すでに巣食う私の心には
あまりにも重い言葉だと思うのです
色に例えるなら、情熱的な赤
でも、静かに降り続ける霧雨のように
柔らかくこの手を濡らすもの
傍から見れば「幸せの象徴」のよう ....
あおい蕾が
春の嵐にぽきん、と折れて
公園のくずかごに捨てられている
花の命のありかがわからなくて
こわごわ抱いて家に帰る
光に翳すと
やわらぎながら
ほどけてゆく部屋
輪郭をも ....
# プロローグ
太陽の陽射しとご主人様の肌触り
どちらもあたたかい
ひざの上で寝たふりをする特技は
生まれついたもの
薄目をあけて見わたす庭はいつも
かがやいていて眩しい
さあそろそろ出かける時 ....
声が聞こえる
とても遠いところから
すぐ近くから
ここにいるよと
声が聞こえる
わたしの隣の席から
贈り物が届いている
箱を開けると
欲しかったものばかり
微 ....
ねえねえねえってば
私がパソコンの画面指差してるのに
あの人は我関せずとばかりに出かけてしまった
公園の桜でも眺めに行ったのかな
パソコンの画面に目を戻せば何だか騒がしい
う〜ん ....
昨日の上に
淡々と
今日を敷き詰めていく
清々しさ
今日の上に
黙々と
明日を積み上げようとする
凛々しさ
ただ
目指すことだけを
目指す
雑り気のない
まっつぐな力に
憧れてしまう
君の心に特製ギブス
命の色を消しましょう
痛い、痛いと叫ぶなら
治るまで傍にいてあげる
真っ二つに折れた心
きっといつかは元通り
君の心に特製ギブス
流れる紅(あか) ....
あの小山のてっぺんの公園に
十七のぼくは二十六の女と上った
ふとくてぐねったまっ白いアスファルトの道
したで買ったハンバーガーは
チーズの足腰のない冷えた匂いと
ピクルスと湿っぽいパンの淋し ....
青い雨と蛍光灯の光が見える
朝めざめてまだ空いている車中で
ぼくのまだ冷たい鼻を中心に
きょうも世界を考えはじめている
命を使いきることを課していたら
不倫なことはしたくなくなる
どう ....
{引用=からだの奥から
たらたらと
わたしが滴り落ちていく
産声とともに泣いた日の
わたしの初めの一滴を含んだ雨で
シーツを洗いたい
足跡にそって
てんてんと広がった池を
みじめな ....
小学校の体育の時間に
逆上がりができなかった
隣りの席の女の子が休み時間に
鉄棒をしにいこうと誘ってくれた
ぼくらは二人で
校庭の隅に立つ鉄棒に向う
鉄棒は低いのから
順番に高くなってい ....
花冷えの雨はやむことがなかった
低い山にガスを這わせて
四分咲きの桜花を辱めて
花冷えの音がやむことはなかった
電車が運んでくれるそのさきに
灰の街が自意識に苛まれて ....
いくら考えてみたって、それは
途方もなく大きな壁だし
やっぱり誰かの覗き穴なのだ
漏れてる光は淡くて黄色くて
きっと幸福を形にしたものなんだけど
爪あとに似た影も見えるね
だからき ....
これって何かの間違いだったりして
夕方近くに先日面接受けた問屋さんからの着信
胸の震え抑えつつ電話に出てみれば採用しますの吉報だった
他の誰かと間違えていないよね
いつもの野良猫に ....
三角耳を
クルルと回して
素知らぬ顔
肉球で
ソロロと歩んで
知らぬ間に
高い所から睨んで
狭い所に詰まって
暗い所を走って
温い所で蕩ける
甘えたい時にだけ
フワワと膝の上
嫌な事すべてに ....
鳥かごの中で
小さなキリンを飼ってる
餌は野菜だけでよいので世話が楽だし
時々きれいな声で鳴いたりもする
夕焼けを見るのが好きで
晴れた日の夕方は
日が沈むまでずっと西の空 ....
あの遠くに見えるのが、
ダウンタウンのビルの群れ
ガラスの建物達が、光りを吸っている
白い家並みが黙っている木々の中
赤煉瓦の屋根は、みなが城と呼ぶ屋敷
尖塔を空に向け
放ち、教会のよ ....
雪の降り積む
季節の頃に
じっとつぼみを
育んできて
やわらかな光が
いま やさしく包む
きょう、桜の花が
咲きました
これからずっと
幾年も
ふたりでいつも
過ごします ....
お月さま取ってきてよ
些細なことでボタンを掛け違えて
へそを曲げてしまった私に
ちょっと待ってろよ
今、長いハシゴ作っているから
そんな我儘を言ったことも
すっか ....
扉が
しずんでしまう前に
瞳をひらく
決意をしよう
内に
あふれる
海原をのがれ
足を
こわごわ立たせる場所が
小さくてもいい
流れ着いた
この岸を
いまは
瞳に焼き ....
正義を貫き通す
しかし正義の逆は
悪ではなくそれもまた別の正義であった
戦う毎日倒す毎日
英雄は今日も人々を助ける
けれどその一方で悲しむ人もいるであろう
誠に不釣 ....
ざぶんざぶん、ザブンザブン。
引いては寄せる波の音
月が見える。
潮の臭い
命の根源
懐かしい風
ここから全てが
はじまった。
時間が止まる
自分が消える
宇宙と繋がる
....
高架線の流れに押し戻されつつもドア際へ体を寄せれば
やがて天井桟敷の建物が左手に顕れる
夜勤明けの尻ポケットには馬券の束
そして耳に挟んだ赤鉛筆
「穴場に手を突っ込んだ勝負馬券は当然に ....
台所に立つ祖母に声をかけた
今日の夕食の相談に
太陽が少し傾いて窓からこちらをのぞいている
ぼそぼそと話すと
野菜室からは季節外れのナスが三袋
びっくりして首を傾けると太陽と目が合った
....
花と線香と手桶を持って
目印に辿り着き
うろ覚えの作法で
てのひらを合わせながら
ついでに
貴方達のことを少し想った
そうだよ
罰当たりな僕は相変わらず
此岸のモラトリアムを
見苦しく這いずり回 ....
台所に転がっていた
折りに入っていた桜餅は
ちんまり小さくて
一口でも食べ切りそうだ
桜色が濃すぎて
鮮やかでキッチュで
どう見ても体に悪そう
だから少しニヤけながら食べよう
....
長い間、咲かなかった
植木鉢のクンシランが数年ぶりに
草の両腕をひろげ
橙色の花々を、開き始めた。
レースのカーテン越しに注がれる
日のひかりの内に、今はもういない
在りし日 ....
気づきませんでした
知らぬ間に
時を なくしていたのです
one hour ahead
そんなときはきまって
静かに 自分を抱きしめる
そうあることが、あたりまえなら
失うことな ....
ピエロの仮面を被っていた理由を
楽しくなかったからと言ってみたのなら
つまらない嘘をついたことになる
どうせかっこつけるんだとしたら
不器用な人間だから、と漫画の受け売りをしていたい
そ ....
夕暮れに
濡れた雨傘がぽつんと一つ
夕陽を浴びて
柔らかなオレンジ色に染まり
沈みゆく太陽を見て
何を思うのか
忘れ去られたかのように
壁に立て掛けられた様子が
どこか寂しげに見え ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10