貘の食べ残した悪い夢が
きみの唇のまわりに散らかっている朝
窓越しにみえる庭は 素晴らしく綺麗だ
気丈な松の樹に 少しだけ雪がかぶさって
玉砂利は少女のごとく濡れ わたしたちを手招いている
けれどもきみは眉をひそめて べつのものに思いを巡らす
顔の前で手を組み コーヒーカップのそばに心を置き
なにかを探すように 目蓋の内側で瞳をぐるぐる動かしている
その日も 王様は 土の中に埋まったままだった
凍りついた裸の躯を ぴくりとも動かさず
松の樹の下に黙々と息づいていた
透明な兵隊たちが行進していく
黒光りを湛えた機関銃ががちゃがちゃと笑っている
きみはそのことに気づいている
王様は土の中で それでも 僅かに輝いている
あまねく朝は 彼のおとす影なのだ