リスカする少女は
美しい海鼠を生むだろうか

海は流産ばかりしていて
今夜も凪いでいる
荒れる波の記憶はもはや遠い彼方
リスカする少女の腕は今夜も乾く

悲しい歌を名づけるもの悲しい行 ....
伊栖郡の話なら法月君に聞いた。◆ナニ伊栖郡は太平洋沿岸に位置する極当たり前の田舎であつて、とりたてて特徴が有る訳でない。只伊栖之湖という稍々大きめの塩水湖が一つあり、湖の周りには柞が沢山茂つてゐる。柞 .... ゆら、と、
闇の中で黒が動く気配、
みどりの光点がふたつ、
ケヤキの根元にうずくまる。

杖はニワトコの枝、
髪に飾るのはキツネノテブクロ、
はだかの胸に塗りたくる胎児の脂肪、
そんな ....
ホデリはぼんやりと海を眺める。
眺めたであろう。
初夏の風に荒れる海を。

この嵐の季節、
田には水が必要だというのに、
ホデリの水路は乾き ....
クソの上に座っちまったんだよ、
それで頭に来て、岩に隠れちまったんだよ。
豊葦原の{ルビ千五百秋=ち い ほ あき}の瑞穂の{ルビ地=くに}の、
お天道様は岩戸に隠れちまったんだとよ。

た ....
駱駝は人手に渡してしまった。
少しの水と、一日分の糧と引き替えに。
だから二人の娘は手をつないで歩いた、
月下の沙漠は、
はろばろと二人の前に広がっていた。

邪恋の娘ども、と囃し立てられ ....
あの光を見るためには
少なく見積もって三昼夜を
眠らずに過ごさねばならない

昼に見れば
赤い眼は赤く
白い冠羽は白く
くっきりと残像を残すのだが
それは光ではなく
単に赤い眼であり ....
飛ぶ鳥はとても軽いのだということを
わたしはときどき忘れる
飛ぶために鳥が捨て去ったものの重さを
わたしはときどき忘れる

鳥の骨は細く軽く
すきまだらけで脆いということを
150kg超 ....
サンバのリズムで彼女は案内する、
タタタ、タンタ、タタタ、タンタ
広がるフレアスカートは真っ赤、
熱気のみなぎる裏通りは、
これでも充分には裏でないらしい。
粘っこいグリースの臭い、
不意 ....
1.日没

私はラセンウジバエ(雌)である。
私には名前がない。
ラセンウジバエ(雌)の群の中から
私を識別し同定することは誰にもできない。

二枚の羽があやうくふるえる。
ホルモンは ....
闇に紛れてゆらり現れ。
夜だけ這い出る砂浜に見えぬ風紋。
太い蛇身にアンバランスな白い細首、
音も立てずに進む。

誰が姿を見たというか。
その身を見れば命はないというに。
赤いであろう ....
きのう
生きている友に手紙を書いた
行かなかったけれど
忘れたわけではないと

きょうは異常乾燥注意報が出ていて
どこかの土手が延焼したと
広報が単調に喋っている

どうせ誰かが消す ....
繕っても繕ってもほつれてゆく
こたつぶとんのはじっこの糸のような
きみのことばに耳を傾けている
そとはつめたい雨
ポストに届いたばかりのハガキには
あと三十分で春がきます と
楽観的な文字 ....
{画像=080307003733.jpg}

翼もないのに太陽に近づいたので
どこにも行けなくなってしまう
尾根伝いにやってきた
自分の足跡をふりかえる と
笑い出しそうな風が耳元でさわぐ ....
わからないものに質問しても
たぶん答は得られないので

秋の初めの風のように
いくぶん鋭い金属質の響きで

愚かしくみえる沸騰には
整った和音で対応すること

冷笑じみた混乱には
 ....
禁忌は真っ白にほどけてゆく
きらきらと
あたりいちめんにひかる黄砂
爛れてゆく頬に
焦げ縮れてゆく髪に
明るくかがやくプルトニウムをかざろう

これで終わりなのだから
やり直すこともな ....
{引用=お月さんいくつ じゅうさんななつ}

月齢は十一、
若潮の波、明け方の空に低い低い月。
月齢は十一、
大きく切り分けた夕張メロン。

{引用=あの子を産んで この子を産んで
だ ....
夜に投げたる我が声は
君に届くと思はれず
夜に唄ひし我が声は
夜に砕けて散るがよし

朱夏の恋路の急坂を
上り下りも覚え得ず
ただひたぶるに足掻きをり
ただ愚かにも足掻きをり

君 ....
春は名のみのきさらぎの
未だ温まぬせせらぎの
橋のたもとの裸木の
わづかに赤き冬芽かな

春は春とてきさらぎの
未だ冷たき春の風
襟立て歩く川筋に
ちらほら青く下萌ゆる

我の窓辺 ....
軽やかにリズムをきざみ
一定の速度で
急ぐこともなく停滞することもなく
あなたにむかう
天体の音楽は
微妙なバランスの調和を保ち
わたしたちのうえにある
そこまでうつくしくはないにしろ
 ....
ここがどこかわからない
灯りは煌々と道路を照らしている
壁のように積まれたプラスチックパレット
無人のフォークリフト
コンテナ
なぜここに来たかわからない
すこし伸びをすると
手が届きそ ....
結局のところあなたについて書くほかはないのだ。
選択肢は常に目の前にぶらさがる。
埃だらけ蜘蛛の巣だらけのシャンデリアみたいに、
ぶらりぶらりと。
肝臓の色をした月に腎臓型の雲がつかみかかる。 ....
何もない空からゼロがふってくる
ならばいくらかマシだったかもしれないけれど
真っ黒な空からはマイナスがふってくる
はっきりとしたベクトル
明確な方向性を持つマイナスが
あたまのうえからふって ....
あのひとの汗は鮎の匂いがした
もしかしたらキュウリウオの匂いだったかもしれないけど
げんみつなことは問わない
鮎はスイカの匂いがして
スイカは汗の匂いがして
汗は鮎の匂いがするのだ
結露に ....
{引用=(私の砂男に)}

描いたようなみどりの草原、青い空、
白い雲がにじむのはカメラの曇りのせい、
すべて出来合のうるわしい風景、
できる限り倍率をあげてみよう、
くるくるまわる水素原 ....
彼女は彷徨する
宇宙のもっとも昏い場所で
輝度分布と力学的質量分布の不一致を求めて
五次元を通り抜けるために
 

彼は停止する
宇宙のもっとも冥い場所で
客観的には停止した時間のなか ....
たとえば外が見渡す限りの草原で
はるか遠い地平線のうえ
まろやかな月が重たげに光っているなら
外は月夜で
という古い唄をうたってもいいとおもう

あるいは外が見渡す限りの大海原で
薄暗い ....
正月を過ぎたら
なにがなんでも
(たとえ気温が零度以下であろうとも)
春がきたと決めている。
占星術師は
(ひどく寒いのにもおかまいなしで)
窓を開けて夜空を仰ぐ。
深夜の冬空はすでに春 ....
十九の生首がの、あったと申すよ。
小さな川のほとりにぢゃ。
昔お前がよく焼き芋を買った店の向かいぢゃ。
あのころお前はしじゅう鼻の具合を悪くしての、
あの店の裏手の病院に通った。
雑貨を並べ ....
羊たちが目覚めて草原をさまよう、朝の陽は山々にさして、青みがかったきみの虹彩に映るのは昨日落としたまま忘れてしまったきみの幼年時代だ、きみは蜂のように騒ぎながら羊たちと踊る、朝の食事の合図が聞こえてく ....
佐々宝砂(921)
タイトル カテゴリ Point 日付
海鼠の味自由詩7*08/6/19 2:28
伊栖之湖周辺の伝説に就いて散文(批評 ...4*08/6/15 0:07
あと何本自由詩308/6/14 19:43
おぼ針、すす針、貧針、うる針[group]自由詩508/6/13 22:56
やおよろず[group]自由詩3*08/4/29 23:36
影さやかな月のもと[group]自由詩16*08/4/18 20:54
あの鳥は夜を飛ぶ[group]自由詩7*08/3/25 3:18
軽さへのあこがれ[group]自由詩44+*08/3/18 5:19
ネジ台通り自由詩308/3/15 0:34
ラセンウジバエ(雌)の独白自由詩1*08/3/13 20:19
濡女自由詩408/3/12 4:15
春の闇自由詩608/3/7 0:42
はるのいと自由詩708/3/7 0:41
闇もまた遠く自由詩208/3/7 0:38
ニ長調で憎しみを唄おう自由詩208/2/28 15:10
ハ長調で破滅を唄おう自由詩708/2/26 2:34
お月さんいくつ[group]自由詩308/2/17 23:55
今様習作 朱夏の恋伝統定型各 ...508/2/7 3:10
今様習作 きさらぎの伝統定型各 ...708/2/7 2:42
うたのように自由詩008/1/31 2:10
月のない夜[group]自由詩5*08/1/30 9:10
あなたについてのモノローグ自由詩908/1/26 2:23
ベクトル自由詩508/1/24 3:53
雨の匂い自由詩208/1/24 3:52
みどりの草原、青い空自由詩408/1/21 3:25
Dark matter, Black Hole自由詩108/1/20 3:33
外は月夜で自由詩2*08/1/20 2:39
占星術師の春自由詩308/1/17 22:14
十九首・・・じゅうくしょう・・・自由詩2*08/1/15 4:00
羊の朝自由詩1808/1/13 1:59

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