ジャズライブにて[まち角23]
リリー

 
 京都三条大橋から
 どう歩いたのか 黄昏時
 そこは照明も暗めな地下の酒場
 会社で 見かけたことのある
 顔が目につく

 チケットが一枚余ったんだ、と言う
 上司から強引に誘われた 初めての
 プロの生演奏が聴けるジャズライブ
 「ね、音が塊になってぶつかってくるでしょ!」

  空間に、轟く熱気
  心臓つかまれる様な振動

 たじろぐ体が 
 円卓で隣席のジントニック傾ける彼と
 いつの間にか 接触してしまう
 それすら二人
 気にならず
 演奏者とスウィングする巨きなリズムの
 荒風に吹き散らされる
 わたし という一個

 まるで地球の引力の届かない所に立って
 地上を見下ろす
 そこには愛した男の顔などない
 小さな星の姿があるだけなのだ

 ようやく一人になれて

 そして 彼方へむかって立とう
 どの星の方向に飛び立とうか
 永遠にさまよいつづける為に


 

 


 


自由詩 ジャズライブにて[まち角23] Copyright リリー 2023-08-14 09:59:00
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