雨へ 雨へ
木立 悟





うろおぼえの夜に
指を差し入れ
震えを聴いた
波に従い 従わぬ線
脚の動きを
讃えるまたたき


岩のはざまから
空を視る刃先
曇りと筆
曇り時計


器をまたぎ
氷を聴き
緑が緑にほどくもの
刻印と署名と
血による封と


片目と片目で夜になり
路の火花
見えない電車
乗客の尾が
影と石を梳いてゆく


弔いや逆さの名を過ぎ
滴は落ち
音は残り
音を音にわたし
手のひらを重ね
空へ空へ向かい


器に触れ
器を見つめ
水を指す影を飛び越え
飛び越え


燃える樹をくぐり
異なる地図をつなげ
常に上半分だけが荒ぶる原野の
涼やかな産毛の径を泳いでゆく






















自由詩 雨へ 雨へ Copyright 木立 悟 2012-03-07 09:53:31
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