わたしをのがしてください
なつのよはあつくて
そのままわたしをとろかしてしまいます
わたしをのがしてください
ならないけいたいをさしこんで
せめてみたしたいからだのいちぶ
あなたは ....
日に満ちた電車はそっと風になり火照ったほほをすりよせてゆく
夏に包まれた海の底の席で車掌が居眠りしつづけている
唇のはしからはじまる熱気にもあたたかないばら胸に ....
草原に寝転んだ
川沿いの草原
君にすすめられた日光浴
空と僕
なんだか僕はちっぽけだ
天道虫と僕
なんだか僕は大きくなった
僕のとなりに寝転んで 日向 ....
刈り入れ、葉、枯れ
わたしたち。
貧窮は カタカタ 呼ばわる
明るさについて。
茎が折れ、そのあたりを、
嗅ぐ。 鼻孔、ひらき、
足も萎え、
何度もなぐられた ....
いま、ここでできること
わたしのなかの
もう忘れた 日々のなかの
灰の底で まだ暖かなものを
はだかの ゆびで つまみ
てのひらのなかで
そっと 吹きかけていくこと
ああ 雨が窓を打 ....
「かえして、ねえかえしてよ、あたしの世界。」
ばらばらになったのは、
あの日、
窓から自分の身体を放り投げたのは、
わたしたちという、世界そのものである。
あなたは、
蓬髪をさかだてて ....
そうぞうしいみちのうえで
林檎が鳴った
歯をみせて おとは失せる
あなたのつちいろの肌
ゆうぐれと 宵のすきま
てれびをぼんやり ぼんやり
ながめてすごす
ふとしたとき
とばさ ....
冷蔵庫のスイッチを切るとき
すこしくすぐったくて
おにいちゃんの足音を 耳に返していた
今日はきのうよりすずしくて
風が すけてゆくので
きのうは
カクテルで酔った
ママの ....
旅館から浴衣がけで我々は夜の温泉街に出かける。川の橋の袂に、テントがけの射的場がある。酔っている我々はそこに入った。一本の銃がぼくに渡される。紅い人形を撃ち落せという。ぼくは狙 ....
えりちゃんのにおいがして
雨がすこしふった
きれいなえりちゃんはふきげんで
ようふくの襟を
ひんまげて
おとうさんはとかげを撫でて
まどを
すこし開ける
えりちゃんの隣に ....
半歩、まえをゆく
あなたは
鳥の巣を見たいという
つゆの前日
うすみどりのかぜが
わたしたちのあいだをゆききする
わたしの部屋へ ゆくみち
みみを澄ます
ゆるい
花火
....
春は きえた
ゆうだちの匂いがやわらかなあわになり
すこしずつ
あたしのつまさきと
乾きかけたしゃつに へばりついて
いもうとのうたうはなうた
おとなりからひびく いたりあ ....
1
眠りたい太陽は
徂徠する雲に翳り
口を得れば脚を失うだろう
無理に開いた胸には
寛容ねと謂う
君の眼差しに
愚鈍さを隠せずに朽葉色に染まり
消してあげる 蝋燭を
口角に気 ....
さみしい唇が
のどに鈴を付けて
歩くたび揺れて鳴く
顔迄這い上がる地熱はゆらゆらと
蒸せかえる
濡れたアスファルトの匂い
空は墨青を垂らして
飼育箱の中は授乳室であった
....
からだの曲線にそって
あなたは
かんたんなじゅもんなのだと指を折った
てのひらをそっとひらいて
りゆうもなさそうにわらった時
すこしだけ
えんえんとつづいてゆく
朝の風景を おもいだして ....
硝子細工の
幾つかの重なりは
小さな風の溜まり場をくるくるとかき混ぜて扉を揺らし
丘に続く小道を夢見るのです
夏が降り
気まぐれな模様を織りなして
あのひとの指に留まった雨粒が私の
....
ひとつの胴体に馬の首と牛の頭。小屋を出たところで、馬の首は走ろうとする。牛の頭は立ち止まろうとする。からだがよじれて小屋の前で回転するばかり。
首は二つだが、胴体はひとつで牛のからだだ。四本 ....
中心へ向って途絶えない無数の
緑の中に駈け寄って
眼の後ろで呼ばれた光は
しだいに
向かい合わせた最後の場所で
塵に変わりゆく扉に刻まれても
痛みのオウトツを識らない
薄まら ....
− 素子へ、特別版 −
子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言った ....
沈みかけた夕日に
灰色のカーテンを浸せば
世界は爆発する
*
うつくしい言葉を残すのはやめろ
あれは悲しみで あれは俺じゃない
四階建ての立体駐車場の一階で黒い自動車が死んでいる。飲みすぎて緊張が緩んだ顔のようにボディが張りを失っている。キィーを差しこんでもエンジンがかからない。電気系統は何も反応しない。開かない窓。ワイパーは ....
ミルクが欲しい1歳は
男が欲しい21歳に
あっけなく捨て去られる
新しいゲームソフトが欲しい12歳が
プラダが欲しい32歳の
財布から金を抜き取る
夢が欲しい33歳は
安定が欲し ....
その道は
街灯の小さな明るみの中に
白く浮かび上がっていた
様々な思いが通り過ぎていった
その白い舞台の上を
今日は
消え残る足跡がひとつ
闇の中に後ずさる
風が
粉雪と共に ....
はじめのズン類はふたりでした
手をつないでいたから間違いありませんでした
トリとサンサスンスンといいました
なまえをつけたがるのは神さまのわるいクセでした
ふたりのズン類は丘のうえに立 ....
何もかもくだらなく思えてきて
途方もない真っ直ぐな道を当てもなく歩き続けていた
しばらくすると海が見えてきて
老若男女が海辺や海に入って楽しくやっていた
誘い込まれたように
気がつく ....
あなたは言った
「もっと頑張りなさいよ」
あなたは言った
「まったく君はだめな奴だぜ」
あなたは言った
「優柔不断な人って嫌いなの」
あなたは言った
「良かったら付き合っても ....
てだこ、大ぬしは飛ぶ
てだ、いちろくが、
てだ、はちろくが、
日夜
苦しそうにマフラーを
まいてるカップルたち
こんなすがすがしい愛はない
うどんのようにスルスルと伸びて
熱い ....
たぶんみんな知っている
本当は女のアレの中に男のアレが入っていないことや
男のアレに添えた手の裏側に白い液体入りのスポイトが隠されていること
つまり薄いに越したことはないけれども
丸見えを望ん ....
ステンレスキッチンに置かれた
一枚の紙切れ
強烈に窓からそそがれる
陽射しにめまいしながら
水をのんだ
昼の電波網では
とにかく男と女が終止
運命の出会いをくり返している
のに中庭には ....
「線路の上を歩いて海を渡る
それ自体はけして珍しい行為じゃない
だが
心してきいてほしい
次の駅にたどり着くことのできる者は
きわめて稀である
「大洋をどこまでも縦断する ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76