カエルがサーカスをしていた
とても上手にしていたので
拍手をした
カエルは何事もなかったかのように
澄ました顔で水に戻った
その後、近所の銀行に行って
金融商品の説明をしてもら ....
5と6と7は同じ価値
かもしれないし
かもじゃないかもしれないし
シーソーに乗れば
5は浮き
7は沈む
高層の建物では
7は上
5は下
この6でなし
と言えば
5と7 ....
最近6なことが無いよ、
と7が言うので
6が無ければ7も無いんだよ
と言うと
7は5になって
軒下で雨宿りをする
押し出された5は
黙って雨に打たれている
水にも溶けないか ....
父は会社を辞めて
小さな薬局を経営していた
母は近くの
ガソリンスタンドで働いていた
僕が社会に出る頃には
薬局もガソリンスタンドもなくなって
父と母だけが残った
僕の仕事は ....
短い枕の中で
魚が溺れている
手紙を
食べ過ぎてしまったから
夏の道路を整備する
乾いた犬の
音が聞こえる
気持ちだけはいつも
敷地みたいに眠たい
ノートの中に
....
耳の奥の
遥か彼方から
青い空が
聞こえてきます
それが
歌でした
鳥は少しの記憶
むかしあったのに
触ろうとすると
水にも
よく溶けました
雲がぼんやりと
....
空飛ぶ円盤が池に落ちた
脱出した宇宙人は池に溺れた
溺れた宇宙人は池の鯉が食べた
その頃、僕は恋に落ちて
恋に溺れていた
今思えば、身勝手な恋だった
鯉が溺れなかったのが
唯 ....
川沿いを歩くと
ピクニックによく似ていた
共通の友達がいてよかった、
と話す
命のものと
そうでないものに
毎日は囲まれて
離れていくものにもきっと
誰かが名前をつけて ....
吐き出した言葉が
気泡になって
無人のブランコを揺らす
目を瞑ると
魚たちが
瞼を触りにやってくる
部品を捨てながら
自転車は走る
ただ一つの
点になるために ....
五月の窓がある
五月の肩幅になった
私が映っている
外には五月が広がっていて
部屋の中は
五月が凪いでいる
四月の私はもういない
確かに昨日までは
ここにいたはずなのに
....
昼休み、お弁当を開けると
中には凪いだ海があった
これはどうしたことだろう、
と電話をしても妻は出ない
それどころか、
海の中から聞き慣れた着信音がする
海が見たい、と言ってい ....
人が眠っている
僕の夢の中で
たぶん僕は眠っている
その人の夢の中で
無人の乳母車を押しながら
桜並木の下を歩く人がいる
置き去りにされた赤ん坊が
何も無い春に泣いて ....
駅前で女が
ヴァイオリンのように泣いていた
男がやって来て
指揮者のように煙草をふかし始めた
観客のように
人々は足早に通り過ぎた
銀色の魚が身を翻し
都会は ....
今年も年に一回の
メリーゴーランドが
広場にやってくる
君は朝から鏡の前で
お洒落に余念がない
僕は教わったイチゴ水の
作り方を思い出しながら
除草剤を作った ....
曖昧な更衣室で
僕らはすべてのものを
等号で結びあわせた
軟らかい材質でできた身体は
嘘をつくことが
何よりも得意だったから
花粉の積もった改札を抜けると
溢れだす人という人
....
キリンが首を伸ばして
夜空の星を食べていた
星がなくならないように
父は星をつくった
どうしてキリンが星を食べるのか
なんて関係なかった
父はただ星をつくった
やがてキ ....
眠れない羊が
僕の数を数えている
僕が一人、
僕が二人、
僕が三人、
僕は増え続ける
ため息のように鳴いて
羊は順序良く
僕を整列させる
そのようにして夜は明け
....
小銭を持って忍び込む
生臭い二つの身体で
薄汚れた僕らの下着は
日々の生の慎ましやかな残渣
死に対するささやかな抵抗
乾燥機をかけよう
余計な水分が
涙にならないよう ....
道路の真ん中に
枕が落ちていた
枕が変わると眠れない、
という性質でもないので
すっかり寝てしまった
車に轢かれる夢を見て
目が覚めると
胸の上あたりに
ミニカーが置い ....
ネズミもいた
アヒルもいた
犬もいた
小さいけれど
電気で動く遊具もあった
あっちにいるのは着ぐるみの
偽物ばかりではないか
そう言って
こども動物園の ....
海は遠くにありました
波の中で魚が一匹死にました
二人目はわたしでした
くすくすとガラスが光って
春だと知りました
飛べないトビウオの群れが
雑木林を抜けて
体育 ....
滑走路に正座をして
ブリの刺身を食べている
月明かりに照らされた横顔
あれはかつて
誰の養子だったろう
軍用機が静かに着陸する
花びら一枚
散らすことなく
インド服を着た男の人が
エレベーターの中で
みんなに挨拶をしている
不透明な窓の向こうに
一律に外があるとすれば
それはすっかりの春だ
古い鉤括弧は捨てておいて ....
栞の代わりに挟んでいたミルクをこぼして
僕らはどこまで読んだかわからなくなった
立春が来たことに気づかないまま
掃除を始めた人たちみたいに
ひどく狼狽えた気持ちになった
....
高い高いをされてる時が
一番高い時だった
何よりも誇らしい時だった
もう僕を持ち上げられない父が
故郷に帰る段取りを心配している
ぶつぶつとうわ言のように
出鱈目な記憶を繋ぎ合 ....
二人でガラスのコップに入って
誰かが水を入れるのを待っている
窮屈なのが
とても楽しかった
将来何になりたいか
お互いに言い合いっこをした
君は看護師になりたいと言った
僕は ....
君がスクイズバントをする
僕は必死に走って
無人のホームに帰ってくる
振り返ると
一塁線上を走っていたはずの君は
どこにもいない
野球に譬えるとそんな感じだ
見えない君の ....
パラシュートをテーブルに括りつけて
父が天国に行く練習をしている
深緑色のグレープフルーツを剥いたりして
僕は君ともう少し深刻な話をしたい
すべてがシンメトリーになれば
人 ....
台所の片隅で
シーフードカレーが腐っている
作ってくれた人は
新しい冷蔵庫を買いに行ったきり
帰ってこない
蛇口からシンクに落ちた水滴が
一筋の水脈となり
排水 ....
剥がれないようにして走る
名前を失った
低い温度のままで
足元を照らす僅かな灯りを
希望と呼ぶこともなくなった
脆い身体は既に
言葉の繰り返しとなり
穏やかに壊れ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30
0.25sec.