視線をゆきます。
ひっそりとした
鋭角な色のない
告白にも似た存在の道
とぎすまされた意志の果てには重く輝く種子が宿る
涙で
洗われた深い瞳
そこに秘密を映す
答のない ....
真夜中の
骨の色素が熱を帯びて
暗く
暗く蒸発してゆくのです
未だに守れぬ約束へと
恐ろしく白い
わたしの骨は
いったい何を支えている
夢か幻か否現実か
未来は己で決める
....
つぶやいた名が深く響く
空は{ルビ鈍色=にびいろ}をして時を孕む
いらっしゃい必然的本体
欲する無欲が降ってくる
浴びる黒髪
月光のもとの
涙する獣道で
懐かしく鋭い爪が轟く
....
母の小さな手が
ざわさわと高菜をもむ
塩と合わせる音が
その歴史を刻むリズム
器の底に横たわる思念
そこには計り知れぬ
脈々とした息遣いがある
その高菜を味見した母が
{ルビ辛 ....
肌にふれる
ざわめきの波に
もういいよ
さすらうため息
とまどうことなく消した
たばこの残り火が
灰皿に冷たく燃えていく
おびただしい熱が
さみしいからだを満たす夜
かえりみ ....
黒いドレスの少女の目差は
夢を射貫いて遠く羽撃く
永遠に透けた墓場へと
涙のあとが堕ちてゆく
約束のための雨垂れが
含んだ土へと帰る
私は時を経て
最果てに芽吹く
お早 ....
アスファルトの上に落ちていた
虫の亡骸を
土の上へと
いつかその身を
風にゆらす花へと
帰すまで
この身のゆらぎを
諦めに似た憂うつで
{ルビ現=うつつ}にゆらします
回転する
....
透過傾向にある
あこがれを{ルビ禁=いさ}めて
風と{ルビ心中=しんじゅう}
(危うげに傾倒する風脈)
距離は
あこがれを侵食するのか
もう発生です
雨天決行よしなに
風はどちらか ....
(行ってらっしゃい)
宇宙の森で生まれた あなたと
あなたは今頃どの辺
七丁目の角かしら
目的は果せた?
わたしは洗濯をすますところ
留守のはざまで
不透明な静けさを淹れて飲むと ....
イチジクを手にとる
あなたの背中を思い出す
いつかの電車内で振った
人体骨格のねじれた手首に
無邪気な笑顔でこたえた少女
そこにみだらな星はなく
鮮烈なスタッカートが鳴り響いていたので ....
欲望の膨張に忠実にあれば
私は一個の無言する絶叫である。
現存する過去の連なりに位置する孤独は
現在の溺れる魚の視界だ。
我がための我の告白は
中心する周回の円の傾き。
彩られ ....
思いも寄らず
潤いすぎれば
うっとうしくも重たくなる時があり
そんな状態では
さっぱりとかわいてみたくもあり
それでいて
方法も知らない
わたしは
煙草に火をつけて
遠い夢を静かに吹 ....
響いた翼はためかせて
風の声へ飛び続ける
閉ざされた約束の傷
脈打つ光へさらして
こえられない私をみつめる
罪色の翼に歌う
{ルビ現在=いま} 解き放つ時
押しつぶされそうな空へ ....
これから、お出かけ
終りに出来ないの
生きることは
終りに出来ないの
私が言った
命を授かった時からとは言わない
失ってから知った
いかること
かなしむこと
よろこび
わら ....
罪色の花が薫ります。
あやまらなくては
いけないことがあるのですが、
これは秘密。
わたしは、わたし
これ以上これ以下でもない事実
ああ絶望を失った
その時から過ちは秘密となり果 ....
意識されない曲線の内側で
永久機関の少女性が調弾する。
その輪郭は振動し
奥深く鳴りつつ最果ての嘘を静める。
お先に失礼
直線的で清音の科白が膨張する空のもと
つきぬける(或いは私 ....
時は無常にも過ぎてゆきますゆえ
おおきな流れを知って
現在地の私を知らなくてはなりません
息を静かにして
痛みの在りか
涙の在りか
かなしみの在りか
在りか
ひとときの微笑
つた ....
わたしの血は
青く青く沸騰し
ゆらめきながら立ちのぼり
はてしなく透きとおった
青をふらせた
しなだれた渇望のからだは
ゆく先のしれないおもいと
めまいの予感を内包していた
いよい ....
ぷぷちゃんのつぶらな瞳が
踊るように歩く
青の裾野を
静けさを流しながら
口笛を吹きながら
踊るように歩く
いがらっぽい重みに耐え忍び
針と糸で生活を縫う
母
この家は。
....
アゲハのハネは夏の欠片
土の上にパリン 零れる小宇宙
落ちていたハネなんですけれど
日にさらされてか
ガラスのように かわいていて
リンプンは星屑しゃらんりん
本体は見あたらなくって
....
流れこむ
悲しみ
ほころび
流れこむ
幸せの素粒子レベルの胎動
風に乗った翼が
青く脈を{ルビ搏=う}ち
わたしの過去を
虚空に届ける
混沌の光子
すなわち意識の次元的産声 ....
あのひとのまちは
晴れるだろうか
あのひとのまちは
曇りだろうか
あのひとのまちは
雨だろうか
………
あのひとの季節には
どんな花が
咲いているのだろう か
....
しらないのですか
しらないのですか
わたくしはもはや
すがたなきもの
たいしゃはすれども
かれはのしたの
つち
とおなじ
からだをもっているのです
しこうはすれども ....
乳白色の
血を流す
草の名を忘れてしまい
野原にからだをうずめた
満天の星の鎮魂歌を
あすの朝の火に{ルビ焼=く}べて
壊れた時計の可燃率とともに眠る
忘却は
時を経るごとにや ....
鳥がついばむ彼方の星を
ここはどこかとうめく空
雨がしとしと名を呼びます
風にちらちら花燃やす
迷いこんだは露の中
返事をするのは うそぶく化身
いいねぇ
ねえ
舞って散るのは ....
やかん
電車内の実話で
ひるま
紫外線をあびていた座席が
まばら なまま
すいてはうまっていた
あいているせきへ
すわれるというのに
ひとり車輛の先頭にたち
いきづかいもなく
....
しずまりかえった夜
の浸透圧で
ゆるやかににじむ
染まりゆく夜
染まりきるころには
わたしたち 空っぽ
恋は死ぬ
愛は死ぬだろうか
輪郭は想う
幻色で、つめたく卵
うすく微 ....
うつむく おもてをしろくして
みだれ黒髪 風へすき
雨のくる のをそぞろまつ
かすみのころもを まとう月
かごとゆられて {ルビ何所=どこ}へやら
{引用=個 ....
嘘は下手
毎日の風景が輝いているので
胸がいっぱいで
食事は日に一度
それでも 落日のからだはやせもせず
うたなんかもうたっている
大空のもと突然 笑いだしたりして
なにが可笑しいの? ....
夜明けにそっと
顔を手でおおい
いかにも
不吉に笑う
今日の糧は
厳かに実っているけれど
何も言わず
ただぶらさがっているわけではない
しゅくしゅくと鳴る炊飯器
ひとつぶひと ....
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