雨が降っていた
暗い門の下で
男が三人いて
僕がその一人だった
門の先に続くのは
センチメンタルな山道だ
雨が小降りになってきたので僕は歩き出す
男が「大丈夫かなあ」と言っている
....
禁止区域 日本人は 舞台の 中で
禁止区域 首をくくる 白い 精霊と
日差しの 自殺者の 下で
モスクの 中では 御詠歌が
ジャズと 共に 煙草を押し当てられ
白い 顔 ....
異なるテンポと体液の変電所は何処に?
異なるテンポと体液を考えてはいけない!いけない!
それは風に揺れる葉を
椅子の軋みで脅かされ思わず手から滑り落としてしまったセロファンを
掴もうと ....
真夜中に笛を吹くと蛇が来るよ
死んだお婆ちゃんは
いつもそう言っていたけど
んじゃ
真夜中にディジュリドゥ吹いたら
一体何がくるんだろう
試しに吹いてみたら
隣の家のダンナさんが ....
明日の朝まだ日が昇る前に
わたしのアパートまで
迎えに来てください
最新型のスポーツカーで
あの角をゆっくりと曲がって
わたしのアパートの前で
静かにエンジンを切ったら
わたしは小さなバ ....
広大な 宇宙を 精神病棟と
隔離しろ
暗い 溜まった 水の中で
以前から 母親だったものが
泳いでいる
病む真似をする 黒い 世界
般若の 角を 母親に投げ入れたのは
誰だ?
私 ....
ひらがなを覚えたのは
褒めてほしかったから
泣かなかったのは
泣けなかったから
望まないのは
叶わないのが怖かったから
受け入れられないのが
受け止められないのが
拒絶され ....
君には訓練が必要だ
高らかな産声で自らの生を宣誓し
誰にも教わることなく
呼吸し始めたようには簡単にいかない
今、君の身体は音楽に満ち
穴という穴から溢れ出そうとしている
それらを十本 ....
かえるなり
あせのかわごと
ぬぎすてて
みずぶろふかく
しんでもいいや
私小説というものがほぼ死に絶え、小説はエンタテイメントとして書かれ・読まれ・消費されるものになって久しい。それに対して、詩というものは、未だに“私詩”とでも呼ぶべきものが大半を占めているように思える。 ....
健康のために 今日は
詩をかくのをやめておこう
もうネタもないし
という詩をかいた
って 前にも使ったな
とても寂しそうに立っていたから
声をかけられなかった
檻の中
100センチの
ペンギン
タイミングが全て合ったら
結婚しましょう
氷の上で
夕方の風は冷たくはないの
ぬるいの ....
良心の呵責を感じた看護婦が、昨日、自分の祖父に謝罪文を書いたバーカウンター。
130席用意しているけど、130人以上の予約を喜んで受けてしまう店長。
ご自慢の料理は?ときかれて、妻の自慢料理を答え ....
詳しいことは受付でお聞きください
そう言われて男はあたりを見回すが
どこにも受付などない
大切な用件なのだ
思い余って
受付はどこにあるのですか
と再び聞いてみた
あなたが受付です
胸 ....
参道下の古ぼけた店で
岩魚の塩焼きを齧る
雨が降ってるので
ゆっくり と齧る
しらやまさんに降った雨は
百年後の加賀平野を潤す
その雨が
降っているので
ゆ ....
わたし
椿の紅のビロウドのような
柔らかさに触れたくて
はなびらに少し
指先を這わせただけでした
椿は 紅を舞わせて地へと落ち
華の美しさを ....
もう ええわ
あしたになれば
わかるこっちゃし
いま悩んどっても
らちあかん
寝よ
などと
言ってみる
あたしの町のあたしの川の向こうにはあたしだけの工場が在る。
其処は終日稼働式で、何時でも好きな時に好きなだけ眺める事が出来る。
くすんだ灰色の煙突は大した高さでも無いのに
チ カ チ ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
二日酔いだった
目をつぶると昨夜集中して見たエロサイトの残像が浮かんだ
くだらないバナー
朗読会の準備は着実に進行されたが
肝心の朗読はだめだった
セックスも生活も破綻し ....
覚えていること
今日覚えていること
財布の整理をしたこと
アロエの葉っぱの伸びように驚いたこと
死ななかったこと
皿を割らなかったこと
急ぐことはないということ
いずれいろんなものが ....
昼寝から目覚めるとぐるり真っ青になっていて
真っ青になっていてでんぐりがえった僕の眼球
眼球から涙は流れず一滴の血もこぼれない
かなしみ
僕は何しているんだろう?何もしていない僕のほころび ....
こっちこっち
そっちどっち?
こっちだって
そっちだって?
....
ウェスタンブーツで
アスファルト蹴りあげて
伝票整理も経費精算も明日にして
スカートの裾ひるがえしながら
カウガールみたいにタクシー飛び乗って
とりあえずどっかに逃げちゃえよ
ほら
ビル ....
さっきから君のことが
好きでたまらないと思っていたが
さっきより君のことが
好きになっていることに気がついて
こりゃもう仕方が無いので
風船みたいにいつか割れちゃうのかな
なんてのんきなこ ....
この街にディグミーランドができるという計画を聞いてから五年が経った。思えば気の遠くなるような長い時間だった。
子供の頃からディグミーのアニメが大好きだった。とりわけニッキーマウスはおれの大のお気 ....
遮断機が下り
列車は近づき
他の音は止み
鉄路になびく
草の背は蒼
草の背は蒼
薄い曇が
空を覆い
星は絶えず
北へ流れ
呼びつづけても
夜はひとり
月はま ....
猟師と漁師の血を引いている
量子物理学者のマトリョーシカは
呪われたように青い青空を見上げながら
ペットボトルのミネラルウォーターを一気に飲み干して
そして
巧みに張り巡らされた仕掛けを軽や ....
卵を眺めている
何の卵か
判らないから
卵の中から
何が出てくるのか
さっぱり判らない
卵かどうかさえ
実はあやしいのだ
いっそのこと
割ってしまえば
少なくとも
卵なのか
そ ....
中野の図書館のプラネタリウムで
部屋が真っ暗になって
お星が一度にたくさんあらわれた時には
吸い込まれて泣けた
銀河は悲しいから
それで知らない隣の人と手をつないだ
洗濯槽 ....
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