膨らんだ
腹と裏腹の虚しさが
溢れて伝う
涙一筋
誤魔化せず
開き直るが正解か
職場で漏れる
五十路のおなら
何度でも
プリントし直す
履歴書を
日付あちこち
書き直す度
夢は、どんなに甘くしても
虫歯になる心配のない
お菓子のようなもの
思い切り、
甘やかしてあげて
いつもいつも、
苦い苦い薬ばかり
飲まされている
心の味覚を
神様が
DV ....
思い出は寄り添う
犬のように
抱きしめ、
愛おしむことができる
そんな記憶だけを
私は飼っていたかった
だが因果なもので、心の眼というのは
暗く忌まわしい思い出の方に
向いてし ....
丘の上に立ち
手に握る小さな鐘を
頭上に振り上げて
カランコロンと打ち振ると
雲が空に集い、雨を届けてくれた
掌に受け止めた雨粒の色は
必ずしも透明ではなく
様々な色に染まってい ....
窓越しに見る青空に
いつも
後ろめたさを感じる
青空は
いつだって
早くこっちにこい
と誘っている
そんなに急かすな
そのうち行くから
流れ星のように飛び込んでいく
沢山の人々が、快速電車の鼻先に
僕の知らない人々が
僕の知らない苦しみから逃れるため
都市の動脈に流れる人の移動を堰き止めまでして
すぐに消えていく足跡を、 ....
いつも最後には
柔らかい棺桶に倒れ込み
枯葉に埋もれながら片手を突き出し
リモコンでテレビのチャンネルを変える
ホワイトノイズに交じって聞こえる
宇宙の産声の残響
愛の言葉も他者に ....
傷ついた心は、高値の付く宝石
伝えるすべを持つ者たちが
言葉や音、像に添えて
ショーウィンドーに飾る
傷ついた心は、ため込まれた負債
精算できぬ者たちが
なけなしの硬貨と引き換えに
....
見るものすべてが嫌になり、
瞼を閉ざす闇の中。
沈黙に勝る音楽はなく、
肌を刺す冷気よりも
痺れさせてくれる抱擁はない。
゛お前なんか゛と笑う眼差しの剃刀が、
私という果実を切り刻む ....
人身事故で電車が遅れると、会社帰りにそれで足止め食らったりすると、迷惑だなあと思ってしまう。そういう感想に対し、日本人は冷たくなった、自殺した人が可哀そうだ、という声が上がる。「可哀そう」という言葉 ....
ぼんやりと立っている
つり革に掴まって
結露した窓に
街明かりが滲む
あの灯火の向こうに
届かない温もりがある
ぼんやりと揺れている
つり革に掴まって
この手を滑らせる
誰かの ....
首の後ろ辺りから
広がっていく空白と
瞼の裏を掠め過ぎる
拳の記憶
喜びを道連れにして
悲しみが死んでいく
心が死を擬態するのは、宿主へのいたわり
仕組まれた機構に過ぎないと ....
この峠の一部になれたら
きっと、深く眠れる
死んだことも忘れるくらい
安らかに
四季に逆らわず
空を巡る風
淀みに濁らず
海に還る水
峠の道を私は歩く
積んでは崩すを
....
食べ過ぎて気持ち悪いのに
さらに胃に詰め込む
なんなんだろう
空っぽなのは消化器じゃない
もっと別のどこかにあると
解ってはいるのに
抜けるほど青い空の下で
窮屈に歩く
私を閉 ....
美しく輝く
掌の中のガラス玉
大理石の床に叩きつけたら
この星に息づく命と
同じだけの数の破片となって
飛び散った
思い出で繕った柔らかい屍衣に
心地よくくるまっていたら
裏地から ....
膿を垂れ流す虫歯が疼き
よく眠れない夜が明け
飯も食わずに布団の中で
丸まったまま
飛び去りかけた夢を
手繰り寄せようと目をつむるが
縄と編まれたお日様の光を
首に掛けられ
新たな ....
結局、生きるしかないのだ
という諦めの言葉が
泡となって水面に浮かび、弾けた。
そう、言葉はいつも弾けて
行方知れずになる
かつては
胸の奥の熱い火が
水のような心を沸かせた
....
言ってはいけない言葉がある
振り子のように揺れている
あなたの胸の内側を
言ってはいけない言葉がある
渇いた喉を塞いでる
吐き出されるのを待ちながら
想いは蜘蛛の糸
あなたは捕ら ....
叫ぶように笑う 君の癖に触れて
押さえつけられた 涙の気配に気づく
いつもはしゃいで 明るい君がふと見せる
深い影の中 手を伸ばしてみたくなる
悲しい記憶を乗り越えてく
空を飛ぶより ....
銅、リチウム、カリウム
これらの金属は
ある種の状態で
炎に炙れば燃え盛るが
緑、紅色、薄紫という風に
それぞれが、違った色合いの
火を吐き出す
情熱が
その上昇気流が
人の ....
1
晩夏の夜、郊外。
棟を連ねる家々の窓明かりが
街路に光を落としている
そこを、通り過ぎる人影が一つ
彼はうつむきながら
こんなことを考えている
…人は互いに繋がりあって ....
「なぜ人は誰かを傷つけるの?」
と、娘が問いかけてきた。それは、私が常日頃胸に抱き続けている疑問でもあった。
「それは、自分が傷つくことを恐れているからだよ」と、私は答えた。
春の ....
僕は歳をとった。
もちろん生きとし生けるものすべては、常に老いているわけだけれど、ある時から、肉体はそれ以上成長することをやめ、ゆっくりと衰え始める。空に放ったボールが高く高くあがりながら、 ....
私を、ここに居させてほしい。
ここが、好きなわけではないけど、
一番手近な場所だから。
何者でもない私を
どうか、踏みつけないでほしい
権利も義務も見えない目で
ただ、空を見上げている ....
赤は一番派手な色
身体の内をめぐる色
目立たぬように歩みを運んでも
一皮むけば飛び散る血潮
命の滾る熱の色
だから、
冷たい振りなどするな
表情を捨てた仮面を被るな
撫でれば悶え、 ....
いつか
そのうえで踊るため
香ばしく腐りゆく土を
踏み固める
汚れていく裸足が
大人になっていくようで
誇らしい
肌に刺さるほど近い景色を
押しのけると、それは霞みがかり、
....
覚束ない手で握った
透明な定規を
まっさらな星の肌にあてて
まだオムツを付けた子供たちは
ぶつぶつ言いながら
線を引く
柔らかく上下する面を
よちよち歩きを覚えた足が
飛ぶ暇も ....
時は贈り物だ
どんなに惨めで
苦しい時であっても
なにやら知った風な顔をして
そう言い切るのは、
愚かなのかもしれないが
小さな無人島に立って
ヤシによく似た一本の木から
毎夕 ....
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