抱き合った人の忘れし革ジャケツ
息が白いのか煙草の煙なのか
白粉花エンジェルケアの脱脂綿
看護師に賀状書きたる子の瞳
病室の窓より毛虫焼くにおい
点滴の交換があり冬の霧
迅雷やカプセル型の内視鏡
広がりていきたる褥創花曇
吐血トッカータとフーガニ短調
院内の傷害事件蟻の道
水中花午前三時の仮眠室
病室に折り紙製の聖樹かな
採血の内出血や冬の虹
蝉時雨モニターアラームの幻聴
幻覚の離脱症状蛇泳ぐ
心電図の警告音や雪の影
病癒ゆ月下美人のひらきけり
シャワー浴介助やインド象の耳
桐一葉オー・ヘンリーの文庫本
研修医腐草化して蛍となる
菊一輪微笑む姉の一周忌
遠く聞く落ち葉踏む子のはしゃぎ声
長雨や語る昔の老夫婦
秋麗に言葉少なく過去を詠む
リハビリを支えたる腕クロッカス
雪の夜に激減したるリンパ球
回復期病棟まわる獅子の舞
肩車されたる患児銀縷梅
繰り返す入退院やおじぎ草
スピッツや看護師長のカーディガン
十五夜の沈黙したる水枕
薄着して診療経過報告書
乾きゆく汗や滅菌済みガーゼ
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【俳句】季語を含む17音律「5.7.5」の俳句と、その形式を崩した自由律俳句、無季俳句などの俳句作品のみ受け付けます。俳句批評は散文のカテゴリへ。
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