 早くない?」
と言われた


きっと、これから
毎年、一日ずつ
早まるでしょう


そのうちいつか
一年中
働いてもらわなければ ....
わたしは空に興味がありますが
そこに住む鳥も
そこを通る飛行機も
特に興味がありません


だけど、あなたが
「あ、飛行機だ」
というと
今の時代
さして珍しくもない
飛行機など ....
小原あき(275)
タイトル カテゴリ Point 日付
生きて、死にいくものたち自由詩3*10/4/28 22:24
こうかいに、しを自由詩7*10/4/21 9:50
春の切符自由詩6*10/4/13 15:18
恋と悲と自由詩4*10/3/11 20:09
いちにちのへんか自由詩5*10/1/8 18:38
おひさまひとさま自由詩9*09/12/24 18:19
恋文自由詩5*09/11/24 19:13
かたつむり携帯写真+ ...5*09/11/18 14:29
あめだま自由詩13*09/11/12 14:06
手のひらに携帯写真+ ...7*09/10/15 21:04
おじいちゃんの回覧板自由詩5*09/10/13 19:35
家と季節自由詩12*09/10/8 15:57
涙と種自由詩4*09/10/3 17:29
こどものわたしたち携帯写真+ ...4*09/10/3 16:56
いきかえり自由詩6*09/9/18 22:15
かべ自由詩12*09/9/3 22:26
白髪自由詩6*09/9/1 19:02
大きかった親の影自由詩3*09/8/29 12:26
えだまめ自由詩7*09/8/28 11:16
美味しいご飯自由詩5*09/8/27 12:00
繋がる自由詩9*09/8/21 22:28
違うけど同じ自由詩6*09/8/9 16:12
足音自由詩4*09/8/7 22:30
雨なんて降らないから自由詩7*09/7/1 12:32
お祖母ちゃんの最期自由詩7*09/6/25 19:05
電線に寄り添って携帯写真+ ...10*09/6/24 19:28
ドラマ自由詩5*09/5/22 13:22
携帯写真+ ...6*09/5/15 18:55
せんぷうき自由詩5*09/5/13 15:02
1mm自由詩9*09/5/12 18:22

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