エーテル 18
草野春心
女の手は 梨を食べたばかりで、少し濡れていた
夜風を正面から浴びて 枯れ草たちが咽び泣いている
角をもたない鹿が そこを踏み分けて奔り
しだいに速度を緩めて止まる
嘘をついたばかりで、女の舌は 潤いをなくしていた
辺りは 暗い どれだけの雪が降っているのか
誰の目にも よくわかるほどに
自由詩
エーテル 18
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草野春心
2014-02-01 22:33:56縦