あの娘が目じりを下げて笑うとき
あの娘の細胞はすべて等しく太陽となる

葉陰の虫が鳴いていて
昨夜はあんなに満月で
それでも逢いたい人に逢えなくて
淋しくて泣く女がいても

あの娘が目 ....
タマゴちゃんはちょーかわいい
僕は迷わずにゴマ粒でタマゴちゃんの顔を描いた
茹でたてのタマゴを丁寧にむいて
でもタマゴちゃんの目はもっともっと大きいし
いつもニコニコしていたんだよ

タマ ....
だらだらと
ソフトクリームが垂れるみたいに
だらだらと夏
この一日を生きていて
気持ちいい

後悔と偽悪の間に
うすく蝉が鳴いて
昼間になると
うすい雲が空を
覆う

ぐずぐず ....
眼下には海の藍
振り返れば風が岩を離れ
大声で歌いだす荒野
アイスボックスから取り出したジンにレクストリームを数滴
緩やかな緑
車はあいつに借りたワゴンRで
今日は帰るつもりなどない
松 ....
雷雨の夜に
またお前の魂はくっきりと日に焼けて
幼い胸板をさらしている
いくつになっても
お前の魂は脆弱で
いつまでたっても子供のようだ

そういえばひまわりが咲いていたっけ
あのお前 ....
私は夏雲のあるこの空に
人差し指を差し込んで
この青空の
その底にある
人肌の群青に触れようとする
そのぬくもりは昔日の
小さなおまえのぬくもりに似て
あわあわと崩れそうにゆれる
いつ ....
香気がどこからかぼくの指にしみこんできた
朝日はいつの間にか木陰を
ありありと作るくらいに大きく育って
父は病んだ体を褥に起こして
指先から瑞々しい桃の果汁を滴らせながら
桃の果肉を噛み砕い ....
静かすぎるよって
背泳ぎをしながら呟いてみると
空には立派な
夏らしい雲
陽に焼けた
男と女の睦み合う
そのすぐ横を泳ぎ去るとき
波立つ水から
微かではあるが
女の性愛の匂いがして
 ....
藤の実が剣のようだ
ものすごい湿気とものすごい気温の中
藤棚の下で目を閉じて
何も見ない
藤の実が剣のようだ
おそらく
噴水の前を通り過ぎる自転車のベルも
風鈴のようだが
でもそれはも ....
その女の乳房は
四月の桜のように満開で
うすももいろの
空にも恥じない明るさである
肌色は世界に開き
柔らかな匂いで部屋は満たされる

私は小さな白磁の杯で
そうして
お前の笑顔を嗜 ....
もし大地震が
完璧に予告できたとして
その街を走り去る
列車の運転手の心情を
私はわかるだろうか

逃げる
人々を乗せた列車が
予告された日
街を通りかかったとき
平常の時速で走り ....
お前は私の女なので
お前が誰と寝ようが詮索はしない
私はお前の男なので
お前に誰と寝ようが詮索はさせない

お前は一六五センチの背丈を歪めながら
私のためのじゃがいもを茹でている
お前の ....
きみの歌はどこまでも聞こえる
きみの歌は世界中に響く
きみは魂を振るわれて鳴く
世界でただひとりの小鳥
花の影から
雲の上から
草の切れ間から
きみの歌声はとめどなく地面を揺らし
この ....
僕の血を吸ったばかりの
大きな腹をした蚊が
ベープマットの上を飛び過ぎて
週末に掃除しただけの木の床に落ちる
音はなく
羽ばたきもせず
すとりと落下した
自由落下のそのまんま
でも
 ....
すとん
  すとん
    すとん
      雨
散発すると

すとん
  すとん


血が四散して
痛い

 残響が強い部屋に住んでいるので


  おとといのお ....
蝶々蝶々蝶々蝶々
あの街へまっすぐに続くこの道から
次々と黒揚羽が湧き立ってくる

蝶々蝶々蝶々蝶々
抜けるような今日の空から
次々と大水青が舞い降りてくる

午後二時
陽が自らの重 ....
 の苺の花を見つけたのは
 僕よりも犬のほうがきっと先
 しろい花はきれい
 咲いているのは僕と犬の家のすぐそば
 あの山までは二時間と少し
 僕のままでかえってくるから
 犬のままでいえ ....
 真っ赤な庭のハナミズキからうす赤い葉脈と生まれたての緑を含み笑いみたいに抱いた葉がニョキニョキと出始めている
 隣家の藤の花は強く匂って
 数匹の黒くてまん丸な熊蜂が空中に静止したまま動いてゆく ....
夕暮れには
群れなす鳥が遠くの森から
別の生き物となって飛来する
そういうまちに僕は住んでる
私は間違いなく私で
私があなたでないことは確かなこと
私はあなたが間違っていても
何にも意見なんかしないでしょう

外は
今日は雨です
雨は
私が求めたのでもなければ
ましてや
私 ....
吹雪が吹き上げてきます
 私は一人でお茶を飲んでいます
木々に掛かる雪は枝に絡み、ミニチュアの樹氷のようになっています
 ホテルの明かりは白熱灯でぼんやりとテレビを照らしています
僕はその中を ....
おまえの右の手のひらには小さなほくろがある
小指の根元のふくらみのちょうど麓のあたりにある
おまえの手には悲しみが五つ
行き場のない方向へ伸びていて
細い消え入りそうな悲しみで
おまえは僕の ....
昨日美という女がいた
小柄でどうしようもなく泣きそうな顔をした女だった
うつむくと
細いまっすぐな鼻筋があって
ベクトル
時間軸とは関係もなく
電車の床に延びてゆく明日
昨日美はイチゴが ....
黒田康之(113)
タイトル カテゴリ Point 日付
夕方を前にして自由詩205/9/19 16:51
タマゴちゃん自由詩105/8/31 0:42
だらだら自由詩1+05/8/20 1:09
野人の荒野自由詩105/8/14 2:09
雷雨の夜に自由詩205/8/9 17:22
今日生まれし者へ自由詩1405/7/30 9:19
初物の桃自由詩705/7/23 1:44
背泳ぎにて見上げる自由詩605/7/16 18:39
公園の昼間にて自由詩505/7/2 8:45
満開の乳房・輝ける美酒自由詩305/6/28 0:43
私の欲する心よ来たれ自由詩105/6/24 11:32
過剰な警報の遠鳴りを聞いて自由詩005/6/18 18:18
世界を漂う指先からこぼれる音符自由詩205/6/17 23:51
自由詩205/6/14 23:54
自由詩305/6/5 10:26
夏  午後2時自由詩405/5/13 13:54
のいちご自由詩105/5/4 20:18
空にとまる蜂のように自由詩205/4/30 14:31
今日の我がまち自由詩305/4/16 8:55
超個人主義自由詩105/4/10 14:02
雪〜バイノーラルならば雪自由詩105/4/1 17:29
ほくろ自由詩305/3/30 19:00
ありえない名前自由詩805/3/26 15:49

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