私にやさしくしないでください
やさしくされることになれていないものだから
胸のあたりがやけにこそばゆくて仕方がないのです
私にやさしくしないでください
あなたにやさしくされるたびに
....
色鉛筆のケースの中で
弟が眠っている
一番落ち着ける場所らしい
父と母はテレビを見て
時々、笑ったり泣いたりを
繰り返している
ケースから出された色鉛筆で
僕は絵に色を塗る
....
今日も君は
大型の想いを飲み込みながら歩いてゆく
そんなには無理ではないかと
私の心配に気付かず通り過ぎる
ホームにつくと開いたドアの中に
ぎっしりヒトがつまっていたから
後ずさりした ....
傷ついたふりをして
他人の心を踏みにじるのは
いつでもおまえの手口
被害者面して
本当に弱い人間を打ちのめす
見ていないで助けてくれ
座ったまま小さく呟くだけで
誰の心に ....
僕の彼女は半月に一度、まるで発作を起こしたかのように暴走する。これは別に大げさな言いまわしなどではなく、「そのとき」が来ると、彼女は急に地面にうずくまり、体をふるわせながら獣の咆哮を響かせるのだ。目 ....
てんぷらやのごしゅじんが
きょうも
てんぷらをあげている
あきないのだろうか
きのうより
きょうが
おいしくなっている
あきないのだろうか
てんぷらやのごし ....
いっぱしのおとなになりてえ
と泣きながらうそぶく四十男を
わたしは胸の中に招き入れる
いっぱしのおとなはつまらないわ
と慰めてあげることも
いっぱしのおとななんかくそくらえ!
といっ ....
かおりのいえの
あかりが
まだついている
あいかぎで
かおりの
いえにはいる
くることを
しっていたのか
りょうりを
つくっている
ゆめかも
しれなかった ....
まりが
はずんでいる
えきのホームで
けいたいでんわを
いじりながら
まりが
でんしゃにのる
まんいんでんしゃに
おしつぶされそうに
なりながら
まりが
ころ ....
沼の中へとダイブしたい
白いワンピースが泥色に変わる瞬間を
この目にしっかりと焼きつけて
刻みこむんだ
服に肌に心に
生きてゆく為に必要な汚れを
泥んこになった ....
朝のまぶしさで
目が覚める
となりには
あなた
鳴り響く
目覚ましの
アラームを消す
あなたの手
ねぇ
あたしは
あなたの胸に
手をあてる
あなたの
大 ....
やがて忘却の海辺に打ち寄せられた白い欠片、
朽ちた流木や貝殻の転がる旧い別宅の荒れ果てた庭に
ある日。螺旋に絡みつく二本の蔓の梯子が垂らされていたが
それはあたかも、私には儚い夢の終わりのようだ ....
鈍い響きの衝突音がふたつ街路のむこうで響いて
お前は身をすくめて長いことそのままで居た
銀色の月あかりが割れたボトルを煌かせて
呟きみたいな小さな反射が
壊れた夢とシンクロして跳ね ....
見たことのない言葉で
あなたと話す
関係のある足音と
関係のない足音の狭間で
時々、古い橋の匂いがする
目を凝らすと橋の形はあるのに
渡る人々のため息が聞こえてこない
....
僕はケータイで
ニルヴァーナの
「十七歳の娘の匂いにむんむんむらむら」
を聴いていた
そうしながら
いつの間にか
旦過市場の異次元に迷い込んでいた
魚屋で一匹の
真っ赤な
鯛が
「 ....
数字
数字を祝うことはばからしいことだと思っていた
東九条でもよおされたある晩の鍋会のこと
とつぜん友達が少しはにかみながら
今日は数字の日なんですと言った
二十八回めの数字の日なの ....
ああどうしよう
うちの母さんの
消したい過去が父さんのこと
ああどうしよう
うちの父さんの
消したい過去が母さんのこと
恋愛に 生活に
人生につまずいたって
そう言わないで
....
駅で歌をうたってる
人の声を私は知らないよ
そこだけ光っているような
空気のざわめきを
横目でいつも通ってる
今日も確かに
帰ってきたの合図にしてる
ギターと共に
揺れる君の肩 ....
無防備な網膜を焼き尽くすように
太陽が全力で燃え盛るなら
私は夏の夜になろう
草いきれの温もりと一番星の子守歌
小さな背中をくすぐる風で
零れた涙を何度でも拭こう
私の祈りは雲にな ....
マヨルカ島にふきよせる地中海の青い風をすくいとる
ピアニストの手のひらは白い
葉叢を束ねる小鳥のさえずりに頬ずりをして
月光にきらめく細い爪をみつめていた
風の家にあ ....
テンションが上がってくると
ヂっとしていられなくなって
後先見ずに飛び出してしまう
僕のやんちゃな意識は
行き当たりばったりに
モノやヒトにぶつかって
喜怒哀楽を撒き散らしながら
僕の内側を言葉 ....
「泣き腫らした家」
その家は号泣する
時間を失った丘陵にたたずみ
家主の帰りを待ちわびながら
その家はときどき夢想する
彼女が門扉を開き
飛び石伝いにやって来るさ ....
心の病に泣く君の
病とはなにで
どんなことで取り除けるの
震える肩を
前にしてなす術のない
自分が小さくて
生まれる前の
私たちにならきっと
この朝は素敵だろう
それほど ....
気がつきて妻を呼べど姿なく勤めに行きたとうなづきにけり
父も死し母もみまかり今日の日は一人見守るわが行く手かも
立ち上がりス-パーの椅子によりて久方の書を読まむかな
溺れかけたのですか
ありもしない愛
などと/暗く
底のないつぶやきを
ぶくぶくと、泡と海藻だけが纏わりついて
よく見れば
そこに近づいてきたのは海蛇で
あなたは必死に藻掻 ....
生まれた家をさがしに
旅をしていると
雨が降ってきた
私は寂れた商店街の
農業用品店に
傘を買うために立ち寄った
ごめんください
というと
見覚えのある人が
店に ....
母さんが
土鍋出したら
冬支度
古ぼけた
駅の路線図にある
黄 赤 青 緑のライン
一番先っぽのほうは
背伸びをしても
よく見えないが
「とりまる」
と書いてあるように思えたから
「とりまる」「とりまる ....
明日はきっと晴れるよね
そう願わずにはいられなくて
ふと手を休め振り返る
自由気ままに暮らしてきた日々
愚痴っぽくなってみたり
ときには人恋しいくせして無口になってみたり
....
額縁だった庭に景色が戻ってくる
寂しい程に整えられた装置は
演歌師が
おっぺけぺーを
捻る、
舞台であった
もうすぐ演歌師がいつでも住まう
庭になる
説明のいらない
「ああ ....
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