くだらねえ
呟くほどに乾いてく
喉よりもっと深いどこかで
覚えては
忘れまた覚えまた忘れ
記憶のラリーはいつまで続く
また一つ
指間に弾け飛ぶピンチ
行 ....
{ルビ掌=てのひら}に
民踊らせる{ルビ政=まつりごと}
銭も誇りも落とすに任せ
見栄坊の
見栄を重ねて八重桜
散るまで止まぬ枝の肩こり
列を成す
車の息にむせ返り
雲は咳き込み五月雨を吐く
一
胸と背中に挟まれた
狭い胸郭のお立ち台で
夜もたけなわと、踊る心臓
ドックドックと五月蠅くて
寝返りを打つベッドの独り身
いっそのこと、止まってくれれば
永遠の眠りに ....
一
目ざめの雨音が
昨日の悲しみを洗い流す
クズと呼ぶ声、狂った手もと
外した目論見、無残な成果
傘を置いたまま外に出て
頭から水に打たれると
体温と記憶とが
皮膚から剥が ....
一
僕らが互いに
傷つけあうことで
互いの心に
拳を打ちこむことで
五月の空に
広がっていく亀裂
それは、樹のようにも見える
幹の下から仰ぎ見る
真っ白な枝の広がりに ....
春に恋して
夏に遊んで
秋に耽って
冬には眠る
人生、そんな風に
四季を巡りたいもの
とりあえず
春を振り返ると
新しい教科書
風が捲ったページから立ち昇るのは
影を煮 ....
一
熟成した光は
ワインのように
植物を酔わせる
今日も太陽を傾けて
星に陽射しを注ぎ込む
女神の細腕
木々の枝のあちこちで、
新芽が起 ....
3
「゛本当の賢さ゛か」
皮肉っぽい口調で茶々を入れる声が響いた。振り返ると、黒い長髪の男がスポットライトの下で俯いていた。
「経験が言葉に勝るなら、全ての殺人者は、刑務所に入れられる ....
春のだるさ
それは、
周りのテンションの高さ
家族連れ、カップル
一族郎党引き連れてのそぞろ歩きと
それを通りすがりにチラ見して
俯く独り身の我、ポケ手して早歩き
春のだるさ
それ ....
2
そんなことをつらつら考えていると、自分が昔ほど読書という行為に夢中になれないのも、SNSに溢れる言葉を真に受けきれないのも、故なきことではない、と思えてくる。どんな言葉にも、わずかな嘘が紛 ....
1
ある想いを、紙に起こそうとすると、そもそも、何を考えていたのかが分らなくなってしまう。そんなことはないだろうか。
それは、砂浜に盛り上げた砂の城を、テーブルに移そうとするようなもの ....
膨らんだ
腹と裏腹の虚しさが
溢れて伝う
涙一筋
誤魔化せず
開き直るが正解か
職場で漏れる
五十路のおなら
何度でも
プリントし直す
履歴書を
日付あちこち
書き直す度
夢は、どんなに甘くしても
虫歯になる心配のない
お菓子のようなもの
思い切り、
甘やかしてあげて
いつもいつも、
苦い苦い薬ばかり
飲まされている
心の味覚を
神様が
DV ....
思い出は寄り添う
犬のように
抱きしめ、
愛おしむことができる
そんな記憶だけを
私は飼っていたかった
だが因果なもので、心の眼というのは
暗く忌まわしい思い出の方に
向いてし ....
丘の上に立ち
手に握る小さな鐘を
頭上に振り上げて
カランコロンと打ち振ると
雲が空に集い、雨を届けてくれた
掌に受け止めた雨粒の色は
必ずしも透明ではなく
様々な色に染まってい ....
窓越しに見る青空に
いつも
後ろめたさを感じる
青空は
いつだって
早くこっちにこい
と誘っている
そんなに急かすな
そのうち行くから
流れ星のように飛び込んでいく
沢山の人々が、快速電車の鼻先に
僕の知らない人々が
僕の知らない苦しみから逃れるため
都市の動脈に流れる人の移動を堰き止めまでして
すぐに消えていく足跡を、 ....
いつも最後には
柔らかい棺桶に倒れ込み
枯葉に埋もれながら片手を突き出し
リモコンでテレビのチャンネルを変える
ホワイトノイズに交じって聞こえる
宇宙の産声の残響
愛の言葉も他者に ....
傷ついた心は、高値の付く宝石
伝えるすべを持つ者たちが
言葉や音、像に添えて
ショーウィンドーに飾る
傷ついた心は、ため込まれた負債
精算できぬ者たちが
なけなしの硬貨と引き換えに
....
見るものすべてが嫌になり、
瞼を閉ざす闇の中。
沈黙に勝る音楽はなく、
肌を刺す冷気よりも
痺れさせてくれる抱擁はない。
゛お前なんか゛と笑う眼差しの剃刀が、
私という果実を切り刻む ....
人身事故で電車が遅れると、会社帰りにそれで足止め食らったりすると、迷惑だなあと思ってしまう。そういう感想に対し、日本人は冷たくなった、自殺した人が可哀そうだ、という声が上がる。「可哀そう」という言葉 ....
ぼんやりと立っている
つり革に掴まって
結露した窓に
街明かりが滲む
あの灯火の向こうに
届かない温もりがある
ぼんやりと揺れている
つり革に掴まって
この手を滑らせる
誰かの ....
首の後ろ辺りから
広がっていく空白と
瞼の裏を掠め過ぎる
拳の記憶
喜びを道連れにして
悲しみが死んでいく
心が死を擬態するのは、宿主へのいたわり
仕組まれた機構に過ぎないと ....
この峠の一部になれたら
きっと、深く眠れる
死んだことも忘れるくらい
安らかに
四季に逆らわず
空を巡る風
淀みに濁らず
海に還る水
峠の道を私は歩く
積んでは崩すを
....
食べ過ぎて気持ち悪いのに
さらに胃に詰め込む
なんなんだろう
空っぽなのは消化器じゃない
もっと別のどこかにあると
解ってはいるのに
抜けるほど青い空の下で
窮屈に歩く
私を閉 ....
美しく輝く
掌の中のガラス玉
大理石の床に叩きつけたら
この星に息づく命と
同じだけの数の破片となって
飛び散った
思い出で繕った柔らかい屍衣に
心地よくくるまっていたら
裏地から ....
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