原わける指
木立 悟





夜の森を照らす川
影が放る光 光
光の轍を曳かれゆく


指の宙
黒い溝
風の下の風
洞を描く


迷いの羽
背中の寒さ
惑いの数だけ
灯はつづきゆく


弾くなといっても弾くものがあり
海はあふれ
水を連れてゆく


空を視て動かない花のかたちに
鳥の骨は横たわっていた
砂の上 聞こえない
足音の群れ


視界をはみ出し たなびく原野を
幾度も幾度も見わたしながら
分け入り よろめき 進みゆく子
かかえきれぬほどの仮面を抱いて


めまぐるしく遠去かる青空を
螺旋の逆に追いつづけ
路上はどこも
口笛と警報に満ちてゆく


写真のなかに閉じられるもの
写真のなかで遊びつづける
迷いと惑いをなぞりながら
鍵と錠を混ぜながら


塩の教会も 冬の文字も倒れ
つららが土につく頃に
夜は静かに子の手をとり
原の終わりへと踊り出す


木星のある夜明け
終わらないひとつの夜の行方
遠い寝着の灯の背中を聴く



















自由詩 原わける指 Copyright 木立 悟 2011-12-31 22:39:24
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