初めて訪れた街で
かわいい二両編成の電車に出会う
道路のいたるところに
その線路が巡らされているようで
はっと気づくと踏切の直前
一時停止しそこねる
運転する身としては
なかなかあなどれ ....
小さく咲いたバラは
小さく散っていく
はなびらは
真新しいももいろの紙石鹸みたいに
つややかなのに
一度も泡になることもかなわず
埋葬されないいのちだったもの
うつし世に迷い込んだ
黒 ....
さらさらと雨はふる
そんな日はるすばんだった
家の人がいなくなると
いくつかのへやがあらわれて
ぼくをまっていた
ぼくがひとりになるのをまっていた
孤独のかんむりをかぶり
手の中にはたっ ....
からりと晴れた
あさ、きのうまでのあめかぜがうそのように
ジンジャーホットティーはからくてあまい
のどをとおりすぎるとき
ギフトのように細胞にしみた
暑さをまいとし更新するような夏
この夏 ....
待ち合わせのカフェで読みかけの文庫本を読む。
雨の日の本の紙は水分を含んでかすかにしっとりしていた。
まるで息をしているかのように。

そうこうしているうち、まつげちゃんが現れた。
久しぶり ....
暑い季節にはみな熱い手を持っているのに
それでもふと触れた手がひんやりとしていて
溶ける魔法を解かれた
永遠に溶けないやさしいこおり、みたいだった
つくつくぼうしが鳴き始めると
耳をそばだて ....
父が亡くなったと知らせをもらって
実家に帰ると
和室に父は寝かされていた
三年ほど入院していた病院は
実家の斜め裏にあり
歩いて約三分の近さだったけれど
父は生きて一度も家に帰ることはなか ....
すこしもやいでいる朝
木々から蝉たちのこえがふってくる
絵にかいたらこんなふうかな
まる
ひとさしゆびでそらにたくさんのまるをえがけば
きみもちいさなそのゆびで
せいいっぱいのまるをえがく ....
こうしてまたいちにちを閉じる儀式のようにして
あなたは舌の掃除にとりかかる
洗面所の蛍光灯のしろいひかり
鏡のなかの素のじぶん
おもいきり長く舌を伸ばそうとするけれど
悪魔の舌ほどは長くない ....
小学生のころ、夏休みになると海へよく行った

高学年になると波に挑む遊びをよくしたものだった
大きな波がきたとき、そびえ立つようなその壁のふところに飛び込んで
波を潜り抜けるという単純な遊び
 ....
朝、のどの違和感で目覚める
よるじゅう、26度に設定した冷房のせいだろうか
そうだとしてもそれを選んだ自分の失敗だ
イソジンでうがいする
その赤褐色の液体の色はどこか禍々しくて
さらに薬品特 ....
空に舞う麦わら帽子目で追った時のはざまで行方は知れず

海からの帰り道はいつだってしぼんでるのにからだは重い

アスファルトに立つ陽炎は死んだら負けといってるみたい

蝉たちがぴたりなきや ....
空にさしだした手のひら
つきさしていく日のひかりで細胞が痛い
夏のひとはみな発熱し
アイスクリームはみるみる溶ける
蟻がやってくるまえに
きのうのできごとは蒸発してしまう
会いたいひとがい ....
白い貝殻たちは
海にさらされた
うつくしい骨
空につるされた
ほねとほねは
風にゆられてぶつかり合い
連れ立って
清んだ音を生んでいる

望めば
とぎれることがないように思える
 ....
寄せては返し合う
はてがないことのふしぎ
ここから命がうまれたというふしぎ
だとしたら
この水はなにからうまれてきたのだろう
半島の先でぼんやり待っている三ッ石
今はまだ歩いてはいけないけ ....
 good day

明るい雨がさらってゆく
うしろむきの心
光をこぼしあう緑の葉はさざめき
笑う
傘なんかいらないじゃん、と


 梅雨明けはまだ先

飛行機がゆく音は
雷鳴 ....
図書館へ続く石の階段
日陰には
きのうの命がただよっている
雨ののち
ひごとに深くする手鞠花の青
カタツムリは絶滅したんだろうか
遠い子守唄
世界に向けて閉じられた手提げの中はやすらかに ....
この世にやってきて
三ヶ月ほど経った赤ちゃん
乳しか飲んでいないのに
ぷくぷくと太った哺乳類
腕に輪ゴムをはめたようなくびれが出来ている
そこに分け入ると
赤ちゃんはわたぼこりを隠していた ....
食べたもので人の身体は出来ています。
そんなことはいちいち考えずに
その日の風まかせで
献立を決めてきた

心は何で出来ているんだろう

手元が狂うのは永遠の一瞬
包丁の刃で切り落とし ....
夜の耳工場で働く小人は
めっきり上がらない時給に
ぼやきながらも
今夜も対の耳を作っています

夜は短いようで長く
或いはまた短く
それは人生もおんなじだね
耳を買いに来る人は
そん ....
ぎゅっとにぎった手のひらに伝わる金属の鎖の冷たさ
そっけない硬い木の座面
離してはだめだよ と降ってくる、声
靴底で蹴るとざらっとして土埃
膝で漕ぐたびに
行ったり来たり
ふりこはゆっくり ....
もうすぐ花火がはじまるぞ、と
キミが誘うから
ボクは藻の家から出た
どんよりした空を見上げる
まもなく雨粒が落ちてきて
はじけて円を描いて消えた
ひとつ、ふたつ、みっつ、
数えられたのは ....
ゆるゆるとながれている
今もながれつづけている時間を
ふいにとめた とある春の庭がふたつ
となりあっている
ひとつは住人によってよく手入れされていて
赤いチューリップが笑い
黄色のパンジー ....
テーブルの上で
蜜柑が燃えている
そのふところにたたえた水を少しずつ手放しながら
冷たく燃えている
つやつやとした
ともしび

坊やが食べこぼした
アルファベットびすけっとのかけらたち ....
手をふるときは
まっすぐになってさよならに添えられ
指切りをするときは
その関節はやわらかく曲がる
一番ちいさな指

小指が
だれかの小指と出会うとき
非力な小指ゆえに抱き合うことがで ....
ライトブルーの空
すこうし白をのせた色
あの色を知っている
埠頭に咲いた可憐な花もまた
無邪気にすみわたって
人の秘密をあらわにさせる
そんな色をしていた
或いは
指を彩る鉱石もまた同 ....
手のひらに載せたガラス瓶の中は不可思議な水で満たされていて
米粒ほどの数匹のさかなが泳ぐ
ここで生まれてここで死んでいく
生殖も食事も排泄も
すべてのことがその水を介して完璧にめぐっていくのだ ....
「きのうのよる、ミイちゃんがかえってきたみたい。ほら、からっぽになってる」
わたしは妹に話しかけた、からっぽのミイちゃん用の銀色のお皿を持って。
「ほんとだ、ミイちゃん、かえってきてごはんたべたん ....
長い通院生活も今日で終わる
とある春だった
通い慣れた道、河川工事はまだまだ続くらしい
詳しくは知らないけれど新しい駅が出来るという
パン屋、スーパー、マンションや公園、行き交う人々
駅を支 ....
一日一度静かに燃える家があり
今まさに燃えさかっている
そしてその近くの電線に
数羽の小鳥が舞い降りた
いつぞやのにぎやかさはどこへやら
今日の電線の音符は歯が抜けた様相
それでも音符たち ....
そらの珊瑚(969)
タイトル カテゴリ Point 日付
文書グループ
まにまにダイアリー文書グループ24/8/28
夜更けの紙相撲文書グループ16/1/15
夢見る頃を過ぎても(短歌)文書グループ15/3/11
「詩人サークル 群青」課題作品文書グループ15/2/26
散文詩文書グループ13/6/11
落花流水(短歌)文書グループ13/1/12
ピープル オブ ファンタジア文書グループ12/10/1
投稿作品
ことことことでん自由詩6*24/9/18 10:11
お彼岸自由詩12*24/9/17 11:17
へや自由詩7*24/9/9 10:25
台風のあと自由詩5*24/9/5 13:10
まにまにダイアリー④まつげちゃんとデジャブ[group]自由詩4*24/8/28 16:15
夏のはな自由詩11*24/8/21 13:02
母のよこぐるま自由詩11*24/8/13 10:31
なつのたまてばこ自由詩14*24/8/10 8:51
おやすみなさい自由詩9*24/8/7 12:41
スイマーズ自由詩11+*24/8/1 11:00
このかどをまがったら自由詩14*24/7/30 10:06
サマーノート短歌7*24/7/23 12:32
かげろう自由詩12*24/7/21 8:57
浜辺便り自由詩12*24/7/14 9:40
なぎさ自由詩12*24/7/2 10:16
氷菓自由詩14*24/6/30 10:38
素足にサンダルをはいて自由詩17*24/6/25 14:26
わたしがみつけたわたぼこり自由詩11*24/6/20 11:30
虹は出そうにないけど自由詩16*24/6/6 10:03
耳工場自由詩11*24/6/1 14:18
小さな冒険者自由詩15*24/5/26 14:43
メイストーム自由詩12*24/5/15 11:06
にわくらべ自由詩15*24/4/29 11:57
夜のテーブル自由詩9*24/4/13 8:35
指切り自由詩12*24/3/29 13:08
春はうたう自由詩10*24/3/27 13:36
小さなさかなの物語自由詩14*24/3/24 11:07
ミイちゃん自由詩9*24/3/20 11:09
紅白もくれん自由詩12*24/3/19 12:24
閑古鳥の楽譜自由詩10*24/3/18 8:58

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