年末の気忙しさに閉経後の人生を考えてみたりする
それはあまりにも取りとめなくて
生理用品の買い置きはどうしようかとか
明日から生理用ショーツ穿かなくて済むのねとか
不幸中の幸いにして生理痛とは ....
黒い河の向こうを

電車の明かりが渡ってゆく

あと6時間もすれば

この街は放射冷却で煙れるだろう

置き去りにしたのは

ぼくの心、それともきみの心のほうなのか

あの電車 ....
すべてを失ったはずだった

あれから家に辿りつくまで幾度と無く転んでしまい
死装束にと亡き父に誂えてもらったリクルートスーツ着てきたのに
あちこちに鍵裂きを作ってしまった

死への船出がこ ....
私の悲しみが
雪となって落ちてきた
ひらひらと
黒い髪に休むように
静かに
手のひらの温もりに迷い込むように

いつまでも
止まない
白い悲しみ
どこまでも
染めていく

 ....
わたしがうさぎだった頃
この世は赤いもやがかかっていた
花びら一枚にも手が届かないので
うつむいてありの行列を眺めるしかなかった


わたしがひなどりだった頃
飛び立ちたくて仕方がなかっ ....
たったひとつの恋文
それは今
長期保存用に加工されて
クローゼットの中で眠っている

わたしは父と
ヴァージンロードを
歩くつもりは
さらさらなかったのに
どうしても歩かせたいと
 ....
マッチ売りの少女にでもなった気分で
その鍵穴を覗くのがわたしの日課となってしまった

この街へ引っ越してきた当時はタバコ屋さんだったトタン屋根の並び
ちょっとしたお屋敷風の黒塀に
その鍵穴は ....
きみの言葉を聴いていなかった

ぼくによろめいたきみの寂しさを

聴いていなかったからごめん

サイゼリヤの駐車場で

ホテルにいくまでの時間を過ごした

きみはお父さんのことや
 ....
見果てぬ夢のカーニバル

砂にかいた城郭の呪文

寄せてはかえす波の調べに

なにを重ねてなにを惑う


きみの瞳に恋している訳ではない

きみの瞳に乾杯したい訳でもない

 ....
葉擦れの音を君と
芝生に座って聴いていた
かなしみは悲しみの密度で
虚空を舞う飛行船のように

愛されたいと誰かが言った
僕たちは鼻先で笑った
ここにいるそのことの偉大さを
認めない愚 ....
あどけないズルさや

さやかな正義感が

生まれては消え

生まれては消えしていた

ぼくらの気持ちは

さらにどこへと消えてゆくのだろう


友よ

永遠など

な ....
人を
傷つけて
何も感じないのは
とても悲しい

世の中は
信じられないようなことが
たくさん
目の前に起きている

人の
痛みも
わからないのは
自分の痛みも
わからない ....
失ったもののかわりか
たくさんの柿をもらったので
皮をむいて食べた
柿は
熱冷ましと聞いたような気がする
それならちょうどいい
微熱が
完全に冷めるように

一つ灯りの台所
考え ....
夜を雪がゆっくりとゆく

フケのような

ボールが止まって見えるような

それが地球の速さなら

自転がとっても速いような


女の泣いている気持ちは

少年のとまどう気持ち ....
宵闇に包まれた路地に建つ
戸建住宅の玄関前に
一匹
猫が座っている
しゃんと背筋を伸ばして
正面を見据えて
その確固たる存在感を
僕は
しげしげ見ながら
通り過ぎる
どこ吹く風とい ....
怖いんでしょ?
他の人は気付いているのかな
あなたは恐れを抱いている時には
微かに瞼が震えるんだ
その震えは
そっと抱きしめると止まる事を
髪を優しく撫でると止まる事を
そして何より
 ....
努力をすればかなうと思わなかったけれど
あなたには私がついてるって
言ったあなたがあまりにも
疎ましかったから努力しました

がんばることで もう
あなたについていてもらわなくていいように ....
もっと話を聞かせてくれませんか

そうしたら、
あたしは、言葉のあいまに置かれた
なだらかな読点【、】に背をもたせ、
気まぐれに口をつぐむあなたの 数知れぬ句点【。】の
小さなその ....
北風が肌をかすめて冷たさを置いていく
そんな季節になりました
お元気ですか

わたしは少し厚手のコートをはおるようになりました
相変わらずのブラウス姿にカーディガンを重ね
冷える手先にはカ ....
僕と君とが引かれあった
その引力は
桜散るほどのちからで

電車の踏み切りで
隔てられた思いは
初恋の思い出

春の訪れを教えてくれた
ひとひらの桜の花びらを
失くしてしまわないよ ....
あかぎれた手の甲は膝のうえに重ねたままで
ふぅっと深くため息をついてみる

シャッターを下ろした売店脇の柱に掲げられた時計は11時55分過ぎを指していて

どうやら今夜もフェリーは出航しない ....
地平線の彼方に大きな夕日が沈む
地平線の見える大地など、僕の住んでいる街には無いのに。

無いのだが、地平線を僕達は確かに感じとることができる
感じ取ることができるので
僕は地平線に向かって ....
木枯らしがからからと乾いた音を立てる
あらゆるものの輪郭がくっきりと描かれ
移り変わる季節への感傷に浸りたいのに
冷えた手は無意識のうちに摩擦を起こし
細胞の根元から発信される欲求を満たそうと ....
家に静けさが降っているとき
五人の家族の顔は
お互いそっぽを向いている気がする
わたしはひとりで居間にいて
天気が悪いからって
掃除機をかけようかどうか迷っている

母は体調が悪 ....
珈琲の苦さを知ってから
あなたの良さがわかった気がする

恋というのと
終わりというのと
美しいというのと
並ぶようで並ばないんだ

時折り衝動的に泣きたくなる
お気に入りの ....
気付かない振りしてるだけで
わたし、とっくに気付いているんだ

夕食後の洗い物とかしている最中
わたしのバッグのなかを探っているのを

縁起良いからと買い求めたガマグチから小銭抜いたでしょ ....
{引用=off



部屋の明かりを消しても
真っ暗にはならないんだね。
夜たちからは、もうとっくに
ほんとうの夜なんて
消え去ってしまったみたい。

街灯の光がカーテンを透かし
 ....
天気の良い
朝方だったかしら
母が
庭の小さな一角に
ありがとうの種を
植えたのを見た

それから
気になってはこっそり
母を
見ていた
芽が出て
茎が伸びて
母の背丈を ....
家を出て
知らない町にやって来た
秋の雲はうすっぺらなんだと
空気の軽さに
気が付いた
やっと
上を見ることが出来たんだ

さようなら

ありがとう

あなたと過ごした季節は
 ....
台風の進路
関東地方を過ぎれば
どうでもいいらしい
全国ニュースでは扱われなくなった

首都が無事ならそれでいい
むかしからの考えらしく
第二次世界大戦で敗北した
ある国は
開発に成 ....
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