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うろおぼえの夜に
指を差し入れ
震えを聴いた
波に従い 従わぬ線
脚の動きを
讃えるまたたき
岩のはざまから
空を視る刃先
曇りと筆
曇り時計
器を ....
ところどころ消えかけた街
不確かで確かな
曇の上 曇の下
逆さの青と白の午後
ひろげた腕と
土を向く手のひら
ななめに明るい推力で
飛び越えてゆく水の跡
....
灰と水と 光と音が
道の行方を消してゆく
午後のむこうには何もない
午後のむこうには何もない
蜘蛛の巣をたばねた
冬の雨の日
むらさきと黒の目の
水たまりを見 ....
三角を転がし
水草の涙
地に触れて立つ
ひとつの辺
近い蒼と
遠い青が混在し
指は糸をつまめずに
夜を見送る
静電気と水彩
誰もが踊りを咎めても
....
夜の森を照らす川
影が放る光 光
光の轍を曳かれゆく
指の宙
黒い溝
風の下の風
洞を描く
迷いの羽
背中の寒さ
惑いの数だけ
灯はつづきゆく
....
ねじれた柱が
気層を持ち上げる
白と黒と昼
互いを
知らぬ光
穏やかな日には
忘れられた言葉が近づく
思い出されないまま
たたずみ 微笑んでいる
左右 ....
針くだく魚の血潮の銀河かな
手の甲で遠去ける度みどり湧き
さわりゆく棘のままただ融ける雪
夜を剥ぎ夜を接ぎ足す光かな
振り仮名が ....
天に飽き天かきむしる鱗雲
おまえには冬しか居らぬしるし刺す
鉄を裂き鉄かつぎあげ冬を打つ
とどめからとどめに至る永さかな
仮 ....
鼓動は通り
鼓動に還る
夜は
そこに無いように在る
夜の坂を下り
振り返る
夜を作るもの
何もなさを照らす
黄金と黒の
二重の円のなかで
せめぎ ....
音を持たずに水を切り
物語を捨てる
死神に無視され
今日を今日に置く
悲しみは増し
枠は増さず
光は増して
片目を覆う
朝は白に 朝は茶に
まばた ....
土のにおいの月がいくつか
夜から朝へと転がってゆく
鏡を造る鏡
暗い水と溝の道
星と星のあいだのむらさき
へだたりと境の腕
羽と羽のあいだに起ち
剣のように
....
水に噛まれ
午後に噛まれ
音は深く
さらに深く
首輪をちぎり
血の手形をまとい
空へ空へ持ち上がる径
棄てられた営みのかたわらをゆく
冬へ降る冬
....
わたしはどこにもいません
だからどこにでもいるのです
わからないまま
刻みつづけているのです
鳥滴光声
距離もなく
ただ在る
手水原香
数もなく
ただ鳴る
壁もなく窓もなく
ただまばゆく
既 ....
手首をすぎる風の先に
向かい合う双つの枯れ木があり
雨に雨を降らせている
夜が増すごとに
熱は辺をゆく
遠くも近くも ただ打ち寄せる
朝の裾が笑い
見えな ....
だらしない服が
花のように香る
からだの線が
浮かんでは消える
あなたは
無言にたなびく
降る曇
くちびる
とじたまなこ
うしろあたま
ひとつかがやく
....
流れついたものが
砂になりながら
岩とこだまを見つめている
鉄の文字 糸の文字
海をつなぐ
むらさきの道
夜の上に呼ばれ
夜の上に呼ばれ
いつのまにかもどり 忘れる ....
歯をみがく
歯のすべての面を
みがくように
歯をみがく
いくら丁寧にみがいても
数時間後には
忘れている
だからこそ
細かいところまで幾度も
歯をみがく
....
風が来て
傘を川に遊ばせ
緑の拍手をする
突然の雨に
水鳥さえ流され
夏は終わる
けがれあるものも
なきものも
小さな痛みを呼ぶ
....
こうやって部屋のなかから窓の外を見ていると、雨の中でしか生きられないけものになってしまったような気がする。穴ぐらのなかで、ひたすら雨を待つ。エサはあるのだが、自分のツメで獲物を引き ....
夜のむすめ
生まれては
光を指して
おとうさん
火の花です
線の川です
おとうさん
夜から夜へ
伝わります
おとうさん
めざめます
ふちどりが
....
右耳に車は聞こえない
左耳に降る金属音
追い抜くたびに空は笑う
切れぎれに拍手は過ぎてゆく
飛び去れ
飛び去れ
ひとりと
ひとりの道
ひとりの自転車の他はみん ....
にわかには信じがたい歌と指によって
けだものは のけものは 降って来る
目にあまるけだもの
手にあまるけだもの
首を差し出せば
からみつくけだもの
出た ....
棄てられた道のざわめき
野に沈んだ鉄の轍が
震えるたびに運び来るもの
蒼と紫の光が軋み
激しく小さな
数え切れない夜になり
雲を鳴らす音とともに
草の波をつくりだ ....
夜の灯りに染まり連なる
紅くにじんだ雲の前に
誰もいない建物がつづいていた
記憶と 事実と 交響と
淡く静かな流れに沿って
目に映る火と
映らない火の
か ....
午後に目覚めた双子の猫が
雨のむこうのはばたきを見ていた
夢の音から目をそらし
見つめた先にはばたきはあった
はばたきは薄く光を帯びていた
ゆっくりと近づく別の ....
魚の群れが夜を飛び
鱗と涙を落としては
何も無い地を焼いていた
火の端々が鳥になり
さらに暗い夜へと去った
雲と砂の波のなかで
魚は涙を閉じていった
白と ....
花が居て
狂いたい
と言った
なにもしてやれないので
川にうつる枝のなかに立ち
はらわたの森をひらき
ここにお入り
と 言った
蝶が来て
狂いたい
と言 ....
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