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 その日は夕方までに出張先を二箇所回る予定だった
 庁舎の駐車場を出発した公用車のバン
 
 走る 湖岸道路から
 雪化粧した比叡の山陵が見えて
 ハンドル握る主幹へ助手席の私はたずねる ....
 赤茶けた りんごの芯を

 みつめていたら

 なにもかもが


 こわれかけた 白さに

 
 その薄さよ


 わたしは

 あなたの胸を離れなければならな ....
 「朝顔を咲かせてきたの。」
 始業時間のチャイム鳴る前、
 いつもより遅れて出勤した私は
 理由尋ねる彼女へ答えた

 君よ 開け
 線路わきの道沿いで
 私の手が一輪の花へ伸びた
 ....
 日本海に春の来た時は
 静かに 静かに
 目をとじてみると
 生命ない小石が激しい息吹をもらす

 波 寄せる毎
 丸くなり
 カラカラ カラカラ と
 妙に乾いた音たてて
 踊り ....
 
 ジャンジャン横丁を
 制服姿の女子の二人乗りが突っ切って行ったのは
 もう十数年も前になる

 後部に座る子の脚が長いのか
 見送ると大胆に
 自転車の幅からすんなり伸びる白が左右 ....
 
 JRの車輌、
 扉の傍に立った私の向かい側にいて
 身を寄せ合う二人の男性
 
 つい見惚れてしまう私の目には
 まるで月のもと
 ただ蒼白く静まりたる世界で
 澄んだ瞳に引きし ....
 庁舎の旧館は通風が悪い
 配席の奥まっている課長のデスクまで
 冷気は届かないから
 窓を 通常開けておきます

 出張先からまだ還らない課長に
 明日午後の会議の資料を机上へ置きに来た ....
 朝のスープの
 セロリの香り

 悲しかった様な気がする昨夜の夢を
 おぼえていない 朝の靄
 一匙ごと かるくスプーンを動かしていると
 一口ごと すくいとられて胸の中へ流れこむ

 ....
 六月はもう
 むし暑く
 医療用コルセットを巻くと
 腹部が汗でむれる

 窓の外を見ても
 空はどんよりと深い水の色
 濃すぎる緑に
 むせ返りながら
 ものうく

 大気は ....
 ある晴れた日に一軒家の庭で
 赤い五枚の花片をしっかり開く大きな花を
 母と見たのは昔の話
 花の名前が思い出せずに 覚えた小さな胸さわぎ

 茎が真っ直ぐに伸びた葵科の花
 「この花は ....
 
 仮設足場組立工事が始まると 
 いつの間にか ダークグレーな防音シートは 
 しのつく雨に暗く、まるで
 封建制度の時代にたてられた牢獄の様に
 そびえていた

 からだのモヨウが ....
 会社の敷地内にある貯水池に
 六月の雨が
 ひたすらに降る

 ヨシが競いあって緑茂らせ
 水中は水草の藻やアオコで光も遮断された
 濁った水面に 呑みこまれていく雨の音

 空もな ....
 
 熱帯植物のあでやかな緑生い茂る中に
 消えていった友人の後ろ姿
 
 呼吸の度 緑の香が私の心染めてゆく

 樹々の名前など知らない
 私の身体中が
 心中が
 熱帯樹のしめり ....
 水面を埋める
 蓮の葉が
 大きな葉っぱばかりでなく
 伸びた茎の先々で
 小さな葉も立ちあがり
 陽を透いて
 静かになびいている

 まるで{ルビ摩周湖=カムイトー}の様な水辺に ....
 輝いた肌を白シャツで包み
 黒い目を持ち
 広い肩を持ち
 その人は今日
 目の下や口の周りに軽い擦過傷があり
 絆創膏を貼っていました

 柔道部に所属していて黒帯なのは知っていまし ....
 僕の隣に立つ女は長身でショートカット
 切れ長の吊り目が奥二重
 パーマのかかった短いまつ毛
 手に布製のブックカバーを持っている

 ああ、どうして彼女は
 こんな下地の色に淡雪の様な ....
 
 日の傾いたまち角で
 ふと立ち止まってながめ見る
 昼顔
 香り無く素っ気ない素振りに見えた薄ピンクの
 一日花

 そのアナタが一瞬だけ、わたしへ
 ふるふるっ と 照れくさそ ....
 灰色の空に
 厳しい線を画いている古城の天守
 何百年の年を支えてきた様に
 あなたは私へ
 愛を 支えようとしてくれている

 それなのに
 私は人の心を
 見つめられ
 ない
 ....
 熱いゆげをわけて
 ちりれんげですくって
 ふう ふう 吹いて食べるのです

 舌の上にのせた豆腐が
 かすかに香って崩れる時
 ふと時間は逆戻り

 勤め帰りのスーパーで
  ....
 さっきから私の背を追ってくる
 オヤジ節の様な咳払い
 切れない痰のしつこさに男はどんな顔しているのだろう

 振り返り見ず 歩く私の前にはさっきから
 くるくる回る
 まぶしい笑顔のデ ....
 京都駅構内のアスティロード商店街を抜けて
 おもてなし小路を行くと連れの彼女が独りごちる
 「うわ、六百十五円やて!」

 何事かと 彼女の視線みると
 老舗珈琲店の店先ショーケースにはり ....
 電線に冬の風がやって来た夜
 その女と逢いました
 赤い上衣も黒いスカートも
 くたびれて見えました
 デブッチョの男の腕にすがりながら
 女はキャラキャラと笑いつづけていました
  ....
 比良の山を
 汲みあげようと柄杓星
 ゆったり横たわる りゅう座の下に

 カシオペアの東には
 アンドロメダがのびやかな弧をえがき
 めぐる星座は三百万光年の彼方の大銀河を抱いて
  ....
 よる
 音が 音に渦をなし
 風が風との 
 谷間をなして
 私が 私のゆめを捨てる

 二十三時ごろ だったと思う
 玄関先でスニーカーを履いていたら
 「ノンちゃん、僕だけど。」 ....
 ビルの谷間に皐月風
 それは歩道の正面から運ばれてきた
 若い男の声だった

 パパなお前のキモチ分かる。分かってるから今日ユラちゃんに謝ろうな。

 ギョロリとした目に たらこ唇
  ....
 沼の畔に立った時
 私の真下に見知らぬ女が居た
 山を 仰いでいる女が居た
 水草の花は白く咲き
 深いモスグリーンの森は夏なのか
 ひんやりと うす暗い
 私の真下にいる女は
 口角 ....
 今年は季節の巡りが定まらず
 戻り梅雨に降る雨の
 街で 蝉が鳴いてます

 初夏も過ぎると その年の
 誰かにとって一番はじめに聞こえた声、
 その方向へ視線を投げた人もいるでしょう
 ....
 今夜は生ハムのサラダで
 軽めの赤ワイン
 Cotes du Rhone を開けて乾杯といこう
 仕事をあがってから一人で
 デパ地下のデリカフロアへ出掛けてみた

 五月のゴールデンウ ....
 高架橋の手前で母子とすれ違う
 歩道へ吹き出してくる走行車の反響音
 二車線道路が湖岸の県道まで下っていた

 すれ違った時
 赤子はカラフルな膝掛けに包まれていた
 ちょこっとだけ小首 ....
 その日の空は画用紙に、水彩絵の具の青を薄めに溶いてから
 ほんの少し白を混ぜて丁寧に塗った様な色だった。
 山裾を走る県道の側に建つ総合病院で、予約の外来診療を終えた僕は
 急な傾斜が緩やかに ....
そらの珊瑚さんのリリーさんおすすめリスト(213)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
阿吽の呼吸- リリー自由詩4+*23-6-15
別離- リリー自由詩3*23-6-14
金網- リリー自由詩3*23-6-12
橋立にて(「小石」改訂)- リリー自由詩7*23-6-12
新世界にて[まち角6]- リリー自由詩6*23-6-10
ゼウスの子[まち角5]- リリー自由詩3*23-6-10
ひぐらし- リリー自由詩4*23-6-9
ひとつの歌- リリー自由詩4*23-6-8
身じたく- リリー自由詩4*23-6-6
紅葉葵[まち角4]- リリー自由詩6*23-6-4
ニュータウン[まち角3]- リリー自由詩4*23-6-3
蛙の王様- リリー自由詩3*23-6-3
温室- リリー自由詩5*23-6-1
蓮の葉- リリー自由詩3*23-6-1
銀紙- リリー自由詩4*23-5-29
グラデーション[まち角2]- リリー自由詩7*23-5-28
昼顔[まち角1]- リリー自由詩6*23-5-28
曇天の城- リリー自由詩3*23-5-27
湯豆腐- リリー自由詩10*23-5-26
- リリー自由詩3*23-5-24
アップルパイ- リリー自由詩8*23-5-23
寓話- リリー自由詩3*23-5-22
銀河- リリー自由詩4*23-5-22
留守番電話- リリー自由詩5*23-5-9
メドゥーサの瞳- リリー自由詩5*23-5-8
沼のほとりに立った時- リリー自由詩4*23-4-10
初鳴き- リリー自由詩3*23-4-6
化粧室- リリー自由詩3*23-4-4
高架鉄道- リリー自由詩7+*23-4-3
白椿- リリー自由詩9*23-4-2

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