ひとつ折り ふたつ折り
細い道に鳴る影踏みと
冷たい明かりの向こうには
まどろみに似た水の花
白くほどけるふちどりの花
空から地への階段が
何の色もなく音もなく
その ....
闇の強弱
白濁の線
消えていく水中の渦巻きよ
途切れない声
砂画の雪
新たな汚れと共に降る
野生の宇宙
Gの付く人工自然
この泡だちに名を与えてはいけな ....
落ちる雲
水に映えて
静かに踊る
非人称の君
一人もどって
も一度誰も
連れずに駆ける
非人称の君
鉛の地図においでおいで
磁石を飲み ....
光の点の物語
夜の喪に立つ蒼い{ルビ蝋柱=ろうちゅう}
けものの笑みが途切れ途切れる
風が廃駅を削いでいく
茶のひろがりの終わるところに
金にかがやく草で編まれた
....
川の向こうにひろがる夜
水の社から来る音と
黒と青と金とが重なり
やわらかな生きものの胸を染める
暗く豊かな雨に導かれて
山は次々と雲のものになってゆく
....
れんげ ききょう おみなえし
ひとつかみ
ひとつかみ
藍の脂の寝るところ
黒から下は夢も見ない
誰かがつけた月の名を
つぶやく濡れた毛の動き
想うものが何も無いから ....
子供の小指のための鉄の輪
寄せる水のかたちに錆びた床
油が静かに水を覆う
床の亀裂がかがやいている
小さな何かと澱みの土くれ
光の種を吐き出しつづける
石の間 ....
十三の 私の願い 階段の
最期の一段 豚の背となれ
散る柳 時知る柳 喰む柳
流れにそむき さまよう柳
葉の蟻や
揺れて鈴蘭 死化粧
吐闇の風に ....
竹宮恵子は俗から離れず
萩尾望都はマネキン並べ
大島弓子は静かに手を振り
倉多江美はひっきりなしにくしゃみする
士郎正宗の欲は深すぎ
大友克洋の迷いも深い ....
すべては夜に
言葉でさえも
すべては音に
私ではなく
ひとつのひびき
ふたつのひびき
みっつのひびき
私ではなく
光を投げかけ
器を揺るがし ....
空のふたつの渦が近づき
あらゆる姿を借りてまたたく
濡れる珠と草の闇
腕の無い鬼の舞
風は幾度もかりそめを撲つ
生きもののものではない傷のように
雨水の血に照らされ
....
水の上 空の上の透明な切り口
目覚めたけだものを貫く緑
流れに裂かれ
岩から離れた水草
魂のはじまり
朱を知る虫も空に少なく
毒蛇の地も細かく分けられて ....
くずれ落ちそうな皿の山
こんな完璧な餌のまき方があっただろうか
猟師は遠くで
あたたかさが動くのを待っている
油色した雨の日に
ひかりは歩くだろうか
子供たちはそ ....
花を探しているのに
目に映るのは死体ばかり
戦乱はこうして
新たな緑の苗床となるが
少女はいつも
涙をこらえることができないのだった
ひと続きの岩は
やわらかな苔に覆 ....
足の下にかたまりが生まれ
小さくまるく増えてゆく
歩むたびに揺れるからだ
少しも速くならないからだ
地から離れ
地に繋がり
朝は歩みを呑んでゆく
光を並べては片づ ....
雪にわずかに沈む枯れ穂が
足跡のように原へとつづく
雨あがりの緑が壁をのぼり
水たまりの灰に軌跡を零す
空は青く
地の霧は蒼く
かかげられた腕の輪は
ふたつの色に ....
鴉を一度に十羽眠らせ
ごみ捨て場の連なる通りへと
傘をさして歩いてゆく
手をたたけば眠りはさめて
他の十羽が眠りだす
食事はたくさんあるのだから
あせらなくてもいいのだ ....
怒りの向こうに
無人の野がひろがる
地の上を
たくさんの月がさまよう
引力の主を求めて
風に散る光を問い詰める
求めず 求められず
けものは去ってゆく
....
草に埋もれてゆく家
土に埋もれてゆく川
骨組みだけの建物の上から
架空の町を見つめた
道をゆく風
動かない風
他よりほんの少し高い場所から
子は無人の町を見つめた
....
無数の雪
無数の水紋
咲きひらくものたちの
光の息つぎ
夜の終わりに立つ銀河の群れ
山へと向かう道の上に
降りしきる光のなかを
かがやいている
けものが ....
灰色の光
開かれた窓
庭の切られた木の前に
ひとりの午後が立っている
乱れた髪の
乱れた羽の
飛べない午後が立っている
雨雲と空の境いめをふちどる
青 ....
来るはずのないものを待つ
冬の蜘蛛のように
終わることを知らないひとつの季節と
同じ永さのなかでふるえる
汚緑の湖に打ち寄せるオーロラ
波の奥から
太陽を手にし ....
門をとりまく
黒い布の花
庭を横切り
午後の光になっていく猫
風のなかを振り返り
雲を見つめる目を閉じる
暗闇に目が慣れて
最初に見えてくるものひとつひと ....
涙のなかの{ルビ二重=ふたえ}の花
小さな歌と 軽い足ぶみ
指がぜんぶ ひとつずつ
翼になっていくような
それでもけして地を離れない
微笑むような足ぶみ
歌う先 ....
グラジオラス バブル
どこへでもいけると言いながら
壊れそうに撫でている
雨の音がある
日々の音がある
受けとめる
グラジオラス バブル
グラジオラス レベル
....
揺らせ リフレイン
ひらめき はばたき
とるにたらない光のかたち
それらが作る午後の羽たち
行き来する行き来する 夜へ向かう道
リフレイン
揺らせ リフレイン
埋 ....
{ルビ雷=いかずち}の生きものが道をよこぎり
こぼれた光に生える影
風もなく
ひとつひとつがたなびいている
たがいちがいにつづくかたち
夜の蒼い洞を抜け
何もないところ ....
青空の手に触れはにかむ冬の顔
描きなぐる雪のはざまを埋める景
ひとつにも無数にも降る雪の問い
ころびゆく我が横に空たちあがる
....
襤褸 襤褸
襤褸 襤
らんる らんる
らんる らん
楽しげに
悲しげに
ひるがえる
独りきりの子が ....
人という生きものは
ずいぶんと もうずいぶんと
生きものから離れてしまったのだろうけれど
まだかろうじて生きものでいて
遠く見えない同類と
同じように波打ちながら
それでい ....
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