近所の婆さんから焼き芋をもらう
紅はるかって種類を初めて作ったとか
太い焼き芋だ
齢八十余年の初めてをいま喰っている
冬の道に蛾が落ちてきた
大きな桑子だ
冬をやり過ごし
羽を朽ちさせた太い蛾は
冷たいアスファルトに震えていた
二月
妙に暖かい日に
それでも凍てた道路に腹と羽を震わせた蛾の
末路は知ら ....
濁酒のこびりついた盃を洗うと
米粒が
棘のようで
痛い
雪のある山に雪がないような時は
もう一度川のせせらぎを聞いたほうがいい

どうしようもなく足元が不安な時には
遠くで鳴く犬の声を探すほうがいい
ねえ、一番多くころすものってなんだ

戦争?

それは数千万人

疫病?

うーん、それは最大数億人

天変地異?超巨大隕石とか、氷河期とか?

それは最大全人類

じゃあ ....
遠くから
常に
私の後ろを雷鳴がついてくる
ただ稲光りは私の身に起きているのであった
今日は山羊の気持ちでチーズトーストを食べた

牛の乳は甘く

トマトは鮮烈な酸味があった

日々苦味の草を食んでいる身として

穀物の甘味は喉の奥に染みた

チーズトーストには自分 ....
小さな鳥居の向こうに小さな神様がいて

小さな手で手招きをする

小さな手で招かれた小部屋は実にボクの世界だったよ

全部ってこれだったんだね
西の山から

雪雲が湧き立って

雲の中は吹雪である

ひゅうと切断する音声は

麓の家々や人々や冬木立の何らかを切り開く

切り開いてはその間を通り過ぎていく

体も樹幹も枕 ....
数十年に一度の強烈な台風が通り過ぎた
当然のように数十年に一度の甚大な被害が出た
でも熟れた木の実を一番落とすのは時間
もっとも多く人を殺すのも時間
彼方迄林檎灼灼たり仏間かな

森羅山谷砂利念仏を云ふがまま

人凍てて竃の米と寝入る朝

残雪をざくざくと踏む嶺遥か

起きぬ間に雨ありたりし兜太逝く
小さな町の小さな家に
のっぽの君は生きていて
きゅうくつそうなテーブルで
ゆっくりポトフを食べている
小さな皿で二三杯
食べ終えると
君は背中を丸めて天井を見上げる

朝日の町の朝日の ....
誰かとした思い出より抱きとめたときにキスしたお前の髪なんだ

汗が染みる汗が染みるお前のTシャツから俺の胸に痛い

もしこのまま抱きしめたままで暮らせたなら消え去る前に結婚しよう

意外と ....
捨て石を書こう
ほらこんな形
見てごらん
ありふれてる
どこにでもある



誰かが、
僕が
君が



石を投げる




土煙
草の根
花びら
しも ....
君のいた街を歩けば今の君の温度が僕の体温になる お前の骨はとても細くて
俺の肉まで貫いていて
お前の肌はとてもキレイで
どんなものでも突き通せない
お前の骨はとても細くて
シミルくらいに痛いんだけど
白くて甘い肌のせいで
突き刺さらな ....
よのなかの電波の網の中にいてお前の音だけ手探りをする



胸底にお前の喘ぐ声がする風の音だと限りなく言う



遥かなる街でお前が笑っててお前を抱いて眠ろうとする
高速バスに揺られて
レモンチューハイをお前は口に含んだ
すぐに
朝焼けみたいに
お前の喉元から顔にかけてが
赤く
紅をさしたみたいになった
「まるで祭りの御稚児さんだ」と僕が笑うと
「 ....
月を抱き掻き鳴らす夜の床には冷えた体のおまえが眠る あなたが偉大であるためには
あなたはいつも盗み見る目で
あなたに向かい来る者と戦わねばならない
あなたが偉大であるためには
あなたは秋の穀物の匂いを
あなたの体臭としなければならない
あな ....
ひとつぶずつじぶんとおんなじ空間に砂利をつめたら動くだろうか



もししろい砂利が鍵ならぼくなどは鍵穴だらけのにんげんなのだ



陽が照って砂利のぼくらがわらうとき奥 ....
お前との夜は驟雨の下で身体の輪郭を描く蝸牛の足で

栗色のお前の肌は鱗粉でお前の愛は蝸牛で飾る

吾が胸は蝸牛で満ちて紫陽花の葉のきらきらを眺めている(指)
僕たちは独立している
確かに個人であって
どんなに近くで寝起きをしても
同じ窓からの朝日を浴びても
僕は僕で
君は君のままだ

僕たちは独立している
二人で生きて
どんなに子どもの寝 ....
散ることを急かされている梅の花よ紅梅なれば君も紅さす

公園のわきの草木は繁茂してふくよかなりし君と寝転ぶ

温かい君のからだを引き寄せてただ君の手の冷えたるを知る

色白き君が寝転ぶ真昼 ....
美しい雪は 燦々と降る
野にも山にも私の肩にも
佳き人の屋根にも
悪しき人の庭にも
慈しむように輝いて降る

美しい雪は 温かく積もる
芽吹く命を見守るように
枯れ枝の先にも
苔生す ....
 あなたが父親であるということなんですか。
 静かにそう言い放ったが、少なからず私は動揺していた。しかしそれを見せまいと、私はクライアントの顔を見つめた。クライアントは私の胸元を注視していた。予定よ ....
 雨上がりの部室は変な臭いがする。男だらけということもあるが、もう何十年も染み込んだ男の臭いが雨に押されて染み出してきているみたいだ。ただブロックを組み上げただけの窓の小さな部室のブロックは、梅雨と秋 .... 梅雨が明けたそうで
なにより

街を歩く

至る所で
白い携帯電話を手にした人を見た

どれもこれも白一色で
夏空の雲みたいだ

白でなければ
つながらない話があるようで
 ....
お前の家はゆるやかな
川のほとりに建っていて
細い路地だけが道である
川はかすかに早春の泥の緑を湛えている

その路地をお前は確かに歩き
お前の大きな背中にはいつも日が差している

お ....
性愛を投げ捨てるべし春の闇

「うち」という呼称は鳴るか水仙花

梅の花咲き極まりて白き肌

その胸に紅梅の咲く夜を知る

春のバス満員なれば風強し

ただひとつ桜が咲きて汁き夜
 ....
黒田康之(113)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩321/2/7 2:31
自由詩321/2/5 20:57
濁酒自由詩121/2/4 10:58
ないもの自由詩121/2/3 22:01
よくころすもの自由詩021/2/2 10:43
雷鳴自由詩221/2/2 2:04
山羊の気持ち自由詩221/1/31 17:09
山と鳥居と自由詩021/1/30 20:20
西の山から自由詩021/1/29 19:07
台風、過ぎ越て自由詩119/10/18 10:41
金子兜太先生追悼俳句118/2/21 5:08
のっぽのこ自由詩818/2/11 22:11
恋×(モニュメント)短歌317/8/27 1:45
捨て石自由詩217/8/27 1:23
遥かなる人短歌110/10/20 19:49
焦げちまった空の下自由詩210/10/8 0:21
つながる短歌210/10/8 0:00
菜の花自由詩510/9/17 9:53
短歌210/9/17 8:51
あなたが偉大であるためには自由詩010/9/16 14:03
八月「砂利」のおぼえ書短歌210/8/9 6:45
蝸牛三首短歌110/7/1 20:26
Independence Day自由詩010/6/30 19:50
春に短歌1*09/2/15 12:27
美しい雪は自由詩109/2/12 22:18
毬藻散文(批評 ...009/2/12 22:12
サイレン散文(批評 ...007/10/3 0:37
白い電話自由詩807/8/1 20:19
和子について自由詩4*07/4/8 17:51
哀憐俳句507/3/18 22:14

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