一。
この春から、
駅の売店で働いている。
駅は人通りが多く、
適度に乱雑で、
我々が潜入するには最適の場所だと、
新人研修で総統が言っていた。 ....
春の雨になりたい
あたし 春の雨になりたい
あなたはすぐに 春の砂にまとわれて
その嵐の中に {ルビ荒=すさ}ぼうと揺する
小さなオルゴールの中に
こころ を 忘れてきた ....
世の中なんてみんな
白痴ばかりじゃあないか
コンビニエンスストアで
大音量の着信音が響いた
居酒屋の出口で倒れている君
それでも酒を提供する男
彼が殴られたことや殴ったことを
た ....
乾いた空気を
ぎゅうっとにぎる
繋いだ手の感覚は
何となく覚えているから大丈夫
今日も一緒にお散歩に行こう
表通りの十字路は避けて
少し遠回り
もうすっかり春だね
ってたわいもな ....
あなたを通り過ぎた風は
凪いで
睫の高さで追いかけていた
ニ歩先の肩甲骨と
くしゅん、と鳴った鼻
とのあいだに、置いていった
指先にのせて飛ばした
内緒のくちづけの形をした
ふ ....
水を、欲している
のどの ずっと奥のほうで
さかなが泳いでいる
季節が融けはじめていることに
気づいたときには もう
わたしのなかの海は 浄化され
沈殿していた過去があふれ出て ....
ただ。ね
キラキラしてたんだよね。
ただ。ね
嬉しかったんだよね。
ただ。ね
優しい め してたんだよね。
ただ。ね
かっこよかったんだよね。
ただ。ね
あったか ....
そこはいつも夕暮れで
暗く沈んだ花園
ある時
一匹の鮮やかな蝶が生まれて
その上を軽やかに舞い始めたのです
私は長いこと
絡み合う植物でした
痩せた葉は光合成を忘れ
さりとて枯れる ....
言葉と言葉の間には
言葉はないけれど
言葉にはならない
人から人への言葉がある
言葉は全ての中の
ほんの一部分の表れ
書かれてあることよりも
書かれていないことの方が
圧倒的に多くある ....
木の枝が重ならずに生きていくことを
描き言葉と伝え言葉が生まれる
それぞれの心の在処を
まるでひとり言でも呟くように静かに
少し楽しげに君は教えてくれる
大きな木の根元に寝転んで
....
小さな子供たちは
小指で誓う
幼稚園の無花果の樹の下で
色づく頬はうふふと笑う
遠くで鳴るオルガンはメヌエット
大きな子供たちは
唇で誓う
通学路を外れ孤独を埋めるものは二人以外には ....
ちくわのてれすこーぷ覗いて想うあの星ひとつ囓ってみたい。
土星くんはきれい好き今夜もシャンプーハットで入浴宇宙。
でっかい目玉を ....
世界はかように動揺する。自分はこの動揺を見ている。
けれどもそれに加わる事は出来ない。
自分と世界と、現実の世界は一つ平面に並んでおりながら、どこも接触していない。
そうして現実の世界は ....
―AM6時、人の少ない井の頭線の車内―
ガラの悪そうな細身の男がシルバーの携帯で喋っている。
靴下は赤と青のりんご模様。
茶色の便所サンダルを履き、
黒のパリッとしたスーツ、ハンチングを被 ....
肺が焦げる夜
盲目の影は忍び
言い訳の暗室で
嘆きの雫を
垂らすならば
今すぐ探しにいこう
星屑のマーケット
弓をひく光線
孤独を突き刺す
白矢は流星
この心臓を貫 ....
姉とハンバーグを作る
この広い大草原の中で
寂しさを潰そうと捏ねて変形させようと
焼いて楽しくしてやろうと
玉葱を切って遥か経つが
姉の涙は止まらない
それはこの世で唯一の水
私 ....
君に対する僕の心は
ほとんど愛で
蝋燭たてとか
傘たてとか
ドアノブとか
靴べらとか
そういうものに
僕はなりたい
....
さんびどおもってらば
まだ ゆぎっこ ふってくるおだおの
まぢの たんぼだば すてっときえで
ながぐつなば はずがしして
みせっこさ よ ....
下肢の無い僕はサーカスのピエロになりたくて 物心ついた時から 毎日車椅子を動かせて街に出て大道芸人の先輩の隣で滑稽なメーキャップとお母さんが作ってくれた服装でパフォーマンスの練習をしている
車椅 ....
ロマンチックなんていらねーよ
ささやかな秘密もいらないんだよ
全貌を早く耳打ちしてくれよ
パズルのピースの上に俺は立っているんだ
あんたが完成されてくれ
....
寝息が聞こえる
12時、目をあけている
ピンクの携帯は鳴らない
あなたからの安心をまっている
あなたの言葉を頭でくりかえし聴いている
あなたが触った頬の位置に手をおく
....
「明日へと向かって、前へと歩こう」
って、きみがいうから、
ぼくもついていくことにした。
きみは
ずんずんずんずん進んでいって
だんだん見えなくなっていった。
きみとぼくは
はぐれて ....
あなたはわたしの眠っている横で
わざとらしくページをめくる音
つよく立てて
降り始めた雨を受け入れる
くらいまぶたの中で
弾ける赤い頭痛
あなたの読んでいる一行が
鮮明に浮かび上がる 夢 ....
換気扇の音が気になって眠れないよ。
そういう君のいびきは換気扇の音よりはるかに大きかったけど。
僕は換気扇を止めてベランダで煙草を吸ったんだ。
角を取るなんてズルイ。
そういう君には一 ....
(1)
あかるい
闇。
あしおとが
だけが
3分の4歩 すすみ
7ブン の5 ホ もど
るるるるるるるるるるるるる
光は
くらい光を駆逐しそれはさらにあかるい光によって
な ....
そう そこに意味はないんだよ
ソーダの泡 はじけて
いつか 消えてしまうように
あるがままに あり
消えるがままに 消えていく
だから 光 とろけるように
のみこん ....
2007/04/03
同人に
駄作と言われ
項垂れて
今晩寝ないで書き直そうと
とぼとぼと帰宅する
明日の朝
早く起きて書き直しても良いのだ ....
短歌撃て弾幕のごと花の昼
朝刊から目を離さずに
気の無い空返事
それは。あなたの得意技
わたしが何を考えていようとも
お構いなし
空気のような存在
親しすぎる関係の果てに待ち受けるのは
そんな空虚さだ ....
動物たちの暮らす森に、一匹のイボガエルが住んでいました。彼女には悩みがありました。からだのあちこちにあるイボから、いつもミルク色のべとべとがしみ出していて、そのべとべとが体に触れる草花や、遊ぼうと近寄 ....
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