おじいちゃんの回覧板
小原あき

おじいちゃん
もう半分
呆けちゃってるから
自分に回覧板まわして
そうやって忘れないようにしている

回覧板を書いたのは
おじいちゃん
回覧板を回す人も
おじいちゃん
回覧板を読む人も
おじいちゃん

おじいちゃんだけの
回覧板

きっと
わたしより
半世紀以上も長く
生きているうちに
何人かの
おじいちゃんが
できてしまったんだろうな

それで
うまい具合に
まとまっていたものが
何かの拍子で
まとまらなくなってきたんだろうな

なんだか
寂しいのは
なんでなんだろう

やっと
おじいちゃんと
いろんな話が
できるような
そんな人間に
わたしもなってきたと
思っていたのに

まだまだ
おじいちゃんに
追いついていない

わたしはそんなに
何人ものわたしを
持っていない

せいぜい二人ぐらいだから
そんなにばらばらにもならない

ましてや
回覧板なんて
必要ない

口頭で伝えるほうが
全然はやいからね

おじいちゃんと話そうにも
どのおじいちゃんと
話したらいいのか
わかんなくて
なんだか
泣きそうになる

泣いたら、

泣いたらまた
おじいちゃん
あの頃に戻るかな

まだ、自分のことしか
話すことができなかった
幼いわたしと
せいぜい四人くらいの
おじいちゃんを
器用に操っていた
おじいちゃんに








自由詩 おじいちゃんの回覧板 Copyright 小原あき 2009-10-13 19:35:14
notebook Home 戻る  過去 未来