老朽化の進んだ体育館は
二階に観客席が付いていて
死んだ蛾や蝉がたくさん落ちていた
わたしは
つま先の赤いうわばきで
それらの死骸を踏み砕き
空へ近づこうとするかのように
一人でそこへの ....
水中ではうたもうたえない
だけど泣いたってわからない
ささやかなゆれはわたしの体温になって

さかなたちの集うよるがくれば
ふやけた指先からあふれていく
あらゆる目線の延長上 ....
擬態のコビトが悪態付いた
疑似体験を済ませたあとで
お御籤引いた
冷戦が
冷戦のままに終わったと
ソ連邦の終焉で共産主義の脅威は去ったと
新しい核爆弾が降ってこなくなって
安心して空 ....
41

市民会館の大ホールを
ゼリーは満たしていた
屋外では雨が
土埃の匂いを立てている
観客の思い浮かべる風景は
みな違っていたが
必ずそれはいつか
海へとつながっていた


 ....
きみの肌は何度たべても不味い
そのことを告げたらきみはさみしそうに
笑った
汗をかいた君のよるが
わたしだけのものになるから
それはそれで幸せなんだよと
いいたかったけどい ....
お風呂場にふった雨
バスタブに溜まった銀の雨
消えかけていたばらの芽が
音もたてずに開く とき


窓をすべる雨粒が
不機嫌な猫を起こしてしまって
引っかかれた夏空は
静かに笑って  ....
一番線のホームを
羊の群れが通過していく
海の近くに
美味しい牧草地があるのだ
その後を
羊飼いの少年が
列車でゆっくりと追う

夕暮れ近くになると
列車に羊を乗せて
牧舎へと帰る ....
  夕暮れ色の飛行船、
  たくさん空に浮かんでいたけれど
  空と一緒の色だったので
  誰にも気付かれないままでした。

  *

  毎朝、起きたらすぐに顔を洗います。
   ....
高校時代に覚えたはずのプリントを、全部捨てることにした。
色褪せすぎた高校一年生のプリント。黄ばんだ。
そこからのフラッシュバック。剛球が、脳に。
もう二度と触れられないものたち。
高校の思い ....
さあ 遠い 遠いだろう
線路がどこまでも広がってる 遥か
矛盾の地平線を越えて

此処にはもう何も走らない
ただどこかの荒れ狂った国の
少女の吐いた溜息が風葬されるだけ

視点が届かな ....
吸い込んだ肺が
うすむらさきと群青のすきまで止まる
絶えられなくなって
風の匂いのせいにする

つめたいガラスが知ってる よるの密度
ひとつずつはがしていく
その指先で  ....
ウォーリーは探されなければならなかった
探されるためには行方をくらまさなればならなかった
行方をくらますためにはいつも同じ服装をしなければならなかった
その服装が決めたものなのか決められたものな ....
おれの話を
きいてくれてありがとう。
むかしジョニーってゆう友達がいたんだ。


ジョニーと最後に会ったのは
春の風が吹き荒れる
夕暮れのことだった。
おれたちはいつでも土壇場だったの ....
女にふられたけれど、
もうすべて失いついでに失っても、
恥をしのんで生きようと思った。
だから友よ。
きみも死ぬな。
俺はもう歌わない。
もううたううたはない。
夏は終わった。
三年前 ....
聖なる牛を追って河原に遊ぶ
権力の恣意的な横暴に満ちた企みだ

牛は水辺に顔を背けていやいやをする
なんたって水は不気味だし
入るには深そうだ
それに何が居るか分かりはしない

 ....

夕暮れの遠くに霞む
四台のクレーン車は
輪を描くように向かい合って
なんだか
太古の昔に滅んだ恐竜の
弔いをしているように見える


朝に洗濯物を干す母親は
太陽に両腕を広げ ....
窓のない病室で
地球儀を塗り分ける
水彩絵の具の赤は
少しだけ優しい

冷蔵庫に
入れておいたの
私を生かす電池は
もう使えなく
なっていたから

安心を買うなんて
違反だって ....
思い出のクリスマス。

第十位
二十三歳のクリスマス。
お歳暮の配送センターでアルバイトをしていた。
朝のデパートの開店時間に合わせて、
そっちの方角にみんなでお辞儀をする。
馬鹿馬鹿し ....
ふとしたきっかけで
王様と知り合いになった

漫画喫茶だった
王様は玉座に座るように
リクライニングシートにもたれ
隣のブースに居たわたしに
飲み物を取って参れ
と言った ....
水曜日
僕は喫茶店のテーブルに座って
哲学者のように沈黙していた
ミミ子に別れを告げられたのは
先週のことだった

ミミ子は犬が好きだった
犬を飼うのでイサオとは別れる
 ....
文章が
飛行してゆく
文章が飛行した後を見上げる
たなびく理の跡

ボーイングの羽の撓みのような
少しきょうふ感のある
右上がりの字を気にしながら
ぼくは帽子を深々と被り直す

い ....
いつもとは違う道を帰った日の彼女
もう歩けなくなって
駐車場の水溜まりに降る雨の波紋を見ていた
つめたく完璧な丸を描いて
にびいろの波紋は静かな口調で責めるから聞いてしまう
そうだね幾つ ....
雨が降ってくると
金沢を思い出します。
金沢は年間六十日しか
晴れの日がありません。
大体曇りか雨です。

空はいつも
ブルーグレイの薄雲がかかっています。
雲のない ....
言葉には、意味と別に音そのものがもたらす印象があります。
例えば「こんにちは」は明るく強い印象なのに対し「さようなら」はやさしい印象を与えるといった具合にです。
そこで、音のもつ印象を独断で分類し ....
さくらがみたいのと
おまえは呟く

けれども
おまえの為に
こんな時期に
桜は咲いてくれないのです




ようちえんにいきたいの
とおまえは呟く

しかし幼稚園は日曜日に ....
泥棒のような前傾姿勢で
妹の洋服を
箪笥から引っ張りだして纏った
ふわわ、と甘いにおいが漂った

わたしは服を持って居なくて
だから何時も裸で暮らして居るのだが
この頃はとみに寒く
や ....
身分証明書を
と言われて財布を探ったが
パン屋のレシートがぱらりと落ちただけ
カード入れにはブックオフのカードだけ
午後の図書館だった

カウンターのミセスは
住所と名前が記されている  ....
女にふられたので、
今度のこんどこそ、
この女でなければならない女にふられたので、
トマトジュースを飲んで、死のうと思った。
なんでトマトジュースかといえば、
野菜が足りないと思ったからだ。 ....
僕の弱い声で残すさいご
遺言は誰に届くだろう

たとえば(さよならは)
僕ら(いたみ)

せかいは永久にみずいろ

僕がもえつきて灰になっても
それをさらう風が君であれば幸せ
一行で勝負しようぜ僕たちの愛する言葉がグーチョキパーで




駅前でカップチーノを飲み干して横山剣からギャラを受け取る




君は何故毎年秋に亡くなるの、紅葉だからよ、 ....
コーリャさんのおすすめリスト(517)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
赤いうわばきとたいくかん- 吉田ぐん ...自由詩2507-9-7
肺をみたす(水葬)- アオゾラ ...自由詩2507-8-17
擬態のコビト- あおば自由詩2*07-8-6
「その海から」(41〜50)- たもつ自由詩1407-8-4
夜と白昼夢- アオゾラ ...自由詩8*07-7-5
レイニー- アヅサ自由詩14*07-6-22
行程- たもつ自由詩1907-6-11
幻視顕微鏡- 嘉野千尋自由詩61*07-5-27
5月の職員室- ピッピ自由詩307-5-14
くぐもる声が届くのは、くもりガラスのこちら側- ピッピ自由詩607-5-12
夕風- アオゾラ ...自由詩8*07-5-4
探されウォーリー- たもつ自由詩1707-5-3
ジョニーとの別れ- しゃしゃ ...自由詩1507-3-15
恥をしのんで生きよう- しゃしゃ ...自由詩1107-3-10
河原- あおば自由詩6*07-1-21
祈りに関する情景- 吉田ぐん ...自由詩19+07-1-16
期限切れ- アオゾラ ...自由詩807-1-11
思い出のクリスマスベストテン- しゃしゃ ...自由詩806-12-25
王様- 吉田ぐん ...自由詩2006-11-29
キリスト(創作)- 吉田ぐん ...自由詩1206-11-28
あざ- tonpekep自由詩13+*06-11-26
つばくろ- ピクルス自由詩9*06-11-16
北と南のあいだ- とうどう ...自由詩28*06-11-6
音の構成で詩の印象を説明してみる- 青色銀河 ...散文(批評 ...19+*06-10-28
さくらはなぜさくの- 自由詩91*06-10-27
すみちゃんのセーター- 吉田ぐん ...自由詩1706-10-27
図書館に通う- 吉田ぐん ...自由詩3806-10-17
トマトジュース飲んで死のう- しゃしゃ ...自由詩1706-9-28
グレイ・メモリーズ- アオゾラ ...自由詩906-6-27
一行で勝負しようぜ- ピッピ短歌1906-4-21

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