はじめからこうでは
なかったはずなのに
無垢であるには混沌としている
空の色はもっと
違っていた気がする
もっと緑がかっていた気がする
ふたりはもっと
透けていた
むこうが見わたせるく ....
わたしの金魚鉢には
ガラスのおはじきが入っているだけ
靴箱の上でうっすらとほこりを被る
きれいに洗ってよく拭いて
チリンチリンと入れなおし
明かりを消した窓辺に置いた
....
想いにふけるきみに
話しかけられない夕
ぼくらは
そっと夜を待った
・
家を出ると
道端に
無数の舌が落ちていた
赤信号が
誰ひとり停められなくて
途方に暮れているような真夜中だった
舌たちは
うすべにいろの花のように
可愛らしく揺れなが ....
日が沈んで暗くなった空に
一等先に光ってる
あれが金星だよ
そう言うと
君は
そんなの知らない、と言ったね
学校で習ってないから知らない、と
ねえ、ルミ
その言いようが、な ....
あの青は知っているのだろうか
大海の向こうの優しさを
国境を越えた憎しみを
アスファルトに染み込んだ綺麗な血の匂いを
埃まみれの文字に隠された秘密を
届かずに色を失う百億のコトバ達を
....
あなたは
きえそうなひかりのまえで
手をかざしている
胸元から
オイルの切れそうなライターを出して
何度も 鳴らす
うつくしいけしきの
まんなかにいる
いつも
き ....
思わず息がこぼれて
あたしは君への思いで
この身体は調律される
もうすぐ終わっていく
そんな情景、君がいない
君の追憶には存在しない
特別でも何でもない
あの丘にまた、夕暮れが降る
....
酔ひつきて手酌は野暮よと差し出せば宵の月揺るすすきの水面
蜃気楼を信じて
砂漠に打ち上げられた鯨
現実から逃げ出して
淡水の夢を見たけれど
安らぎは
もっとずっと
遠かった
求めたものと
与えられたものと
砂粒みたいに
隙 ....
蒼の天蓋
と、
切り取られた
過ぎ逝く季節の空気は、
きっと
黄金色。
その一瞬、
愛おしい白い星砂のよう、
に
....
夏休み
なんかいめかの
花火をする
お盆さえ
いっしょにいてやれなかった
贖罪を
火にくべる
はなやかな花火のあとに
さっきした
線香花火
....
Quartz
震えて
終わりと
始まりのないものを
区切っていく
切り刻んで
数をあてる
なにものとも
名づけられない筈の
私より薄くて
鉄も
昼夜をも含 ....
きみもいま
地球の重力のなかにいる
月を見てる
おなじ引力のなかにいる
もう二度と
積極的には会わないひと
さいごの約束を
ふたりで破ったのは
何年 ....
穴を掘り続けたのは
きっと寂しかったから
ひとりぼっちの夕方を
埋めてしまいたかったから
今はわかってる
あの頃も 今も
円形の砂場から
立ち上がれないの
目から水を飲み
花になり
やがて言葉に
うたになる
数歩のぼる風の音
ひとつひとつの段の上に
しずくを含んだしずくが震え
空を囲む樹を映している
触れてはこ ....
行き場のない
公園が
たどり着く場所というのは
公園で
うろうろ
自転車が回る
公園には
行き場がない
なきむし
って
いうことばをしるまえに
なかなくなった
コンピュータ ....
庭に舞うチンダルブルーの鱗粉が日に灼かれて
ちりちり して
なんだか今日は風がうるさいなあ
小さい頃の家の庭にも
同じのが飛んでいて
つかまえようとしてもひらひら
ひらひらと
あ ....
月光も揺らるや海の真ん中で無き夢となり朝日を待つか
一人では死にきれぬ故か入り来た部屋の夜虫をまずは殺して
寂しくも悲しくもないよただ、ただ暗闇がずんと来るだけ ....
広告のチラシに空白を作って
自分の世界を広げていたころ
遥かに遠い場所で
狂っていた気がする
夏休み
朝顔
日記帳
全て投げ出して
風鈴を眺めてた
ちりんちりんと
感覚 ....
うめぼしのソファーに座って
染み付いたズボンを僕ひとりだけで舐めた
醒めながら 醒めないよう
従順なイルカの飛沫の上で
一緒に眠ろうって誘い込んだけど 君は黙ったまま
いっそのこと抱 ....
心地良い風が集まるオープンカー
サザン・ビートで踏み込むペダル
ためらいを脱いだ渚の砂熱く
波音のソロに浸すつまさき
ありふれた譜面は飛沫で狂わせて ....
私の遺体は焼かないこと
埋葬の道中には子どもを3人付き添わせること
子らのつやつやした黒髪は、
青々した緑葉を飾ること
そして彼らの透き通る白い肌は、
漆黒の羽織で覆うこと
死の色の中 ....
泣くなって言ってくれた
君の
笑顔はもはや今
輪郭だけ
最後の剥がれてしまいそうな
一枚の組織だけ
単純に君のぬくもりが欲しかった
、わけじゃない
君の誇りになりたかった
君 ....
命を燃やして 動いている
流れに逆らわず 動いている
それらに名は無い
だから名枯れ星というのだ
だから流れ星というのだ
今宵 ....
海岸線沿って定規で空を引く色鉛筆で画け得ぬ青
深く深い場所まで熱せられていくオーバーヒート前の打ち水
おしなべて心を乱す約束と雲の行方をだれも知らない
....
夕と夜の
とけあうあわい
小鳥たちよ
おやすみ
また
明日の朝
その鳴き声で
やさしい目覚めを
それは朝陽を煌々と浴びる
蜜のような栗毛だったろうか
それとも夜のように流れる黒いたてがみ
そんな事は重要ではないのかも知れない
長いまつげを震わせる一頭の馬が
街角をひっそり駆けてゆく
....
低くなる光
黒に見え隠れする温度
埋み火のいろ
仄かに消えていく
ぬくもりだから
だきしめて
あと十分間
ぬくもりを
大切なものは
ときどき儚くて
握り ....
七月の海が三日月たべている
平和な孤独をつかんではなして
猫だけに見える景色があるという
二足歩行の失敗例です
席を立とうとしてつま先を踏んづける
また僕 また僕 また僕なん ....
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