みんなが集まるひは
大きな鍋料理

ぐつぐつ時間も煮込んで
距離も湯気でみえない

いやなやつも ことも
過去もあしたさえも
ふたをして煮込めば
あらたなとしがはじまる
もうずっと遠い昔に
絶望から一歩を踏み出して
歩いてきた僕だから
これ以上裏切られることもないし
やけのやんぱちにもならない

光りあふれ
花咲く道の途切れる先に
真っ暗な口を開け
 ....
日本には
人を斬るに便利な言葉がある

新しいゲームが欲しい子は
「みんながやっている」と刃をちらつかせる
優しい親は ゲームのできない我が子が
「みんなに」虐められそうな気がして
つい ....
あの子は障子に射す光を見ていた
目の窓に映るきらきらの光はなぜか心を
胸のおくをきゅんと痛くするの
涙が目の窓にもり上がって
よけいにかなしみというものが近づいてくる


かなしみはうつ ....
閑寂の晴れ間に
目を伏せる
足元に落とした
日の光が疎ましい

ふと
思い立った訳でも無く
サンダルで
歩き出した
日曜日の午後は
ごったな匂いが
溢れており
湿った空気に
 ....
わずかばかりの乗客を乗せた
昼下がりの鈍行列車の
窓を少しだけ開いてみると
六月の薫風がそっと忍びこんできて
僕の睫毛を醒ますのだった


この車両は最後尾なので
終着駅に到着する
 ....
突然窓から入って来たかと思うと
開きっぱなしの聖書を勝手にパラパラめくり
挨拶もなしに出て行った
――相変わらずだな
きっと満開のニセアカシアの間を抜けて来たのだろう
すると今頃は下の公園辺 ....
春という素性の上に
細いすじがねを
うっかり高く伸ばしてしまった
ふたりは
よりかかりあう
その寸前で
定冠詞のような
小さな花を咲かせている

あなたはわたし
わたしはあなた
 ....
一度だけ
父と取っ組み合いになった
後にも先にも
希薄な親子にとっての真剣な対峙は
それっきりだった

生意気盛りの高校生
飛行機が好きだった私は
トリポリでB747が爆破されるのを見 ....
きみが霜の降りた髪に
はらりと留まる薄紅の色に酔う

積もった時間は
古い層から固まりゆく
春を迎える度に
漆のように重ねてきた

嵐が吹き荒れた季節
その黒髪の一本まで
この手の ....
父は今日
返事をしなかった
話しかけても

目だけはじっと
私をみていた

まゆみだよ
わかる?

といっても
黙っていた

聞こえる?
と聞くと
うなずいた

声は ....
熱燗の、おちょこの横の
受け皿に
五匹のししゃもが銀の腹を並べ
口を開いて、反っている

いつか何処かで観たような
あれはピカソの絵だったろうか?
絶望を突き抜けてしまった人が
空を仰 ....
釣り堀で釣りをするのがすきだ
どこへもいけない水の底で
大きな魚がひそんでいる

敵は慣れたもので
エサが沈んできてもあわてない
口先でふれては
はねかえる糸がエサを落とすのを待って
 ....
たわんだガラス窓をひたすらに登ろうとしている羽蟻を見ていた。
同じ動作を飽きもせず繰り返している。
彼はなぜその小さな背に生えている羽を使わないのだろう。
よく見るとその羽は見る影もなく疲れ ....
目覚めはじめた街の夜を 置き去りにして
東京発二〇時三〇分 のぞみに乗り込む

この列車に乗って人はどんな望みを持つのだろう
あるいは捨てたのだろう

 夜と昼の混濁したこの街は わたしに ....
まだら猫助がゆく
いつもの道
誰かが落としたパン菓子
甘い出来事を
拾い集めた夕暮れ

街がほどけてゆく
線路の上で
夕陽が犬釘に染みている
色違いの銀色を見分けるように
不思議な ....
ひらがな、が落ちてくるように
迷いながら雪が降ってくる
日本にちりぢりになった
あ、い
どれだけのあいの組み合わせが
あるのだろう

やがて
あ、と、い、は
溶け合って境界線をなくす ....
封筒の右端に犬小屋を建てました。
赤いペンキで塗りました。
そこで手紙を書きました。
とても短い鉛筆で。

さいしょに友達の名前を書きました。
つぎに夜のあいさつをしました。
あたらしい ....
ふりかえると夏がいた
透きとおる肌
後ろの道が透けて見えた
ほほえむ顔がうつむいて
夕陽から漂う風を浴びた横顔は
もう夏ではなかった
私の知る夏は消えていく
知らない存在に変わってしまう ....
僕らは終わりゆく夏の片隅に凭れている
空中に半透明の骨がいくつか漂っている
(時々うっすらと虹色を帯びて見えたりする)
何が朽ちたあとに残った骨なのか などと
僕らはもう考えることもな ....
  

  八月、湿り気に膨らんだ夕暮れどき
  片田舎の駅に停まった盆の列車は
  沢山の人いきれと垢の臭いと
  目には見えない透明な虫とを一緒くたに載せて
  間もなく動き出そうとし ....
玄関を出ると黒い靴ひもがほどけて
夕暮れの空が広がった
垂れ落ちた靴ひもの先に
老婆がつかまっていた
ぼくはほどけたひもを結び終えて
伸びをする
高く 大きく

今日の夕焼けの売れ行き ....
彼女がひと泣きするごとに
季節を担う歯車は
輪転の速度を速めてゆく

染まりきれない紫陽花は
彼女が涙を流すたび
移り気なほどに装いを替え
まだ蕾を持たぬ向日葵は
満開の太陽に憧れて
 ....
お金を数えていたはずなのに
気がつくと
銀行の人は星を数えていました
こんなにたくさん
どうやって集めたんですか
と尋ねるので
生まれた頃からあったと言いました
使いきれない ....
茎を切り取ると
キャベツは息を引き取った

葬儀は
スーパーかコンビニ
あるいは古風に
八百屋で

買ってきた
キャベツを刻むと

青虫の
お坊さんが出てきた
 ....
{画像=120616222037.jpg}



季節はなんて早く
通り過ぎて行くのだろう
もう春だと思ったら
陽の光は力いっぱいの強さで
もう初夏のようだ


季節の風は
確 ....
雨の降る隙間に
がんじ搦めの自分の昨日を見ながら
傘を差して歩いてゆく

良いことなど無く稼ぎは
全て税金か家賃
それと借金の返済
食事代など手元には残らず
それでも生きてゆける

 ....
水たまりに響き渡る月明かりと
引き換えに濡れたスニーカーが
ぴちゃぴちゃとアスファルトに
足跡を描いた
午前0時
夜空のアトリエでは星の彫刻家たちが
田園地帯から裾野にいたる陰影と静寂を
 ....
時折 背負った荷物をすべて下ろしたくなる
 そしてまぼろしの中の風のように
 異邦人たちの衣を揺らしながら
  何も持たずに消滅したい

時折 鳥となって旅路の終わりへと飛び去りたくなる
 ....
私のDNAの塩基配列に
「ケ・セラ・セラ」という
遺伝子情報が組み込まれている
膨大な螺旋構造の宇宙には
母から降ってきた星屑が潜んでいる


突然の父の入院で
しばらくぶりに会った母 ....
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