くぐもる声が届くのは、くもりガラスのこちら側
ピッピ

さあ 遠い 遠いだろう
線路がどこまでも広がってる 遥か
矛盾の地平線を越えて

此処にはもう何も走らない
ただどこかの荒れ狂った国の
少女の吐いた溜息が風葬されるだけ

視点が届かない 光の限界に孤独
名前を選べずに生まれてきた
あたしはじきにトゥエニーになる
そうやって世界は分断していく
踏み越えることの無い線路の向こうがわ

そう
膝のあたりに目がついていたあの頃
臍のあたりに目がついていたあの頃
肘のあたりに目がついていたあの頃
には
もう戻れない

あの頃の視界は
あの頃の視界に映っていたすべては
だんだんと増えていく重力の下で
擦り切れてぼろぼろになっていく

もうあの頃に手繰った言葉も
あたしの足元に置きざりだ

詩は経験だと
それは偉い人が世界の端っこで呟いた
沢山の犠牲を積み上げたあたしの経験は
今も言葉にできるのだろうか


(括弧書き された ものの かたわら らら ら…
 語ること の できる 言葉は 散在する るる る…
 これを 誰かに 放ることで で で dd…
 会話は 鮮やかな 吐息を 立てて 勝手に 発進する なんて
 簡単な 構造 ああ ぁぁ…
 カ行は こんなにも こぼれ れ れれ
 薬指から あふれ 返っているのに にに
 答えは 見付からない まま ま ま ま…
 孤独な 心は 簡単な 言葉にも なれず/に)


遠い空の向こうあたしが投げかけた言葉は
エコーのかたまり
ずっと誰にも聴こえないでいるたましいみたいな
エコーのかたまり

残り5秒
どの道を選んでも
曇る空に届くあたしの羽は
開かなかった


自由詩 くぐもる声が届くのは、くもりガラスのこちら側 Copyright ピッピ 2007-05-12 22:31:18
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