汗をたくさんかく夏は、おもい出も汗と流れてしまうのかしら、あまりおもい出はない。
数年まえの夏は、ずーっと絵を描いていた。白い白いカンバス、いくつもの濃さと硬さの鉛筆、やわらかい消しごむ、ビニー ....
追求から執着へ
ほそい糸におぼれる
そもそものはじまり
は、
なんだったか
わたしは
世界に参加したかったのだ
ひとりで立っていると
おもいこんだまま
みず玉の瓶のむこうの夕立と 風をとおした君の目元と
君は右僕は左を濡らしつつ ちいさな傘をでようとはせず
ためいきを午睡の風に結び付け生温いまま季節交わる
水溜りにかがんだ君のう ....
いってしまう、みな、どこからかやってきて、そしていってしまう、わたしにとめることはできない、わたしは手立てをもたない、そして、いつのまにか、とつぜん、あるいは、徐々に時間をかけて、みなどこかへ行ってし ....
空にあいた無数の穴をながめていると
はちの巣をかむった少年がやってきて
このせかいの嘘を教えてくれる
わたしは鏡のまえに立ち
うつったものを分割する
ハチ ハチ ニ 4 ? 六 キ ....
窓のこちらがわには 窓枠と わたしがあり
窓のむこうがわには 「遠く」が散らばる
「遠く」は みわたす限りに遠く
わたしには ただ罪があり
灰色の部屋には ドアーがない
わたしは ....
遠くへの親和性、という言葉がある。それをわたしは、なにかの本のなかに発見した。
親和性。そのとき、むしろそのことばにわたしは親しみをかんじた。
絶望への親和性、遠くへの親和性、閉塞への、死のような ....
境界を分かつ分厚い朝の4時
そもそも窓際のこと(高校生活のこと)を思い出したのは、久々に彼女に会ったからだ。わたしたちはいまや、昼間からくらいバールでお酒を愉しむくらいに大人になってしまった。気恥ずかしさもなく酒をのみ、たば ....
彼女とは窓際でしりあった。
気づいたときには(とわたしには思える)、なんとなく連帯感のようなものを持っていた。友人と呼ぶには頼りなく、知り合いと呼ぶには強すぎる。連帯感。
彼女は同級生の多 ....
ゆうだちに窓にはりつく蛾を迎え
てっぺんをあかるく染める夏至の月
梅の実と氷砂糖がからと鳴る
紫蘇の葉に赤く染まるる指の香よ
梅雨寒の肌と肌とで温みあい
蛇の子の細くすず ....
いくつかのいろをならべてかきまわし 何も塗らずに雨をながめる
ためらいを 固めたような白い空 てるてる坊主を逆さに吊す
はげしさもやさしさもせつなさもなく とまどう甘さばかりが目につく ....
あなたがいま
涙して崇拝する「真実」が
あるひとにとっては
毎朝やってくる避けがたい「現実」で
またあるひとにとっては
真実であり現実であるところの「絶望」であるが
その絶望に「実」は ....
六年半続いた喫煙の習慣を、いったん中止して、二週間め。やはりというか、さっそく体重は1000グラムふえた。
喫煙は、最初から違和感がなかった。むせて苦しいこともなかったし、匂いに顔しかめるこ ....
やわらかな寝息の燈る喉元に 肌近づけて我が息舫う
臍の緒のかすかな匂いと乾く色 掌のうえで吹き飛びそうな
汗ばんだ額に張り付く細い毛は 彼が残した最期の祝福
ああ
くらやみにともる
しろい手よ
たいまつの
ひかりのようだ
切なさをあつめてひらく夏椿
青梅の香りにも似て初恋は
後悔と勿忘草の淡い色
酢漿草の種が弾けて夕暮れる
赤色を零してなお紅ばらの花
寂しさの数だけ蒼く紫陽花が
....
曇天を 背にしてみている つめたい戸
後ろ手に 鍵盤鳴らす 午後の2時
なめらかな 白い手にさす 慾と情
氷水 とけきるまえに 果てる夢
汗ばんで 覚えた匂い 青畳
....
かれは探しにいくといった
ドアーには i can(\'t) back とはってある
わたしはjust 理解する
トースターで下着をこんがり焼いて
たぶんかれは見つけられない
想像する、 ....
雨の日はお弔いをする
恋のような後悔のような
小さなもののお弔いをする
かぜのつよい日に
まどを開け放して
ねそべっている
ちいさな
こどもたちは
光の輪を抱いて
右から左から
上へ下へと
舞い上がっている
雨は
そのうち降るだろう
月が ....
空が高い日は、鼓動がおちついている気がする。雨のふる日は、だからきもちが落ち着かないのかというと、それはそうでもなく、落ち着かないというよりは、鼓動をきれいに落としてしまっているから、からだは空き ....
あたらしいかばんの中に
あたらしい男の子
あたらしい男の子の手で
あたらしいわたしになる
わたしの泉はあふれ出る
窓の向こうには雨が降る
あたらしい一日の手前で
あたらし ....
水面でしか
星を知らず
星に抱かれるように
しんでいった
空を知らぬまま
星を見るのは
幸か不幸か
ただ何も
うつらない
空と水を知るよりかは
くうかんに
ねじをさしこんで
時間を保っている
ひとびとが
無意識にしている
プラスチック製造工場みたいな
くうかん
これは
いくつもつぎをあてられて
ねじをうちこ ....
からだのそとがわに
うすいまくがはっている
からだのそとがわに張ったうすいまくを含めて
わたしをわたしだとおもっているのでしょうが
わたしは
あなたがたがおもっているよりも
ほんの ....
明け方の眠りにちかい藍色に 背中をむけて何度もふれあう
愛情は肉のかたまりのようです
二十をこえても十の少女のようだった脚を
愛情はたやすく女のそれに変えてしまった
胸にも腰にも腕にも愛情は柔らかく実って
腕のすき間から零れるような身体ではない
....
柿ノ木がすきだと言って 柿ノ木に なってしまったあの娘を想う
恋人の誕生日のまえの晩に、お洒落をしてごはんをたべに行った。
食前酒のあまい香りと、白くなめらかなテーブルクロス、糊のきいた従業員の制服、はきなれないヒールの踵をこっそり外すわたし。
鮭に生ク ....
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