消息

闇が待ちわびるのは

ひとすじの
てらされたところから
闇は食べられてしまうけれど
光の中で
いきながらえる
そんな闇があるらしい


 孤食

さみしさと
 ....
糖蜜工場が爆発したことによって
甘い蜜たちが
静かに街を流れ出しました
その粘度たるや
もう人の手にはおえない類のものです
アスファルトの上の蜜はそのまま冷えて固いかさぶたとなり
土の上の ....
かつて風船には二種類あった

空気より軽いガス製と
人間の息製と

人間由来の僕らは
空を飛べないはずだった

小さな手ではじかれて
ほんの少し空を飛んだ気分になって
じべたに落ち ....

おはようを云いたくない時にも
おはよう、と云う

ほんの少しほほえんでいたかもしれない
本意ではないし
嬉しいからではなく
茶柱が立っていたわけでもなく
それは
毎日の習慣だった ....
昔昔のことです

「ソックタッチ」という商品名の速乾性液状糊のスティックがあった
糊といっても紙を貼りつけるものではない
靴下と足を貼りつけるものなのだ
ずり下がるという引力の法則に抗うこと ....
あの頃
きみはまだ産まれていなかった
着床しない
小さな種だった

人はなぜ産まれてくるんだろう
人はなぜ産むんだろう
いつか手ばなす命であるのに

わたしが
影も形もない頃
少 ....
青い空に
浮かぶ雲は
他にやることもないから
特別にゆっくりしている
なんの充実感もない
無益な時間を消費してるだけだ

一瞬は永遠につながっている魔法

雲よ

あなたは
い ....
糸をつむぐ
それはかつて
繭だったものたち
それを産んだものは蚕という虫
それを育んだものは桑の葉
それを繁らせたものは桑の木

ふるさとを発つ時
小さなかばんに
宮沢賢治の詩集と
 ....
透明な水槽の底
沈んで横たわる
短くなった鉛筆たち

もう手に持てないほど
小さくなってしまったから
持ち主たちが
ここに放したのだ

その体を貫く芯が
ほんのわずかになったのは
 ....
赤いチュチュをはいた
白い花たちが
寄り添って踊る

小さなバレリーナ

踊ることは
生きていることだと
無邪気に笑う

顔を寄せたわたしの目の前で
おさなごのやわらかな手に触れ ....
唐辛子を陽に干している

ワックスかけたてみたいに
艶やかだった彼女らは
日ごとしぼみ
くすんで
ぼやき
手をとりあって
しわしわになる
光の中で
そのしわは
小さな影を織りなし ....
息をしている
すべてのものたちが
息という名の
うたをうたう
うたという名の
命を

深く
息を吸いこみ
ふくらんだ分だけの
息を吐く
そのあと
わたしのうたは
誰かの肺の中 ....
さよならを告げた記憶はないけれど自転車はもう錆びついていた

お返事を書くか書かぬか迷ってるヤギはいくぶんヒツジに似てる

降り注ぐ光のすべてうけとめるここはあまりに硝子張りです

みなぞ ....
冬めいて部屋に取り込む鉢ひとつ

冬めくも猫を{ルビ抱=いだ}いてミルクティー

くちびるが一番先に冬めいて

冬めいてなんの未練もない鳥よ

パソコンを切って冬めく夜を知る

手 ....
手にしていたのは
小さなひしゃく

星が消えた途方もない夜は
蛍を連れて

そしてたどりつく水源の
ほとりは

どこへつながっているのか
どこへもつながっていないのか

汲み上 ....
屋根一杯に
鳩がいる
何かの見間違いかと
車窓から目を凝らす

もしや瓦の形の鳩じゃないか、と

でもやっぱりそれは鳩だった
生きている鳩そのものだった

ねえ、あれ鳩ですよね
 ....
この世でいちばん明るいのは
夜の屋根の
いなびかり

そのあとを
追いかけてくる音は
おそろしいけど、と

小さな人がいう

ならば耳をふさいでごらん
あてがえば
柔らかな手の ....
人形も関節から
壊れてゆく、ら
しい。継ぎ目は
いつだって弱い
場所だからね。
かつてあなたが
若かった頃、肘
も、膝も、首も
指の中に取り付
けられた小さな
関節たちも、み
な ....
糸杉の並んだ道
夏のただ中だった
一歩歩くごとに
汗は蒸発していき
肌に残されたものは
べとつくだけの塩辛さだった

暑さのあまり
蝉の声さえ途絶えた
世界には
わたしとあなたしか ....
万年筆の血液が乾いてしまったようだ
無理もない
数年うっかりと放っておいたのだから
いちにち、はとても長いくせに
すうねん、は
あっという間に感じるのはなぜだろう
風、が通り過ぎていく
 ....
気休めな水に放てば金魚らはひと夏きりの命を泳ぐ

六月に不似合いなほど晴れていて昨日の雨がわたしを映す

透明な花瓶の中で紫陽花の茎の模様が屈折してる

雨か汗滴り落ちて黒く染み黒いTシャ ....
ふるさとの桜をおもう遠くから

新しい頬紅を買うさくら色

花に似た花かまきりの花くらべ

金太郎飴はどこでも花模様

花冷えにきみのマフラー借りて行く

花という名をつけてみる野 ....
 夢、夜がみせる方の夢と、現実
 はとてもよく似ているから、ど
 うにかしてそのちがいを暴こう
 とテスト勉強もしないで考えて
 いた。
 しょうもないことさ。だけど人
 間って生き物はし ....
雪踏めば一足ごとにきゅっと啼く

涙ではないんだ雪は汗っかき

夜が産む白い卵は雪でした

降り止まぬ雪などないと人はいう

雪だるま足がはえたらどこへ行く

ユーミンが雪のゲレン ....
猫の恋さてはおまえも朝帰り

猫の恋冷めてしまえば他人です

段ボールけちらしてゆく猫の恋

そもそもが浮気なんだニャ猫の恋

決戦は金曜日だニャ猫の恋

猫の恋みたいにいかぬ人の ....
うさぎは
ときおりたちどまり
ふりかえる
そこに菜の花がうすくゆれていた
まるで
なにかのじゅそみたいで
なにかのしゅくふくみたいで

ながい耳は
遠い音をつかまえるため
生きるこ ....

街はすみずみまで霧に覆われていた
平等に満ちている粒は
白いサプリメント

普段は透明が満ちていて
遠くまで見渡せた
海に点在する小さな島や
船が描いてゆく波のような道までも

 ....
小さな火種はやがて
大きく育っておもいのほか
はげしく燃えるものだから
たじろぎ
あとずさりしたボクを
キミはすこし笑った

よく燃えるね
木と紙でできた家だからね
それに……
怒 ....
蛇口が
みずうみにつながっているように
蜜柑は
五月の空へつながっている
かぐわしい白い花
まぶしい光に
雨だれに
ゆっくりと過ぎてゆく雲に

蜜柑をむくと
その皮は
しっとりと ....
北風と太陽のけんかに巻き込まれてしまった男のはなし

自分さがしの旅に出て大人になって白鳥だったと気づくおはなし

恋という病に罹ったばっかりに海の泡になるしかなかった

有り金を竜宮城で ....
そらの珊瑚(1019)
タイトル カテゴリ Point 日付
(食べる)トライアングル自由詩7*17/2/4 10:48
糖蜜の街自由詩21*17/2/1 8:38
風船革命自由詩19*17/1/23 10:37
つくろい自由詩10*17/1/20 8:18
わたしたちの靴下はいつだってずり下がってはいけなかった自由詩19*17/1/19 11:31
風花のことづて自由詩20*17/1/18 8:02
猫雲自由詩14*17/1/9 8:57
糸をつむぐ女自由詩21*17/1/4 10:17
幸せな光景自由詩18*16/12/14 12:03
秒針のない時間自由詩14*16/11/21 7:53
今夜はペペロンチーノ自由詩10*16/11/19 11:43
星とうたう自由詩25*16/11/16 8:22
さよなら、自転車短歌11*16/11/14 20:48
冬めく俳句14*16/11/5 10:22
ほとり自由詩9+*16/9/19 9:02
鳩の家自由詩1016/9/15 20:55
夜話自由詩11*16/9/8 11:20
わたしのアンティークドール自由詩15*16/9/5 11:56
夏のスケッチ自由詩15*16/9/1 13:58
ふたたびの夏自由詩13+*16/7/21 15:11
青いプールの昨日のさざ波短歌11*16/6/24 14:15
俳句5*16/3/14 11:41
グミの靴自由詩1216/3/14 10:40
俳句0*16/3/12 13:16
猫の恋俳句1+16/3/11 14:53
野うさぎとして生きていく自由詩816/3/11 8:47
白いサプリメント自由詩1216/3/9 9:05
春の焼失自由詩1216/3/4 12:29
蜜柑をむく女自由詩20*16/3/2 12:38
童話で短歌短歌4*16/3/2 9:08

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